このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



裸男のいるビアガーデン
(6月22日)

  中国には一人で酒を楽しむような場所が殆ど無い。あるとすると外国人向けに出来た西洋式のバーくらいである。日本の居酒屋のようなところは無い。中国で一人で生活しているので、居酒屋のような所があれば、毎晩でも行きたいところであるが、それが無いのが残念である。

  それに代わるような所があるにはある。私の家の窓から見えるところにビアガーデンがあって、そこから焼き鳥の匂いが漂ってきて、おいでおいでと誘っている様である。

  これでは行かないわけにはいかない。しかしここへ食べに行くのは簡単ではない。混んでいて、すぐ席が一杯になってしまうからである。それに一人で行くのは何だか抵抗がある。私は居酒屋のつもりで、このビアガーデンに行くのであるが、中国には、居酒屋が無いせいか、高倉健の様に、一人静かに酒を飲むということは無いらしい。以前は高倉健は中国で人気があったようであるが、何故だか理解しがたい。高倉健のようなタイプは見かけないからである。

  特にこのビアガーデンでは、シャツの裾を捲り上げて、突き出た腹を撫ぜながら飲むとか、上半身裸で飲むとか、いずれも友達と賑やかに飲んでいる。ここでは中年で腹が丸く突き出た人が、日本人よりずっと多い。日本と違うのは、酔っ払いが少ないことである。女性だけで、ビールを飲んでいる人もいるが、日本よりはずっと少ない。

  それにしてもよく食べ散らかす。食べ散らかしたほうが、食べた食べたといった感じなのかもしれない。日本と違って飲むより食べるほうに、重点がある様である。

  話しが逸れてしまったが、言いたいことは、中国では高倉健のように一人静かに酒を飲むのは人はいないので、私も一人で生ビールを飲むのは、この喧騒の中では、抵抗があると言うことである。しかし席があれば一人で飲んでいる。

  ビアガーデンの周りには沢山の屋台が並んでいて、私はいつも同じ屋台で、羊の焼き鳥を七本買うので、顔を覚えられたらしく、今日も注文する前から、「羊肉串を七本ですか」といわれてしまった。もしかしたら"焼き鳥七本の男"と呼ばれているのかもしれない。いや、"七本のお爺さん"と言われているのかも。

  そんな訳で、何時も買う焼き屋の経営者や若いおかみさんは、どうも私に対して、興味津々の様である。それは、

    一人で来る。しかも老人である。
    老人であるが職業があるらしい。
    職業は腹の突き出た老板ではなく、堅気の職業らしい。
    家族がいないようである。
    老人の割には着ているものが派手である。
    言葉が少ない。もしかしたら言葉がおかしいと思っているかも。
    身なりがキチンとしている。

  それはそうでしょう。裸男よりは身なりがキチンとしているし、髭も毎日剃っている。
前記のことはいずれもその様な人は、ここでは少ないと言うことである。ここでは中途半端なちょび髭の男も多いし、暑くなると、ほんとにシャツを捲り上げて、腹を撫ぜている人がいる。ほんとうである。腹を撫ぜると放熱作用があるらしい。(本当はこの暑さでは、私も裸になりたいくらいで、実際にシャツを捲り上げて腹を撫ぜてみると、中国人に同化したように思えてくる)

  そんなわけで何時も行く屋台の店の人は、私に対して疑問が沸いてきているのではと思う。実際に、どこに勤めているのかなどと探りを入れてくる。

  実は私は日本人で、最先端の会社に勤めていると、明かしてもいいのであるが、会社の人間から、あまり喋らないほうが言いといわれているので、今のところ一人で静かに飲んでいる。

  今日は、ビアガーデンの席が無いので、羊の焼き鳥を、いつもの店で七本買って来て家でおかず代わりにして食べた。あまり屋台の店で買い食いをしないほうがいいとも言われていますが、今のところ、これで腹がおかしくなったことはない。

  相変わらず、埃と、ゴミは多い。先日は、上からゴミがどさっと落ちてきて頭にきた。窓はゴミだらけになるし、部屋の中まで汚されてしまった。しかし無口の高倉健の様に、文句を言わず(文句を言えず)黙って掃除をした。

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