このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
私もかれこれNゲージ界に足を踏み入れてから10年ほどが経つ。この10年間、Nゲージ界の雲行きは少々怪しい方向に向かっているのではないか、とひそかに危惧している。
まず、値段の高騰。特にTOMIX製品を見ていると思うのだが、ここ最近の値段は、少々高すぎやしないか?無論、一昔前に比べて車両のディテールは格段に良くなっている。というか、昔のままのディテールで今の金額だとそれは「詐欺」である。それにしても、例えば同じEF58にしても新しく発売されたひさしなし・Hゴム車と今までの製品とで値段に格差がある、というのはどういうことだろうか。無論、新しい金型を起こしたのだからその分値段が高くなる、というのは理屈としては分かる。しかし、結果として同じ質の製品が出ているのに、その2つの間に値段の格差がある、というのはやはりどこか釈然としないものが残る。また、何を血迷ったかキハ30シリーズの金属モデルを発売してたが、いまどき20年も前の、しかも他社の製品を大したリニューアルもせずに値段だけ上げて(私が中古で買ったエンドウのキハ35 900よりも高いとは…一応「プレミア価格」だったのだが…)発売するとは、もはや何を考えているのか理解できない。このことに関しては、裏に何かあったのかもしれないが、仮に何かあったとしても、それは一般のユーザーには分からないことである。個人的にはあの製品がどれほど売れたのかは少々興味のあるところではある。
値段の話に関してはキングスホビーにも一言いいたい。確かに、今までの空白地帯を埋めてくれたことに関しては、私も大変感謝している。実際、私もこのメーカーの車両を5両購入し、4両は組んだ。しかるに、何故にHOの客車キットと大して値段が変わらないのか…まぁ、金属キットの場合は素材の値段は恐らくHOとNでは大した差もないだろうし、結局かかる手間も似たようなものだから、ということなのだろうが…。それにしても、もう少し安くなってくれれば…というのは、やはりユーザーの勝手な願望なのだろう。「高い高いって文句言うくらいならはじめから買うな」といわれればそれまでだし、実際最近私はTOMIXの新品なんて買っていない。もう少し安ければ、と思う製品もあるにはあるが、値段ゆえ断念、という製品もあるのは事実だ。
私は「青大将が走った頃」の列車を重点的に(というか最近はそれだけ)を製作している。私がこの時代に照準を合わせ始めた3年ほど前には今と違ってマロネ29すら発売されていなかった。その時代から考えると、今はちょっと信じられないような状態になっている。私が窓枠移植で製作した車両をちょっと並べてみるとマイ38・マロネフ29(ダブルルーフ)・マイテ58・マロネ38・マロネロ38・マロネ39・スシ28 151といったところだが、信じがたいことにマロネフ29(ダブルルーフ)・マロネ39以外はすべてキットが発売された、という事実がある。マロネフ29もシングルルーフ車は発売されているし、マロネ39もマロネ29とさほど差があるわけではないので、「細かいこと」にこだわらなければ製作は可能であろう。そう、「細かいこと」なのだろうか、リベットの有無というのは。もともとリベットがある車両とリベットがない車両が同じ形式に混在する場合(マロネ29や旧スシ37シングルルーフ車など)、リベットなしの製品を出しても間違いではない。しかるに、恐らく全車リベットがあったであろう形式(マロネ38など)の製品にリベットがついていない、というのは納得できない。(kitcheNの製品)これが、果たしてリベットがついているのを知りながらリベットなしで出したのか、それともそんなこと気にもせずに製品を出したのか、それはメーカーに聞いてみないと分からないが、もしも後者だった場合はあきれて物も言えない。この時代の車両を「マジで」製作している人間はその辺は目が厳しいはずである。最低でも、私レベルの知識(というよりも資料)量は必要であろう。しかし、kitcheNの製品は、コンバージョンキットということもあり値段もバカみたいに高いわけではないのでまだ許せる。この「リベット問題」で、私が今までで一番キレたのがキングスホビーの御料車1号編成である。これは実車も残っているので一見明白だが、供奉車には明らかにリベットがついている。しかるに!しかるに!!ついていない!!!なんだそれは!!!!そのくせお値段サンキュッパ!!!!!(39800円)…もはや何も言えない。同社の出すシングルルーフの客車は今のところ例外なく全車リベットがついていないようである。そこから察するに、恐らくシングルルーフ車にはリベットはつけないというのが同社の方針、モットーなのだろう。それとも、後付けのシルにはリベットがついてるんだからそれで十分だろう、ということなのか。どっちにしても、あの製品は許せなかった。私も期待していただけに、なおいっそう悔しかった。一応、買うつもりだったのだ。「買わないんだったら文句を言うな」とは言わせない。冗談じゃない。あんな「いいかげんな」製品に39800円もつぎ込むような甲斐性はない。あの製品でもいい、というなら私は買うのを止めないし、そういう人もいると思う。あくまで私は許せなかった、というだけの話なのだから。そう言う点で、最近YELLOW TRAINが発売した一連の食堂車シリーズは大変評価できる。ちゃんとスシ48・マシ49にはリベットがついていたからだ。これらのキットはシル・ヘッダーは後から張りつけるタイプではないゆえシル・ヘッダー上のリベットは凹モールドになっている。私は、この表現方法で十分だと思う。古くはワールド工芸の御料車新1号編成の供奉車がこのタイプだった。(余談だが、このキットも結構それどころではない致命的なミスがあったが……まぁ、少し前のキットだし、どこぞのキットと違って安かったのでまだ許せるが)無論、あとからシル・ヘッダーを張るほうがちゃんとしたリベット表現は可能になるが、これを言ってしまえばおしまいかもしれないがたかだかコンバージョンキット風情にそこまで手間をかけたくない。組み立ての手間と、リアリティーの釣り合いを考えた場合、この表現方法というのは十二分に評価できる、と私は考えている。ここまでリベットに固執する人間というのは少数派なのだろうか……。
どこの世界でもそうだが、結局中古の「適正価格」というものは何なのだろうか。中古プレミア価格にはどうも解せないものが多い。例えば「生産中止」でもないKATOのEH10がなぜか新品よりも高かったり。確かにKATO製品は再生産周期が極めて長いために生産中止に近い状態にはなってしまうが…。また、明らかに買った状態のまま、という製品が中古に出回ることも少なくないが、あれはやはりはじめから転売目的で買いこまれた車両たちなのだろうか。全部が全部そうだ、ということはないだろうが……。このテの話は何も鉄道模型界に限ったことではないが、やはり頭に来る。そういう「投機」は東京証券取引所あたりでやっていただきたい。幸いにして私はそう言った「プレミア中古品」たりうる製品で欲しいもの、というのはせいぜいKATOのEF58小窓車くらいのものだが(それすら他のタイプからの改造なんて屁みたいな工作であるから別になくても困らない)本当にその製品が欲しいのにバカみたいな値段が…ということで泣いているユーザーは多いのではないか。無論そういった「プレミア価格」でも買うユーザーがいるからこそそういった値段がついているのだろう。やはりその「プレミア価格」は「適正価格」なのだろうか…。残念ながら私にはそこまでして欲しいという製品がないので分からないが…。また、メーカーが自らプレミア熱をあおっているように見うけられる製品もたまに目にするが、実に見苦しいのでやめていただきたい。何か最近は「限定品」という表記がやたらと目に付くような気がする。もともといわゆる「サードパーティー」が発売する製品は大手メーカーに比べて生産量が少ないゆえ「限定品」の要素が多分に含まれているし、そういった製品に「限定品」という表記がつくのはまぁうなずけなくはない(個人的には「サードパーティー」にお世話になることも少なくないので、そうやって「煽る」のは出来ればやめて欲しいのだが…)。しかし、何ヶ月も陳列ケースに残っているような大手メーカーの「限定品」とは一体どのあたりが「限定品」なのだろうか。下らない「限定品」商売をしてる暇があるんなら品薄の製品を発売するなり、新製品の開発をするなりもっと別のことに労力を割いて欲しい。何もわざわざ「限定品」と書かなくても魅力のある製品は売れるだろうし、また買いたくなるような魅力ある製品を作っていただきたい。
ユーザーに関しても工作派のユーザーが減ってきているような気がする。これに関しては、私よりももっと上級の方はゴマンといらっしゃるのでエラそうなことは言えないが、みんなもっと工作を楽しもうぜ!というメッセージを送りたい。そうした工作派のユーザーが増えればまたNゲージ界ももっと活発になってくるだろう。今の鉄道模型誌の作例の記事を見ていても何やら同じ名前ばかり目立ってあまり心地よくない。私も近々作例を投稿する予定である。
そう……その「同じような名前」の方々の作例を見ていると…。確かにレベルは高い。手すり等別パーツ化に代表されるようなディテールアップの手際も、私よりも恐らく(というか、ほぼ確実に)上であろう。それはいいのだが……何やらそういった「ハイパーディテール崇高主義」とでもいうような傾向が最近蔓延しているように感じられる。個人の価値観としては否定しない。私だって暇にあかせて「ハイパーディテール」もどきの車両を作成したこともある。ただ、それ以外は価値なし、という様な風潮にならないか、私は大変危惧する。そういう方向性があるのは認めるし、彼らの技術力には確かに一目置ける。しかし、私は、大げさに言うとNゲージ界全体が「ハイパーディテール崇高主義」一色に染まったとしてもそれに染まりたくない。もっと肩の力を抜いた作例があってもいいと思うのだが。ここで、誤解されると困るのだが、何も私は「ハイパーディテール崇高主義」が間違ってるとか、悪だとか、そんなことを言ってるわけではない。ただ、そういう考え方を押しつけないで欲しい、といっているのである(そんなもの押しつけた覚えはない、と言うかもしれないが、そう見えるのだから仕方がない)。だから、私もこのいわば「反『ハイパーディテール崇高主義』主義」とでも言うべき考え方を人に押しつけるつもりはない。ただ、みんなはどう思っているのだろうか、ということである。そういった「ハイパーディテール崇高主義」が大手を振って闊歩しているくせに、本来あるはずのリベットがないような製品が出てくる…。理解に苦しむ。
以上、私が最近Nゲージ界に関して思ってたことをつらつらと書いてみた。各メーカーに対する「苦言」は「中傷」ともとれるかもしれない。ただ、一つだけ言いたいのは、私は、Nゲージが好きだからこそ、今後もモデラーとしてやっていきたいからこそ、このような文章を書いたのである。あくまでこれは私の意見であり、異論・反論はあるだろう。私の、このような危惧がただの勘違い・筋違いなら問題ないのだが…。最後に一言だけ…。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |