このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


北京の住宅

   知人に空港まで迎えに来てもらい、北京市内から更に南の、タクシーで4、50分のところにある、別の知人の空家に落ち着いた。その知人は現在日本に住んでいて、北京郊外の新築の家を買ったのである。この家は6階建ての集合住宅で、知人の家は5階にあった。

日本の新築マンションというと、ガス台だけでなく、クーラーも付いているのが多いが、中国の新築アパートと言ったら、内装が全く何も無いのである。有るのは外に面したドアとガラス窓だけ。トイレのドアも無い。部屋と部屋の仕切りも無い。くしゃみをすると洞窟の中の様に、木霊が返ってくる。床はコンクリートの打ちっぱなし。壁だけはかろうじて、白く上塗りがしてあった。もし知人の家主が、ベットを買っておいてくれなかったら、寝る所も無かったわけである。そしてトイレのドアも取りつけておいてくれた。

  水道と電気は来ていて水洗トイレも使えるので、何とか生活は出来た。しかし食事を作る為の熱源が何も無いので、電熱器と鍋を買ってきて、簡単な食事が作れるようにした。

  中国では計画経済から開放経済になり、住宅が自由に買えるようになった為、需要が多いらしく、北京郊外では次々と団地が建設中であった。新築の家と言っても、都市部では一戸建ては許されないので、全てがアパート形式の家であった。高さは6階建てで、エレベーターは無かった。これ以上の高さであると法規上エレベーターが必要とのことで、その設置義務を避ける為に、新規建設は全てが6階建てであった。ハルピンではその規制が7建て迄とのことで、老人になってから、7階まで自分の足で登るのは、かなりきつそうである。

  私が滞在したアパートは70㎡位はあって、リビングのほかに三部屋がある。日本のそれと似ていなくも無いが、やはりかなり違うのである。まず靴を脱ぐ玄関が無い。ドアを開けるといきなりリビングルームになる。昔の中国はどうであったかしらないが、現在は靴を脱いで室内に入る。それなのに靴を脱ぐべき特別の空間(玄関)が無いのである。でも入り口の所で靴は脱ぐ。それと廊下が全く無い。今までに訪れた民家には、どこにも廊下は無かった。部屋と部屋が直接つながっていた。

  良く見ると以前の中国のアパートと、かなり変化した点もある。それは窓ガラスに引き戸が採用されている点である。以前は全て開き戸であり、引き戸は無かった。引き戸は多分日本から輸入した文化(?)の一つだと思う。将来、もう一つ中国が日本から採用する日本の文化に、玄関があると思うのだがどうだろう。せめて靴脱ぎの場所を確保しておかないと、何とも締りが無いないように思うのだが。

   別の変化 はアパートのベランダのことである。以前の中国ではどこでも、自分でベランダを囲って一つの部屋に改造していた。自分勝手に改造するのであるから、窓の外観の統一性は全く失われて、乱雑な感じがした。しかし最近のアパートはこの無駄に気づいたのか、最初からベランダを囲って部屋の一部としたり、ベランダの出っ張りを無くした建物に変わった。しかしそれでもまだ、ベランダや窓の改造をしたいらしい。

  今度はその窓の外に、大きな鳥かごのような鉄格子を取り付けるのである。張り出した鉄格子に、物が置ける様になる上に、防犯上の意味もあるらしい。しかしこれによって、この建物の窓は最初の統一されたデザインが失われて行くようである。一般に中国の住宅は、外観を気にしないような気がする。

  中国の新築アパートはコンクリートの空箱のようなもなので、購入者が購入後内装工事をする。だから金のある人は豪華に、金の無い人は床をコンクリートのままで使う。いや金の無い人でも無理して内装を豪華にするらしい。ものの本によると、北京人はかなり見栄っ張りであるらしい。私の部屋の斜め下の部屋の床は、大理石張りであった。入り口のドアも豪華なものに取りかえる人が多い。二重のドアにすることもある。これは防犯が主な目的であるかもしれない。ドアは目立つところであるから、見栄を張っても金をかけるところであるらしい。

  見栄を張る人が多いせいか、新築アパートは朝から晩まで、内装工事でコンクリートを叩く音がガンガン響く。パイプを通すにもコンクリートを壊す必要があるので、その工事の音は本当にすざましい。日本の内装工事の音とは全く違う。電気工事も水道工事も内装工事でも、コンクリートをどうにかしなければ改造出来ないのが中国のアパートである。しかし工事が終ってもなお騒音は続くのである。ダクトが無いから、全ての配管が上から下へ部屋を突き抜けている。排水用のパイプも剥き出しになっているので、水洗のすざましい音が響く。

  こんなわけで内装工事の需要があるらしく、やたらに広告が張ってある。しかしアパートの階段や外壁までも広告をべたべた張るのは何故なのだろうか? 中国では建物の共有部分の権利だとか管理が未だハッキリ決まっていないのであろうか?
私がいた建物の階段には性病治療の広告まで張ってあった。

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください