このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

中国の住宅事情

  吉林の様な大都市では、人口が多いので平屋の建設は勿論のこと、6階以上でないと建設が許されないとのことであった。そして7階迄の集合住宅ではエレベーターが義務付けられていないので、土地を効率良く利用し、且つ安く上げる為には、必然的に7階程度の中層集合住宅だけが建設されていた。私も5階に住んでいた中国人の家によく遊びに行ったが、エレベーターが無いので夏などは大汗をかいてしまった。蛇足であるが中国の都市部では、土地を消費するので墓を作ることも許されていない。

  そしてどこも同じような箱型の白か灰色のビルであった。ビルの住宅には、どこでもベランダが付いていたが、どこのベランダでも、一部屋分として使用する為にガラスで囲って改造されていた。中には面積を広く取る為に、鉄製の箱で作った囲いを、ずいぶん外まで張り出させているものもあった。その様にして様々な形でベランダを部屋として利用しようとするから、雑多な印象を与え、景観はあまりきれいとは言えないものである。

  そう言えば、日本ではベランダに洗濯物や布団がよく干されている風景を見かけるが、中国の東北部では殆どその様な様子は見かけなかった。洗濯物は囲ってしまったベランダの中で干しているのかもしれない。ベランダを囲って台所などとして使うのは、部屋が狭いからでもある。狭いということは、食事に招待されて中国の家庭を訪れると、どうしてもドカンとベットが部屋の大部分を占めている部屋に通されることになる。そして椅子の生活にも関わらず、あまり立派な椅子は無く、椅子の数もそんなに多くないから、大勢で訪問したりするとベットに腰掛けて話すことになる。新婚夫婦の部屋に招待されたりするとベットだけはダブルベットで、カラフルなカバーが掛けてあったりして立派であった。対照的に中国の椅子は余りにもひどいもので、数も少なかった。

  結婚しても直ぐには部屋が貰えない人も多く、親と同居している場合も多い。ようやく部屋が貰えても、一軒分を全く関係の無い二所帯で使っているところもあった。そうなるとトイレと台所は共同で使用することになる。風呂は殆どの家庭に無く、銭湯も少なかった。風呂はどうするかというと、職場の風呂を利用するのが普通らしい。だから大きな職場に所属する人は何とかなるが、個人企業の人などはどうしているのであろうか。

  建物はほんの少しの鉄筋を入れただけの、レンガ作りである。床はコンクリートの打ちっぱなし。絨毯は殆ど使われていない。だから暖房が悪かったりす、止まってしまったりすると、足元はかなり寒い。壁もコンクリートのままである。壁は鋲や釘を打てる状態ではないから、糊で貼り付ける以外に一切の装飾が出来ない。だから金ができると、床や壁を木で覆う様に改造するのが、こちらの人が考える贅沢らしかった。

  個人の家の所有権は今でも無いらしいが、中国の解放経済によって使用権が所有権と同じ様に、売買も出来、長期にわたって使用出来る様になったらしい。そうすると、今迄はなかったことであるが、自分の家を使い易いように改造したくなるのであろう。改造となるとレンガの壁を壊すことになる。そしてその振動と音はレンガを伝って遠くまで響くのである。この音は私も招待所の工事で経験したしたことがあるが、ほんとに遠くから響いてくるのである。

  ある中国人に聞いた話では、毎日どこかで工事をしていて、うるさくてしょうがないとも言っていた。そしてどこまでの改造が許されるのかと言った、共同生活のルールがハッキリしていない為に、重要な部分の壁まで壊してしまう場合も有って、危険でもあると言っていた。当然のことながら、レンガ作りの建物には柱が無く、壁が重力を支えている。その集合住宅の重要な部分をぶち抜いて、部屋を大きくすることもあるらしい。やはり急激な開放経済で、市民が守らなければならない基本ルールと言ったものが欠けているように思えた。その外に聞いたところでは、暖房用として使われている温水を勝手に抜き取って、シャワーとして使ったりすることも多いとも聞いた。集合住宅の階段等の公共の場の清掃などは、分担してやっている様子は無かった。

  給排水のパイプが詰まったり、壊れたりすると大変である。レンガだけで出来ている簡単な構造の建物は、ダクトなど無いから、レンガの壁や床を壊して修理しなければならなくなる。だからパイ部の修理等は簡単には出来ない。一般に長い冬の期間は工事もお休みになる様であるから、暖房の修理など春になる迄待たなければならないのである。修理するにしも中国の工事方法たるや、すざまじいものであるから、あたりは埃だらけになり、窓の外にレンガを放り出したりするから危険でもある。よく注意していないと、部屋にある椅子を土足のまま踏み台にして修理をしたりする。

  しかし集合住宅に入れる人は、大きな単位に属している人で、幸せな方なのかもしれない。私が入院したときに、付き添いに頼んだ人は、"平房"(平屋の長屋のようなもの)に住んでいて、女の中学生がいるにもかかわらず、一部屋しかないと言っていた。勿論トイレは外に有る共同のものを使用する。多分暖房も石炭を自分で炊かなくてはならない。それから比べると、6階や7階のエレベーターが無い住宅であってもずっとましなのかもしれない。

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