鹹肉粽

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アルバムのタイトルに合わせて、裏ジャケットの写真では小鳳鳳が肉粽を持
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ったものを使っています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ａ面では３・４・６曲目がテンポが速めの演歌色が強い曲となっています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こういったタイプの曲ではかなりストレートな歌い方をしています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小鳳鳳の声に合っている感じがいちばんするのは「愛[手并]才會知輸羸」で
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうか。曲に入るあたりは力むことなくすっと入っていきます。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「父女情深」はデュエット曲で莊學忠が男声です。彼はクラシック的な堂々
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とした歌い方ですので、小鳳鳳の唄法とは若干合わないかもしれません。男声
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　が余裕たっぷり過ぎる感じがします。
　Ｂ面でも真ん中のあたりが演歌色が強いでしょうか。「候時機」や「可憐酒家女」あたりが、そういったタイプでは目立つ曲かなと思います。「酒國英雄」はよく耳にする曲ですが、曲自体の魅力は先に挙げたもののほうが上かなと思います。ただ、この曲の小鳳鳳には歌いやすいようで、声の出し方が楽なようです。「人比人氣死人」も福建專輯ではよく耳にする曲ですが、この曲は張美玲のヴァージョンの出来がいいようです。

　　　　　　　　　　　　　　最初の「賭十糊」はどういった感じといえばいいでしょうか。台湾の民謡的な部分を含んでいるよう
　　　　　　　　　　　　　な作品とするのがいいのかもしれません。曲自体にりメリハリが盛り込まれているわけでもなく、曲の
　　　　　　　　　　　　　終わりが「ド」の音ではっきりと終わるというような決めもないようです。では、作品の魅力がないか
　　　　　　　　　　　　　といいますと、そこは歌い方によるのでしょうね。次の「什麼樂」も似た雰囲気をもった作品ですが、
　　　　　　　　　　　　　このあたりの出来は悪くありません。
　　　　　　　　　　　　　　Ａ面では「摸心肝想看覓」が演歌色のいちばん強い作品ですが、これもそこそこの出来でしょうか。
　　　　　　　　　　　　　しかし、いちばんいいのはやはり最初の「賭十糊」でしょう。
　　　　　　　　　　　　　　「勸[イ尓]不通醉」は華語の「情人勝地」が原曲でしょうか。これは小萍萍も歌っており、アレンジ
　　　　　　　　　　　　　も同じようですが、小鳳鳳の方が作りが重いようです。ただ、これは軽い作りの方が合っていたようで
　　　　　　　　　　　　　す。
　２・３曲目が演歌調ですが、「摸心肝想看覓」より音が軽いようです。小鳳鳳の歌い方もそれに合わせてか力唱する部分は少ないのですが、こちらは乗りで聴かせるタイプとなっており、これは悪くありません。「金包銀」はもう少し力を入れるタイプの作品ですが、「成功不免賺大錢」タイプの方がこちらの面ではうまく出来ているでしょう。
　「一様米飼百様人」は潮州語の曲でも耳にしますが、民謡色が強いタイプといっていいでしょう。速めの曲なのですが、こういった曲でのリズムに重量感があるのが小鳳鳳の特徴の一つでもありますが、この曲あたりはもう少し軽くとも良かったのかなという気もします。

　　　　　　　　　　　　　　カセットというのは１曲目にタイトル曲を置くことが多いのですが、ここでは林強の「向前走」は２
　　　　　　　　　　　　　曲目に置かれています。だからといって１曲目より劣るということはなく、むしろ「向前走」のヴァー
　　　　　　　　　　　　　ジョンの中でも上位だろうと思います。
　　　　　　　　　　　　　　ところで1曲目の「朋友！擱在走」もカヴァーですが、こちらはタイのトンチャイのヒット"KOO-GUD"
　　　　　　　　　　　　　の改作です。
　　　　　　　　　　　　　　こうして最初の２曲がポップス系の曲が並んだのですが、こういったタイプを小鳳鳳は決して苦手と
　　　　　　　　　　　　　していません。３曲目は一転して演歌色強くなりますが、こちらの調子も悪くありません。
　　　　　　　　　　　　　　「三桃調」は民謡の要素が盛られているでしょうか。こういったタイプの中でもいいできでしょう。
　　　　　　　　　　　　　３・４曲目と５・６曲目は同じようなタイプの曲の組み合わせですが、３・４曲目のセットの好が良さ　　　　　　　　　　　　　そうです。
　Ｂ面の方はA3のような、いってみればオーソドックスなスタイルのサイドといってもいいでしょうか。ただ、Ａ面の入り方がいい出来でしたので、こちらの面はやや落ちるかもしれません。
　※印のところは、実は曲順がカセットの表記通りではなく「春風戀情」が４曲目になります。黄乙玲のオリジナルですが、オリジナルの軽みはないようです。こうした曲のカヴァーですと蔡可茘向きでしょうか。しかし、軽い感じの作品が小鳳鳳が不得意ということはなく、ポップな「免代念過去」が悪くない雰囲気です。軽いといっても浮ついた感じにならないところが小鳳鳳のつよみでしょうか。曲の感じが"KOO-GUD"に似ていますが、こちらもオリジナルはタイなのでしょうか。Ｂ面ではこの曲がベストでしょう。
　なおジャケットなどに刷られていたJoyce Limというのが小鳳鳳の英名ですが、これが刷られていたのは1991年の前半だけのようです。

　『向前走』に続いて"Joyce Lim"アルバムですが、こちらも最初はトンチャイの"Pric-Kee-Noo"の改変曲の「焼酒唔通飮卞多」から始まります。これは結構上手く作られていますが、同じ改変曲では侯名儀の「大肥妹」の方が面白いかもしれません。
　トンチャイ的な雰囲気のあるものとしては「愈離愈開」もありますが、これはオリジナルは誰かわかりません。しかし、この小鳳鳳ヴァージョンはなかなか気に入っています。　こういったポップな雰囲気のものとしては、アップの「愛錢有道」もこのアルバムでは出来が上位だろうと思います。「瘋娶某」も悪くはなく、こういったスタイルの小鳳鳳は結構気に入っています。
　オーソドックスなタイプは「[不用]來一套」と「一様米百様人」でしょうが、これらも悪くありません。比べてみますと、若干「[不用]來一套」の方が上でしょうか。
　他には呉鶯音の「我有一段情」の福建語カヴァーがありますが、時代曲のカヴァーとしては、これ以降のアルバムのものの方が優れているようです。