このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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丹後半島徒歩の旅
1997年5月30日正午、タンゴ鉄道「天橋立駅」に降り立つ。
旅の始まりはいつも緊張と不安の入り混じった気持ちになる。
よっしゃ!気合を入れて出発。まずは天橋立を歩き始める。
観光に来てもここを歩いて渡り切る人は何人いるだろう。
自分もそうだった。天橋立は山陰ツーリングで1度訪れた事がある。
松並木の続く道、両脇に海という不思議な光景が楽しい。
女子高生が自転車で通り過ぎる。
何だか懐かしい風景だ。
天橋立を抜け、「股覗き」で有名な「傘松公園」に向かう。
山の上にあるこの公園は、ケーブルカーを使って行くのが一般的らしいが、
やはり「徒歩の旅」なので山道を登っていく事にした。60Lのザックがずしりと重い。
20分掛けてようやく公園に着いた。すでに汗だくである。
「股覗き台」に立ち、両足を広げ自分の股の間から天橋立を覗いた。
海と空が逆転した天橋立が見えた。(満足、満足!)
さて、今日はどこまで歩けるか...。30分に1回の休憩が、ザックの重さに耐えられず、
20分、15分、10分と段々休憩の間隔が短くなっていく。
こんな事で半島1周できるのか?!不安が増していく...。
夕方近く、「伊根の舟屋」で有名な伊根町に入った。すでに身体はクタクタになっていた。
テントを張る場所がなかなか見つからない。
ようやく道の駅「舟屋の里公園」を見つけた。
ここならいいだろう!テントを張り、ホッとして缶ビールで乾杯した。
「お疲れさん!」
公園からは入江に沿って並ぶ舟屋が夕闇にキラキラ光って見えた。
5月31日 昨夜は少し小雨が降ったが、今朝は曇りの天気。
舟屋の里公園から見る伊根の舟屋集落は、本当にすばらしい!
国道から外れ、海岸線の細い道を歩いてみた。
どこからか織機の音が聞こえてきた。
この地が「丹後ちりめん」の産地なんだと実感した一瞬だった。
再び、国道にでたところで、後ろから来た車が止まり、「車より早いやんか!」と声が掛かった。
昨日、傘松公園で話をした大阪のおじさん達だった。「頑張れよ!」とアメの差し入れを戴いた。
甲崎展望台から丹後半島の最北端の経ヶ岬が見えた。
ここからは断崖絶壁のスリルある風景を見ながら歩いた。
昼過ぎ、ようやく半島の先端「経ヶ岬」入口まで来た。
岬までは登山道のような遊歩道を30分、汗まみれになりながら歩いて着いた。
ようやく半分か。バスに乗れば楽が出来るさ...と、悪魔のささやきが聞こえたが振り切った。
左膝の裏が痛みだし、引きずるように歩いた。
夕方、「中浜海水浴場キャンプ場」で、テントを張った。
6月1日 朝から良い天気。7:00前に出発!
海岸線の奇岩や波しぶき、田んぼを見ながら初夏の風を感じる。
しばらくして「間人」という地名を見かけるようになる。
何て読むのだろう?「たいざ」と読むそうだ。
鳴き砂で有名な「琴引浜」は、是非寄ってみたい所だった。
白い砂浜に靴の先を蹴るように歩くとキュッ、キュッとかわいい音がした。
鳴き砂の浜はこれまでに2箇所行ったが、本当に音が鳴ったのは、ここが初めてだった。
感動しながら、キュッ、キュッと歩いた。
「朝茂川温泉」の看板を見つけ、休憩も兼ねて入ってみる事にした。
¥200と低料金で地元の方の温泉という感じがして、とても良かった。
「最北子午線」の塔でひと休み。そろそろ今夜の泊る場所を探し始めないと...。
道は次第に急勾配のカーブが続くようになり、ようやくこの道が峠道であることに気付いた。
地図では平面なので、高さにはなかなか気が付きにくい。
疲労もピークに達してきている時に、この峠越えはキツかった。しかも、日も落ちはじめている。
人家もなく、山の中の道にテントを張る場所はなかなか見つからない。最大のピンチか?!
暗くなり始めた頃、「七竜峠」の駐車場にたどり着いた。
ここなら、テントが張れる!!
ようやく、ホットした。
テントを張り、ほんの少し残っていたカロリーメイトと僅かな水で夕食とした。
明日でこの旅は終りにしよう...。
6月2日 天気は曇り。6:00出発。
今日で歩くのは最後と思ったら、気持ちが楽になった。
「夕日ヶ浦温泉」まで来て、ようやく生活の匂いを感じた。ホッとする。
丹後半島徒歩の旅のゴールはタンゴ鉄道「木津温泉駅」に決めた。
7:30ついに木津温泉駅にゴール!!
達成感と安堵感で、力が抜けた。
あ〜、これで歩かなくていいんだぁ...と、正直思った。
木津温泉は時間が早かったので、まだ営業していなかった。
それなら「城崎温泉」まで足を延ばそう。
電車は速くてなんて楽なんだろう!
豊岡駅でJRに乗り換え、「城崎」で下車。
昔、山陰ツーリングで1度訪れている「城崎温泉」は懐かしかった。
7つの外湯があり、そのうちの「地蔵湯」に入った。¥300だった。
お腹もペコペコだったので、最後に奮発して、カニ寿し(¥1000)を食べた。
ようやく元気を取り戻し、帰りの電車の時間を調べた。
ふと、登山家の植村直己さんの記念館が近くの日高町(植村さんの実家がある)にある事に
気付いた。
JR江原駅で下車し、歩いてすぐの所にあると思っていたが、40分も掛かった。
またしても汗だくになって、「植村直己冒険館」に到着。
受付のお姉さんは、小汚いバックパッカーにも、親切に対応してくれた。
これまでの登山や極地横断、徒歩で日本縦断など、植村さんの冒険の数々を知る事が出来た。
自分も、いつまでも冒険する気持ちを忘れずにいたいと思った。
3泊4日の徒歩の旅。辛い事も多かったが、
終ってみれば、とても充実した良い旅となっていた。
(植村直己冒険館)
(天橋立駅からスタート!)
(傘松公園の股覗き台)
(道の駅「舟屋の里公園」)
(中浜海水浴場キャンプ場にて)
(鳴き砂の「琴引浜」)
(ゴールの「木津温泉駅」)
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