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危ない漢方薬
(2月27日)

  "藏薬"にも"中薬"にもおかしな薬が有るんではないかと思っていたが、案の定2月24日の新聞に、とても危ない中薬の話が載っていた。それは "龍胆瀉肝丸"と言う薬である。この薬を飲んでいたら尿毒症になってしまうのだとか。この薬の中には"関木通"という材料が使われていて、その中の成分である"馬兜鈴酸"が原因だそうである。その発症率は少なくないらしい。ある病院での尿毒病患者20人のうち十数人はこの"馬兜鈴酸"(辞書で調べたが意味が解からない)によるものだとか。この薬は中薬を原料にして作った丸薬である。有名な伝統的な薬であるらしい。生産しているところは、一社だけではない。

  この薬の効能は、"上火"の時、服用すると効果があるのだとかで、この"火"を消すかのような意味で、清火、去火、に効果があるとされている。この、上火"の意味が良く分からないのだが、"中医"が良く用いる表現で、辞書にはのぼせと書いてあった。しかし、"上火"は病気症状の一つであって、この表現はあたらないらしい。"上火"について中国人数人に聞いてみたが中国特有の表現で、日本語では表現できないような感じだとか。火が燃え上がるような感じなのかもしれないが、発熱ではないと言う。いずれにしろ慢性病のようなものだろうから、副作用が無いはずの"中薬"を長期間服用して尿毒症になり、ついには透析を受けたりすることになるのである。

  今の状況が恐ろしいのは、多くの"中医"が、副作用がある事実を知らない、又は知らされてもいないことである。新聞によると"中薬には副作用は無い"という非常識な常識があってそれが信じられていることも、多くの患者が出ている原因だと書かれていた。ある"中医"のお父さんは、お父さんも"中医"であったのだが、尿毒症で亡くなった。あとから考えてみると"龍胆瀉肝丸"を常用していたのだとか。

  これに対して"西医"の泌尿器科の医者は、この薬が副作用を起こすということをある程度知っているらしい。特に大きい病院ではこの事実は良く知られていて、日中友好病院の腎臓内科では、既に百人以上が"馬兜鈴酸"によって腎臓に障害を受けて入院したそうである。そしてこの患者の大部分が"龍胆瀉肝丸"を飲んでいたとのことであった。多くの人が国営薬局とか、大きい病院で処方されたものであったのだとか。

  薬も恐ろしいが、その後の対応も恐ろしい。新聞記者が国家薬監局薬品評価センターを訪問して尋ねたところ、担当者の回答は、"既に薬害の報告は受けている。それによって、2002年の7月に薬品不良反応のニュースを関係企業、各地の薬監局、関係部署に流した"というものであった。更に付け加えて言うには、必ず医者の指導の元で服用するようにと言うことであった。

  医者の指示によって服用したから安心だと言うわけにはいかないのは、前に書いた通りである。薬害が解かったのは既に1993年頃の話で、医学界では度々話題にもなっていて、海外でも"中草薬腎病"として知られていたらしい。1998年には南京の病院で症例が報告もされている。

  もっと恐ろしい事実は、この危ない薬が今も販売禁止にも、回収もされていないことである。有名な製薬会社の話では2002年の末あたりから、危険な材料"関木通"を使用しないで、別の材料に代えたということであった。しかし会社の責任者の話の中には、古い製品を回収したという言葉はない。また記者が薬屋に行ってみたところ、別の会社の製品には依然として、"関木通"の字があったのだとか。そして今でも大病院にはこの病気の患者が次々と現われると書かれていた。中国には薬害訴訟と言う言葉は無いらしい。

  漢方薬は効き目が穏やかであるが、副作用が無いなんて常識は、大きな誤りであることがわかる。このような常識が有るのも恐ろしい。漢方薬、伝統薬を薬として国が承認するのに、薬害について厳密なテストをしているのだろうか。多分上記の常識がある為に試験などしていないのだろう。一方薬効の方についても、確かに効果があるということが、科学的に実証されているのだろうか。もしかして科学的方法で実証してみたら、薬効が認められない中薬がたくさんあったりして。

  それにしてもこの記事の発端が新聞社への投書からであったのも解せないことである。 投書になる前に、何とかできなかったのだろうか。中国はいろいろな面で統制された国家なのだから、危ない薬の禁止を何故徹底してできないのだろう。同じ記事の中に、衛生局の報告では、中国では毎年19.2万人もの人が薬物の不良反応で死んでいると書かれていた。この数字も何とも凄い数字である。ある中国人にこの数字を確認してもらったが、私の理解に間違いは無いようである。

追記;

  その後の人民日報の記事を見たら、次のようなことが書いてあった。新聞記者が国家薬監局に電話で問い合わせた話に依ると、「これからは中薬には"馬兜鈴酸"を含んだ"関木通"は再び現れない。また"関木通"を含んだ中薬は禁止になるであろう」と言うものであった。又、国家薬監局は「"関木通"の代わりになるものを捜していて、大衆にもっと良いサービスをするであろう」、とも言っていた。と言う事は未だにこの薬は禁止になってはいないということである。国家薬監局は"関木通"の代わりになるものを捜すなどと言っているより、早くこの危険な薬を禁止した方がいいのではと思うのだけれど。

  同時に国家薬監局は、国家薬監局が受けた症例の報告は15件に過ぎないと言っている。この薬は(龍胆瀉肝丸)伝統的な薬で、薬害が分ったのは最近の事であるとも言っている。しかし事実は違うらしい。日中友好病院によれば、病院は以前からキチンと報告をしていて、その数は100件以上だとのことであった。別の病院の北京朝陽医院が報告した件数だけでも、国家薬監局が受けた報告の数より多いのだとか。いったいこの情報は、どこかに消えてしまったのだろう。

  薬の説明書にはそれを見ても、適正使用量も無いし、副作用があるとも書いてないのだとか。しかし慎重に使用するようにとは書いてあるらしい。この薬を飲んで、尿毒症になって、透析を受けている人は、慎重でなかった人なのだろうか。慎重に服用すると言っても、こんな説明書では、どうしたら慎重になれるのだろ。

  ところでこの薬が禁止されたとして、広い中国でどうやって、そのことを多くの"中医"に報せるのであろうか。国家薬監局ののんびりさ加減からみると、禁止はしても報せるつもりがあるのかどうか。その点新聞は、問題点を提起して、且つ必要な情報を庶民に報せるという重要な役割を果たしている。しかし国家薬監局までに、報告が届いていない件については、中国の新聞は深く追求しない(出来ない)のかもしれない。それにしても中国の当局は薬について、真面目にチェックし、情報を集めているのだろうか。中国では薬害訴訟が無いから安心しているのかもしれない。そして中国には、今でも危ない薬があるのは確かなことである。

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