このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

RICOH AUTO35V

製造会社:理研光学工業株式会社
発売年:1961年(昭和36年)
フォーマット:35mmフルサイズ
レンズ:RICOH KOMINAR 40mm F2.8
シャッター:SEIKO
焦点調節:前玉回転式/3点ゾーンフォーカス
ファインダー:採光式ブライトフレーム(近接撮影時用視野補正フレーム付き)
ファインダー内表示:ゾーンフォーカスピクトグラフ・露光不足警告
露出計:セレン光電池サークルアイ式
露出制御:プログラム自動露出・手動
感度設定:ASA10〜200
サイズ(実測):127x75x64mm 530g
その他装備:セルフタイマー・ホットシュー・シンクロソケット・レリーズソケット・フラッシュマチック機能

リコーのヘンなカメラ。
ヘンといっては悪いのですがしかし
でもこのデザインはカメラの文法からかなり外れていて、
やっぱり奇抜だと思うのです。

このカメラはカメラデザインに革新をもたらしたという、
AUTO35 の発展型です。
それまでのカメラはダイキャストのボデーに上下をクロムメッキのカバー、
その間には革を張るというのが定石でしたが、
AUTO35はボデーを前後から金属のカバーで覆ってしまうデザインとなりました。
結果、他のカメラとはまったく違う、
極めてソリッドでユニークな外観を持つ事となります。

また、「カメラは将来、絞りやシャッター速度の表示は無くなる」
との思想のもとに作られたAUTO35は、
セレン光電池を使用して絞りを自動制御、単速シャッター、固定焦点の
まさに「押すだけカメラ」のさきがけといえるものでした。

さて、このAUTO35Vは、そのAUTO35発売の翌年、1961年に発売されました。
デザイン・機構はほぼそのまま。
塗色をグレーからブラックに、
セレン光電池により、シャッタースピードと絞りを自動的に制御する
機械式プログラム自動露出を搭載しています。
焦点調節はゾーンフォーカスを採用しました。

なんと言ってもカッコイイのは
そのアバンギャルドなデザインでしょう。
古いとか新しいとかをかっ飛ばした
由来不祥なデザインがすごく魅力的です。

あと、かなり古いカメラなのに自動露出機構搭載ってのも先進的でしびれます。
レトロハイテクノロジーです。

なによりうれしいのは結構よく写るところ。
買ったときはレンズカビだらけで、
撮った写真もモヤの中だったのですが、
分解掃除したらえらいシャープな写りと良い色で、かなりうれしかった。
レンズも広角気味で歪曲も少ないんで
ビルとか鉄骨とか撮るとイイカンジです。

欠点はちょっとばかりでかいトコでしょうか。
まあ、ハードケースに入れて、ストラップでぶら下げてるんで、
そんなに気になるほどではないですが。
結構、中身はすかすかなのです。

スパッとフラットな軍艦部。軍艦部とは言えないかも。
航空母艦部?
ホットシューのみ少しでっぱっています。

ちなみに上面には、AUTO35では太くてださい
ゴシック斜体のロゴが入っていたのですが、
AUTO35Vでは、妙にクラシカルな
細い書体のロゴになっており、
これがなかなか上品で良いです。
どういう心境の変化なのでしょうか?

ホットシュー搭載ってのはイイですね。
なにしろ非常に便利です。コード繋がなくても
ストロボセットするだけでOKというのは。
しかもフラッシュマチック機能まで!
このカメラは、フィルムの巻上げを
底面のトリガーレバーで行うのが大きな特徴です。
(リコーの35mmレンズシャッター機の伝統らしい。)
いかにもヘンテコですが、これが使ってみると
とても使いやすい。
下側にこんなものが出っ張ってると、
なんだかじゃまな印象があるけど、
別にカメラは床に置いて使うものではないのである。

トリガーを起こし、
左手で前方に向かってレバーを半回転させる
「ジャカ!!チキチキチキ」っていう
この操作がかなり気持ちよくてイイカンジです。

巻き上げレバーのすぐ下にある銀色の突起は
フィルム巻き戻しボタンです。
レンズ鏡胴下面。
トリガー部分は、通常は横向きに格納しておきます。

鏡胴の下に生えてるのが絞り値設定レバー。
通常は「A」でオート撮影。

ストロボ使用時は、
「GUIDE No.」で、ストロボの
ガイドナンバーを設定しておき、
鏡胴上面の「FLASH」部に
表示される色と同じ色の●印に合わせると、
ストロボの明るさと撮影距離に応じた
絞り値に設定される。
フラッシュマチック機能というものです。
さらにもう一つの大きな特徴。
シャッターレバー(ボタンではない)が
前面、レンズの横に生えているのもイカス。

中指で押すのが押しやすい。
ストロークはかなり大きいです。

レンズの周りにあるのはセレン光電池。
この部分で被写体の明るさを判断して、
露光量を自動的に調節します。
基本的にプログラムオート撮影のみです。
ゾーンフォーカスのピクトグラフが
なんだかヘンな象形文字でかなりカッコイイ。
シャーロックホームズの「踊る人形」みたいです。

左に見えてるのはセルフタイマーレバー。

上の「FLASH」の文字は、
使用するフラッシュのガイドナンバーを設定しておくと、
撮影距離に応じた絞り値を
色で示してくれるという機構です。
ピクトグラフはファインダーの中にも
表示されるようになっていて、
これは非常に視認しやすく便利です。

中央左よりに下から生えているのが
露出計の指針です。
下部の赤い部分に指針の像が入っていると、
露出不足ということのようです。
ただし、シャッターロック等の機構はない上に、
暗いと非常に視認しにくいので、あまり意味ないです。
些細な所では、底面のフィルムカウンターが
巻き戻しクランクと同軸に付いていて、
フィルムを巻き上げると、
カウンターとクランクの軸のカニ目ネジが
互いに逆方向に回るのがイイ。

ちなみにここのカニ目ネジは、
フィルム給送を確認するためのもののようです。
わざわざケースが切り欠いてあります。

カウンターが底面に付いてるのは
確認に不便な気もしますが、
ケースを開けなくても残数が確認できるので、
全然不便ではないのです。
頑丈そうな巻き戻しクランク。
ところが、軸が良くわからない構造の
ジョイントになっていて、ぐらぐらなのです。
なんだか不安です。

通常はたたんで格納しておきます。
その場合は、クラッチが外れて、
軸が空転するようになっています。
フィルム室のフィルム巻上げのスプロケットが
やたらでかくて戦車の起動輪みたいな。
こんなでかいのはじめて見ました。

フィルムと噛み合う歯数を増やすためなのか?
スプロケットが下側にしかついていないから。
純正のハードケース。

底面に巻き上げレバー・カウンター等の
機構が集中している関係で、
ケースの底面が切り欠きまくってありますが
強度確保のため、金属板が入れてあり、
非常に頑丈なケースです。
ストラップの取りつけ部はプラグ状になっていて、
簡単に取り外すことが出来ます。

普段はカメラを乾燥剤の入った戸棚に
しまってる自分にとっては
なかなか便利な仕掛けです。

ちなみにこのパーツはネジになっていて、
取ると前面カバーが外れます。

取りつけ穴の上に開いているのは
ケーブルレリーズ等をねじ込むソケットです。
内部構造みると、露光量を決定するカムの段数が
10段階くらいしかないんだが…いいのか?
PEN-EEのカムはのこぎり並に段数あるのに…
後ろから。真っ黒けです。
慣れないと接眼部がどこだかわかりません。
このデザイン手法(シルバーと黒で前後からカバー)と
機構のコンセプト(押すだけ簡単自動露出)は、
AUTOHALF(写真左)に受け継がれています。
名前もそのまんまだし。

一見なんだか奇妙なカメラですが、
その裏にはいろいろな理由に基づく
アイデアが隠されていて、
そういうトコロにふと気付くと、
奇妙が感嘆に変換される。
そんな感じです。

Return

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください