このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



チベットの薬・"藏薬"(2月15日

  以前のメールで、チベットに行ったことを書き、そのとき高山病になり、チベットの薬が効かなかったことを書きましたが、中国の薬についての説明が不足だったかもしれません。

  中国にはご存知のとおり、中国古来からの漢方薬があります。しかし中国では、漢方薬とは言わず、"中薬"と言います。これに対し西洋式の薬は"西薬"と言います。"中薬"の形態は日本で想像するのと違って、煎じて飲む為の材料が渡されます。ですから渡される量がとても多くて、スーパーがくれる大きい袋一杯位になります。木の根っこや他の物が調合されたものを、ガサガサさせて家に持って帰ります。薬局にも"中薬"と"西薬"があるように、医者にも"中医"と"西医"とがあります。"中医"は"中薬"の処方箋を書きます。その処方箋によって大量の煎じ薬の原料を貰うわけです。

  家に持ち帰った"中薬"は薬缶で煮出して、その抽出液を飲みます。私が考えてもこの作業は面倒そうですが、中国の人も面倒と思うのか、最近は病院などで煮出して、抽出液を作ってくれるサービスもあるようです。日本の漢方薬のように"中薬"のエッセンスを錠剤化しり、ドリンク剤にしたりした物もあります。こう言う形の薬は"西薬"の薬屋でも売っています。

  "中薬"の一分野に"藏薬"と言うのがあります。これはチベットの薬と言う意味です。チベットを"西藏"と言いますが、"藏"もチベットのことを表します。"藏薬"があれば"藏医"もいます。しかしこのあたりになると、相当怪しげな医者ではないかと思います。多分北京などでは開業できない医者だと思います。中国の中には南に雲南、西に新疆、北には黒龍江省もありますが、雲南薬や新疆薬、黒龍薬という言い方はありません。チベットにだけ特別の"藏薬"があるのです。何故チベットにだけ特別の薬があるかと言うと、それはチベットの特別の文化とも関係があると思います。何しろチベットの文化は中国文化とは違った特別のものですから。

  中国側から見て、チベットの薬を"藏薬"として特別な薬のように評価しているわけですが、これには、チベット仏教のおどろおどろしさと、チベットが高い所に位置している事に関係しているのではないかと思います。秘境には秘薬があって、その秘薬は特別に効くのではないかという期待を持たせる雰囲気も確かに有ります。人の頭骨などで作った仏具を見たりすると、益々神秘さが増します。チベットが神秘的な所であるのは確かですが。 またこのような不思議な薬の存在を中国人は信じたいみたいで、中国人の好みにも合っているようです。

  しかしチベットに特有の薬が沢山あるかと言うと、実際はチベットだけの特別な薬はそんなに多くは無くて、実は他でも採れるものが多いよういに思いました。しかし"藏薬"には特別な響きが有るようで、これが"藏薬"と言われると、一層有り難味が増すのではないかと思います。

  さて、"藏薬"の効き目ですが、チベットへ行って高山病の薬だと言われた薬を、飲んでみましたがさっぱり効きませんでした。"中薬"の一種ですから、"西薬"の様に劇的には効かないわけですが。問題なのは、私が参加したツアーが中国の旅行社であったせいか、"藏薬"がいいのだと強調するあまり、"西薬"を薦めないことです。これは"藏薬"の効果を信じていない日本の旅行社のツアーだったら、こんなことは無かったかもしれません。

  実は北京の街でも藏薬というのを売っていますが、これにはかなり怪しげなものもあります。例えば、男性の機能を強くするとか、大きくするとか、・・・・
これなどは藏薬の拡大解釈でもありますが、それを信じてしまう社会的背景もあるわけです。中国には老人の老化防止によいと言われている薬があって、これを老人にプレゼントすると喜ばれます。老人の老化防止に効く薬が有るならば、男性の機能を強化する薬があってもよさそうだし、まして神秘的なチベットならば、チベットの希薄な空気不足にも効く薬は有りそうです。こう言うことを信じている人は、実際日本などよりずっと多そうです。そんな訳で"藏薬"の高山病用と言われる薬を飲んだのですが、殆んど効かず、日本から持っていった頭痛薬を飲んだら頭痛が取れました。もちろん頭痛薬の効果は一時的ですが。

  老化防止によい薬があるはずの中国の老人の方が、日本人よりずっと老けて見えます。ちなみに中国人の老人は金もないし、元気も無いです。今度のチベット旅行ツアーで一緒になったのは、若者が多くて、中年が少しでした。老人は私だけでした。日本のツアーだと老人が一杯ですね。

  実は何だか分からないが効くと言われる薬は"藏薬"だけでなく、"中薬"にも沢山あります。こう言ったことの信じ易さに付け込んで、新しい"中薬"を作って売る商売がある訳です。中薬の理論を応用したと言われる新しい薬も作られています。実はこの中薬の理論と言うのが怪しいのです。理論と言いながら、長年の伝統だけが根拠で、西洋的な理論では証明証明しなくても言いと言う錯覚を持たせる所が曲者です。新しく配合した薬などには伝統などないはずなのですが。

  ここで中国の名誉の為に付け加えると、この怪しげな方の薬は、正式な"薬"ではなくて、保健薬と言う分類に属するもので、栄養剤とか健康食品の類です。しかし形状は錠剤化されていたりして薬に似ています。信じている人には中国はこう言った秘薬の宝庫でもありますから、是非いろいろと試してみるのもいいかもしれません。しかし中国のやせ薬のように肝臓をやられ事もあるかもしれませんので、気を付けた方が良いと思います。

ではまた。

  追記;

  チベットの薬・藏薬について書いたが、効かない薬は必要無いかと言うと、そうでもない様に思える。中国では効かない薬も必要が有るのではないかと思えてきた。チベットに限らず、中国は広くて、貧しい所も多い。貧しい所にはまともな医者も少ないだろうし、まともな医療設備も薬も無いに違いない。そこへ病人が担ぎこまれた場合、ここには効く薬が無いと言ったら、どう言うことになるだろう。そこに伝統的藏薬、または中薬があって、これは何々に効くと言われれば、すこしは希望が沸いてくると言うものである。チベットに行って、 山のすそに固まっている部落 を見ていたら、こう言うところにはやはり、効かない薬でも、薬が必要なのではと思えてきた。

  もっともこれは今の文明化された北京には、当てははまらないはずの話である。しかし北京人も同じく、効かないが、効くかもしれない薬が好きであるようで、風邪にかかった場合、点滴をやたらに受けている。中国の人はこの点滴(多分ブドウ糖程度)を受けると、風邪が治るような気がしてくるらしい。風邪のビールスに効く薬は有りませんなどと説明を受けるより、黙って効かない点滴を受けている方がいいらしい。中国では点滴は風邪の特効薬(?)である。その点滴であるが、中国ではどこから点滴をするか知っていますか? それは手の甲の血管からです。痛そう!!

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