このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

四川省の山奥へ、SL軽便鉄道に乗りに行く
2004年7月 芭石鉄路之2

車内はこんな感じです。乗客は顔見知りがほとんどなのか、服務員を交えておしゃべりに昂じています。服務員は輪っかをいじってゴロゴロ音を立てていますが、何だこれ?

よく見てみたら、これはブレーキでした。

列車はふつう運転士や機関士がブレーキをかければ、全ての車両に伝達されて一斉にブレーキが掛かる仕組みになってますが、この軽便鉄道は原始的なので、機関車で他の車両のブレーキを操作することはできません。駅が近づいたり何らかの危険があった場合は、機関士が鳴らす汽笛を合図に、各車両に乗っている服務員が一斉にハンドルをくるくる回してブレーキをかけます。どの車両にも服務員が乗っているのは、こういう大事な役目があるからでした。12号車が「危険です!」と言われたのは、たぶんブレーキの利きが悪かったということでしょう。

駅の掲示では、終着駅の次は躍進駅ということになっていましたが、途中ホームもなんにもないところで汽車が停まりました。乗り降りしてる人もチラホラいます。仮乗降場みたいなものでしょうか。

汽車はどんどん山奥へ入っていくものかと思っていたら、かなり開けた町に出ました。道路の上だか横だかわからないような場所に敷かれたレールを進んで行きます。ここが躍進という名の町だそうで、団地なども並んでいて確かに躍進してそうな雰囲気です。中国で1950年代から60年代にかけて建設された町では、「躍進」とか「団結」とかいう政治スローガンが地名になった例があちこちにあります。もっとも私の家がある場所は、かつて日進村でしたが、明治時代につけた村名の由来は「日進月歩」を目指してだそうで、似たようなもんですかね。

  

躍進駅には選炭所があって炭鉱の中心地になっています。乗客の乗り降りも多いのですが、ここから乗る人は「自由席」です。「始発駅だけ全車指定席」というのは、中国国鉄でも共通した制度ですね。電気機関車が走れるのはここまでで、あとは蒸気機関車だけです。

 

蜜峰岩という駅はスイッチバック(行き止まり形式の構造)になっていて、ここで進行方向が逆になります。
 

  

こんどは機関車が前向きに連結されて出発進行!貨車に積んでるのは引越し荷物でしょうか?

  

汽車はどんどん山奥へと進んでいきます。たった1人の機関士は身を乗り出して前方を確認しながら運転していますが、雨の日や寒い日は大変でしょうね。途中いくつかトンネルを通りますが、車内は電灯がないので真っ暗闇となり、煙がモコモコ入ってきます。客車の窓にガラスはありません。

仙人脚という名の駅でブタを降ろします。沿線の駅の雰囲気は、かつて乗った台湾の阿里山鉄路と似ていました。

その当時の阿里山には道路がなく、沿線住民の足はここと同様に列車だけで、観光客用の特急列車のほかに、1日1本だけ客車と貨車をつないだ混合列車が走っていました。客車のボロさ加減は芭石鉄路とどっこいどっこいでしたが、その頃すでに蒸気機関車ではなくディーゼル機関車が引っ張っていました。私が乗った混合列車は、土砂崩れのために途中の奮起湖という駅で足止めされ、阿里山へは結局行けずじまいでした。現在では自動車道路が開通して、阿里山の混合列車はなくなり、観光用の特急が1日1本走っているだけとか。
 

  

1時間かけて芭溝駅に着きました。芭溝と石渓を結ぶ鉄道だから「芭石鉄路」なわけですね。ここにはちょっとした町があって、乗客のほとんどが降りてしまいますが、終点はもう1つ先の起点站(始発駅)です。

芭溝駅の切符売り場。奥に蚊帳をつるしたベッドがありますが、宿直の駅員がここで寝るのでしょう。机の上には骨董品のような黒電話があります。ハンドルを回して自家発電してから受話器を上げる形式で、日本にもむか〜しあったような。。。

  

終点の「始発駅」に着きました。駅名票に起点站って書いてありますね。ここの炭鉱はもう休業状態なのか、町はひっそりとしていました。

  

こんどはいよいよ始発駅から始発になって出発です。終点駅でのトラブルのおかげで、ダイヤが遅れているために機関車を付け替えてすぐに発車します。

とりあえず躍進駅まで戻って来ました。軽便鉄道とはいえ、機関車を前から見ると堂々とした感じですね。

「炭鉱が閉山しても、観光用に存続させる」ということですが、中東半端な山奥にあるし、沿線に観光地はないし、観光客が乗るには客車がボロすぎるし、マニアははるばる来ても、観光客は来ないような気がします。まぁ、他の蒸気機関車がどんどん廃止になって、「中国で最後の1つ」になれば、賑わうことになるのでしょうが、それまでこの機関車、壊れずに走り続けられるんでしょうか?

乗りに行きたいという人は、お早めにどうぞ。
 

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