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懐かしむ〜南へ〜

列車は定刻8:19に和歌山を発車した。冷水浦(しみずうら)を通過したあたりから車窓右手に紀州灘が広がった。いつも思うことだが、海面はいかにも南国の海といった深いブルーで、それが陽光に映えてひときわ美しい。

 やがて、紀州名産であるミカンの畑が現れた。小さな果実が目に入る。これまた紀伊半島を象徴する風物だ。線路の周辺といわず、なだらかな山の斜面といわず、どこまでもどこまでもミカン畑が続く様は壮観さえある。そうした中を列車は走り続け藤並をを通過。この駅からは有田鉄道の接続駅である。この鉄道は全線5.6kmで1日4往復。特筆すべきことは全国的にもココだけという
「全便休日運休」するのだ。

 御坊(ごぼう)9:13/9:13。ココからは日本一のミニ私鉄の
紀州鉄道が出ている。営業キロは2.7kmしかないのだ。
 白浜10:14/10:16。白浜は日本屈指の泉郷として知られるが、景勝に恵まれた観光地でもある。名勝の三段壁と千畳敷がある。「崎の湯」という日本最古の温泉がある。なんでも千数百年の昔、有間皇子という貴人が入浴したのが最初とかで、その来歴は信じられないほど古く、由緒がある。温泉マニアの3110もこの「崎の湯」に入りたかったが、時間がないので今回はパス。

 周参見(すさみ)10:53を発車すると、海に面して列車は走る。まさに風光明媚だ。11:45串本に到着。
12:07発車までの22分間停車する。ここまで来るのが最も難しかった。串本は?

最難端・最南端なのだ。天気は晴れでものすごく暑い。お昼なので駅弁を買おうかと思ったがここ串本では駅弁の発売はない。そこで駅近くのスーパー「オークワ」に入る。そこで買ったのは?


たかな寿司498円(駅弁だと、めはり寿司)

茹で上げた高菜に醤油を染み込ませ、これにご飯を乗せ巻く。口の中に入れると表現できないほどハーモニーを醸し出して食道へと滑り込んでいく。断然旨い!外は真夏並に暑すぎて汗が吹き出る。頭から滝のような汗をかく。ここから列車は北上する。 

 
走れ!きのくにシーサイド号

紀伊勝浦12:48/13:05。17分間停車。駅前の勝浦海産物センターで、名物の勝浦のさんまの一夜干しを買う。これで一杯。旨い!列車は、紀伊勝浦を出ると、対岸の大島を挟んで橋杭岩が見えた。


橋杭岩

 5時間24分という長丁場を経てようやく終点の新宮に13:33到着。次の列車まで時間があるので徒歩15分で熊野本宮大社、熊野那智大社と並び熊野三山のひとつである熊野速玉大社へ向かう。

 
熊野速玉神社

新宮駅から徒歩2分の所には、徐福公園がある。徐福は約2,300年前、秦の始皇帝に命ぜられて数千人の随行者を連れて日本に不老長寿の薬を探しに来た。なんでも日本には「不死の山」(富士の山)があると聞いていたので。そしてその薬(天台烏薬)をこの地で見つけた後も中国には帰らず、新宮で死んだと言われている。3110はここで発売していた徐福茶を飲んで、白寿が迎えるように願った。

 駅近くのスーパー「オークラ新宮店」で夕飯を買い込む。熊野灘名物の特製かます寿司とサンマ寿司を買って駅に戻った。相変わらず外は暑い。

新宮 15:05 332D → 亀山 21:26 JR紀勢本線 亀山ゆき キハ11型2両(多気からワンマン運転)


キハ11-304

ここ新宮まではJR西日本であったが、新宮から先はJR東海に入る。電化区間から非電化区間に入る。列車は熊野川(新宮川)を渡ると、和歌山県から三重県に入った。これに呼応してか天気もさっきまでカンカン照りであったが急に雲行きがあやしくなり雨が降り出してきた。和歌山県内は熊野神社の神様が守ってくれていたのであろうか?雨足はさらにひどくなってゆく。列車は日本一小さな村である鵜殿(うどの)村へ入り、七里御浜と呼ばれる長い海岸線に沿って各駅に停車しながら進む。熊野灘は並行する旧熊野街道、現在の国道42号線の向こう側に広がっているのだが、防風林に遮られてほとんど視界には入ってこない。熊野市で21分間停車。単線区間なので、上りと下りの特急南紀号交換待ちのための停車だ。外は雨。この区間を走る普通列車は昨年までキハ58系という急行型で運転されていたので旅情が感じられた。しかし老朽化に伴いこのキハ11型という新型車両に置き換えている。しかしこの列車は窓が開かない。つまらない。15:55熊野市発車。ここからリアス式海岸沿いのルートに入る。

 短いトンネルをいくつかくぐり抜け、大泊から上り勾配にかかった。列車は屈曲を繰り返しながら高度を上げて、トンネルとトンネルの間に設けられた小駅に停車しながら進む。眼下にちらりと垣間見る小さな漁港とその先に広がる海の景色は、これまでの紀勢本線にはなかったものだ。賀田を出ると長大な隧道に入って高度を下げ、九鬼水軍の本拠地として知られた九鬼(くき)で海岸に降り立ち、短いトンネルをいくつも抜け、尾鷲(おわせ)湾を巻くように走って尾鷲駅へと滑り込んだ。5分停車して発車。紀伊長島17:15着。乗客の大半が下車してしまった。大雨になった。7分間停車して17:22発車。ここから最後のハイライト区間に入る。荷阪峠越えである。すぐに高度を上げ始め、キハ11はぶるるんぶるるんと車体を震わせながら、ゆっくりと勾配を克服する。時速20kmしか出ない。3110は腹が減ったので新宮で購入した寿司にかぶりつく。


かます寿司(450円)とサンマ寿司(350円)

いやあ生きてて本当に良かったと思えるほど魚とご飯のマッチングには舌が喜ぶ。スイスイと3110の口はまるでブラックホールのように寿司が吸い込まれ行く。寿司の臭いが車内に充満したみたいで男子高校生が「腹減った〜」、隣のお婆さんが羨ましそうに3110を見つめている。その後、さらに乗客の皆さんを空腹の境地に立たされるとは誰も予想できなかった。豪雨の中を列車は走る。やがて長大なトンネルに入り、少し下り込んで無人駅の梅ヶ谷に4分遅れで到着した。17分の峠越えのドラマだった。大雨は止む気配がない。列車無線が客室まで騒がしく聞こえ、車掌が交信している。列車はなかなか発車しようとしない。そして車掌が「大変お急ぎのところご迷惑をお掛けいたします。雨量計が規定値を上回ったため、一時運転を見合わせます。運転再開までしばらくお待ち下さい。」というアナウンス。乗客45人はここで足止めを喰らう。10分、20分、30分・・・・。駅の周りには店が無く何もない。国道が走っているのみ。男子高校生5人は携帯電話で自宅へ電話。そのうち腹が空きすぎて着メロを鳴らし出す。お爺さんは車掌に怒りをぶつける。もうまわりは暗い。時折落雷でものすごい雷鳴が聞こえる。3110は3年前の出来事が脳裏に浮かんだ。

 フラッシュバック 平成9年8月3日(日)

 仙台から「快速いでゆ」に乗車(15:28)。北の方はすごい入道雲がわきあがっている。小牛田から陸羽東線に入る。初めて乗る線だ。終点鳴子温泉で下車して、徒歩3分のところにある「滝乃湯」に入る(150円)。乳白色の温泉で温めと熱めの二つの風呂がある。気持ちいい。駅に戻ると雷鳴が聞こえる。17:53発の新庄ゆきに乗車。この列車にはクーラーが無く扇風機のみ。それで窓を全開する。外は真っ暗になってしまった。堺田でしばらく停車。新庄には遅れて19:56着。予定では山形行きの電車に乗って仙台に向かうのであったが、すでに電車が発車後で、仙台に戻るには陸羽東線で戻るしかない。同じ列車で折り返す。19:06発が遅れて20:06発車。瀬見20:30着。ところが信号機に落雷のため故障。列車は1時間停車してここで打ち切り。乗客5人はタクシー2台に振り替え輸送される。男性2人、女性3人。女性3人は鳴子温泉で下車。3110は仙台までと、もう一人の青年は小牛田まで。瀬見観光タクシーで東進。小牛田に着いたのが23:00。青春18きっぷで初めてタクシーに乗った。乗車料金は22,820円だがもちろんJR東日本が負担する。しかしここから仙台まではタクシーの運転手さんは勘弁願いたいという。ここまで乗せてもらっただけでもありがたい。JR東北本線の仙台ゆきを調べて見るとすでに最終電車が出た後だった。3110は駅寝を考えたが、駅員さんが、そこじゃ大変だから駅員の宿泊所に泊めてくれるという。ありがたい。東北人は心が温かいなあと思った。翌朝には、朝食までご馳走になってしまった。本当にありがとうございました。

列車は、1時間24分遅れて18:58発車。単線区間のため列車交換しなくてはならない。三瀬谷で後続の特急を先に通すために13分間停車する。乗客の中には伊勢市で近鉄に乗り換える人もいた。終点亀山には、1時間17分遅れて21:26に到着した。

亀山 22:08 1356M → 名古屋 23:16 JR関西本線 名古屋行き 313系2両

 名古屋ゆき最終電車に乗車する。

名古屋 23:41 372M → 東京 4:42 JR東海道本線 快速ムーンライトながら 東京ゆき 373系3+3+3両

2日後には、東海道新幹線が止まり、名古屋市内が水浸しになるとはこの時点では誰も予想できなかった。本日のながらは全席満席。3110は先頭車の9号車に乗車。18きっぷで乗れる最後の日だ。安城で日付が変わる。

平成12年9月10日(日)

夜の東海道を走り、早朝に東京に到着。

東京 5:02 402B → 上野 5:10 JR京浜東北線 大宮ゆき 209系10両  

2番電車で上野で下車。

上野 5:13 821M → 高崎 6:54 JR高崎線 高崎ゆき 115系7両

高崎線の始発電車で帰路に経つ。神保原を出ると群馬に入った。終点高崎で乗換。

高崎 7:06 435M → 前橋 7:18 JR両毛線 小山ゆき 115系4両 

本日は仕事のため前橋で下車して、今回の旅終了!

 

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