謝采[女云]

　謝采[女云]の声質は軽めで、重量感のあるような曲とはあまり相性は良くないようです。その代わり乗りのいい曲にはまりますと、この軽さが強みになります。
　快樂時代は福建專輯もいくつかありますが、声質的には華語の発音の方がはまる曲が多いようです。賀歳專輯も華語のものが多いようですが、たしかにいろいろなアレンジのものに対応できるようです。
　Ａ面の「福星高照又一年」は張平福の曲でダンサブルな作品ですが、男声がドスを効かせますから、対照的な彼女の声がそれに映えます。最近では四個女生がこの曲を歌っていますが、声に若さがないとこの曲は合わないようです。しかし、不思議なことにオーソドックスな「恭喜發財發大財」でも上手く合っています。「大團圓」からのメドレーは合唱形式ですが、相方は張平福でしょうか。「幸福女孩」はポップなミディアムですが、こういった曲も謝采[女云]には合っています。
　"Rock & Roll"は小萍萍にもありますが、小萍萍の場合は案外とアクが強くあります。謝采[女云]の場合それはありませんが、賀歳曲で歌われても乗りを純粋に楽しめます。こういう趣向が楽しめる歌手は意外と多くありません。「過肥年」あたりは出だしから相当に高い音です。これで固めの声だと聴きづらいのかもしれませんが、彼女の声は高くても柔らかい部分があるのが特色でしょうか。
　「春到綉房」は「小小洞房」の改変ですが、"Rock & Roll"とオーソドックなものが同居していてもあまり違和感がないのが謝采[女云]の特徴かもしれません。

A1．春天來了〜恭喜大家過新年〜新年樂
A2．財神馬上來
A3．福星高照又一年
A4．恭喜發財發大財
A5．大團圓〜接財神〜新年新禧新氣象
A6．幸福女孩
B1．新年Rock & Roll
B2．上上籤
B3．過肥年
B4．分享春的温暖
B5．財神的照料〜春到綉房
B6．向歌友[イ門]拜年〜幸福花兒開〜新年好〜大地回春

　南方から1995年に出された『星願』(NSR-CD-7065)に謝妥[女云]の経歴が簡単に記されているのですが、それによればデビューは1986年だそうですから、このアルバムはかなり早い時期のものにあるようです。ジャケットに(C)が1987年と1988年とがあるので悩まされますが、録音時期は1987年と見ていいかと思います。
　この頃には高い声をコロコロと転がすような面はそれほどないのですが、感じが近いとすれば「早來的遊戯」でしょうか。やや速めのミディアムといった曲調ですが、非常に可愛らしい感じがします。それだけ上手くリズムにも乗れているということなのでしょう。
　異色という感じがするのは「碼頭情歌」でしょう。おそらく、原曲は日本の演歌だろうと思います。曲調もそういった感じですが、これが意外とはまっています。出身地が台南ということを考えれば、こういったリズムには案外と染まっていた可能性はありそうです。
　曲調はミディアムなのですが、バラード的な雰囲気があるのが「當掌聲過後」かと思います。これも非常によく歌われている作品で、６曲目の「紅塵戀」も悪くありませんから、このあたりが出来から見たときのアルバムのメインになりそうです。
　また、１曲目はデュエット曲で、男声は羅賓ですが、この２人が組んだ作品としては1996年の賀歳專輯の『新年好運樂陶陶』が薦められるかと思います。

A1．水車姑娘　　　　　　　　　　　　　　　　　A2．補破網
A3．月夜愁〜一支小雨傘〜媽媽請[イ尓]也保重　　A4．心事誰人知
A5．看破愛別人

B1．十一哥〜勸世歌〜草[虫冥]弄鶏公〜十二蓮花　B2．一粒流星
B3．白牡丹　　　　　　　　　　　　　　　　　　B4．等無人
B5．望春風〜焼肉粽〜六月茉莉〜四季紅

　　　　　　　　　　　　　快樂(Happy)在籍時にどれくらいの録音があるのかわかりませんが、単独版の福建專輯
　　　　　　　　　　　　というのを１枚持っています。
　　　　　　　　　　　　　曲は福建專輯でよく取り上げられるものばかりですが、注目されるのが台湾演歌スタイ
　　　　　　　　　　　　ルの「等無人」でしょうか。小鳳鳳ですと力唱スタイルで決めてくるこの曲を、声質など
　　　　　　　　　　　　がまったく違う謝采[女云]がどうこなすのかと思いましたが、丁寧に歌うことで無難に仕
　　　　　　　　　　　　上げているといえます。ハイ・トーンの声を活かすような曲ではありませんから、上位の
　　　　　　　　　　　　作品とはなりませんが、こういった曲調自体は充分にこなせただろうとは思います。
　全体的にＢ面の出来がいいのですが、こちらの方が声質にあった曲が多いとはいえるでしょう。「一粒流星」あたりはかなり高い音も使いますが、高音がヒステリックでない声質ですからこういった曲には見事にはまります。「白牡丹」などは出だしが声質を活かせる作品でしょう。
　串焼きスタイルの曲が３曲ありますが、これらの中で単独であれば「月夜愁」がいちばん上手く歌われているように思います。ただ、串焼きは１曲では決まりませんから、全体のバランスという点では、Ｂ面最後の「望春風」からの串焼きのほうが上位にくるかと思います。

　「柔情金曲」のシリーズから、14曲を選んで編まれたアルバムのようです。
　周[王旋]の「海角天涯」からスタートしますが、アレンジは意外と重い感じです。ですので、「愛情像氣球」のように軽快な曲ですと、もう少し軽めの音が欲しく感じますが、バラード・タイプの「情詩寫在彩雲上」では、似つかわしい音になっています。ミディアムでも、バラード的な雰囲気を持った曲ではその重さが曲をしっかりと支えたようで、「望著天空的女孩」・「叮嚀」などがそういったタイプでは出来がいいようです。ミディアム〜スローといった曲では「離情」・「良夜不能留」・「遥遠寄相思」がまとまっているようです。
　軽快な曲で上位の曲も欲しいところですが、このシリーズでは謝采[女云]の柔らかな魅力はうまく捉えられているように思います。