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鉄道のはなし
〜第1回 「快速」のはなし〜

中島  健

 普段電車に乗っていると、「おや」と思うことがある。そう、優等列車の名前の違いである。例えば、JR線で「特急」というと、専用車両で豪華な内装を持つ特別優等列車のことになるが、京王帝都電鉄では、「特急」とは単に自社の列車で最も早いものを現しているに過ぎず、車両も「普通」列車と共通の通勤型車両である。
 JR(及び旧国鉄線を第三セクター化した私鉄、伊豆急行)には、基本的に「普通」「快速」「急行」の3種類の列車種別があるが、このうち「快速」と「急行」は「普通列車より早く、通過駅があり、速達運行をするもの」と定義することができる。両者の違いは、特別に料金を取るかどうかだけであって、「急行」系列の列車は特別料金を取るのに対し、「快速」はサービスであって特別料金は取らない。

  JR、東武  大手私鉄各社 
 急 行 特別急行、急行
快速急行、準急行
特急(小田急、西武、名鉄、
近鉄、南海)
スカイライナー(京成)
快 速快速、特別快速、
新快速、通勤快速、
区間快速、通勤特快
快速特急、特急、快速急行
急行、区間急行、通勤急行、
準急、区間準急、通勤準急、
快速、区間快速、通勤快速
普 通普通普通、各駅停車

「急行」系列には「特別急行」「新特別急行」「準急行(現在では廃止)」そして「急行」がある。かつては、有料優等列車は「急行」が基本であり、「特急」は高嶺の花、庶民の脚としては「準急」「急行」が主流だったが、現在ではほとんどの列車が「快速」に格下げされる(利用者が見込めないもの)か「特急」に格上げされる(利用者がまだ見込めるもの)かして、「特急」の方が圧倒的に数が多い(急行の特急格上げは、事実上の運賃値上げでもある)。なお、「新特急」とは国鉄が東北本線・高崎線地区に作った新種別で、185系という設備が二流の列車(なにしろ、この車両は「特急と普通両方に使えるようにしよう!」ということを目標にして作られ、結果快速並みのものが出来上がったものである)で運行されるビジネス特急である。さすがに、特急料金は一般より安い「C特急料金」を適用しているのだが。
 一方、「快速」系列には「(ある種の)普通」「快速」「区間快速」「通勤快速」「新快速」「特別快速」「中央特別快速」「青梅特別快速」「通勤特別快速」などがあり、列車名があるものと無いものがある。列車名があるものの中には、「ホリデー快速」のように、臨時列車であって運行目的を明示するためにつけたもの、「赤倉」のように急行列車が格下げされて愛称だけ残ったもの、「ムーンライト」のように夜行バスに対抗するために、「急行」並みの設備を備えながら指定席料金だけで乗車できる新しい列車がある。なお、「ホームライナー」も一種の快速である。「新快速」とは、東海道本線名古屋地区・京都大阪地区で運行されている列車で、車内設備は前述の185系特急電車なみ、停車駅も急行なみの列車である。この列車が生まれたのは、名古屋地区では名古屋鉄道との、京都大阪地区では京阪電鉄、阪急電鉄、阪神電鉄との競争があり、競争原理によりサービス向上がはかられているからである。
 JRでは、大都市近郊区間では、遠距離列車と近距離列車を分離する「緩急分離」が行われている(例えば、東海道本線大阪・京都地区、京浜東北線と東海道本線・東北本線、常磐線東京口、総武本線、中央本線東京口)が、遠距離列車はこの区間では快速運転となるため、「普通」と表示されていても途中通過駅があったりする。逆に、中央本線東京口では全列車が快速列車扱いだが、高尾以遠からくる「普通」列車は、なんと特別快速より通過駅が多いというねじれ現象が起きている(もっとも、中央本線快速列車は「快速」と表示しないし、また「普通」列車は早朝のみの運行なので、実際に混乱することは無いが)。では、中央本線では各駅に止まる列車を何というかというと、「各駅停車」乃至「中央総武緩行線」(黄色い電車)と呼ぶ。
さて、以上はJRにおける「快速」と「急行」の在り方であったが、これが私鉄になると状況は全く変化する。一口に「私鉄」と言っても、①阪急電鉄や東急電鉄のように通勤路線の性格が強いものと、②西武鉄道や東武鉄道のように、郊外に観光地を抱えるため有料の特急列車を運行しているもの、の2種類がある。
 ①の場合、路線の距離にもよるが、「特急」「急行」とは、単なる「快速」の上位概念であって、JRの分類では「快速」の一種である。「特急」という威勢のいい名前は速達サービスの看板列車につけられることが多い。例えば、阪急の「特急」はJRの「新快速」に対抗する列車で、特別料金を徴収しないがある程度の車内設備を備えた特別車両で運行されている。また、路線の距離が短い場合や列車種別が2種類で済む場合には、速達列車名に「快速」「急行」が使用される。なお、京浜急行電鉄には、「普通」「急行」「特急」「快速特急」「通勤快速特急」という5種類の列車がある。

▲京王電鉄の「特急」は特別料金不用の通勤列車(京王線新宿駅)

 ②の場合、「特急」は特別料金を徴収する、座席指定制の豪華優等列車であって、JR概念における「急行」に相当する。しかし、その下の「急行」「準急」はあくまで通勤用車両を使った速達列車であって、JR概念における「快速」である。西武鉄道や小田急電鉄、近畿日本鉄道、南海電鉄などがこれに該当する。なお、東武伊勢崎線・日光線では、JR概念と同様の列車種別が設定されており、「特急」の他「快速急行」「急行」であっても特別料金を徴収する。ただし、「準急」はJR概念の「快速」扱いである。また、京成電鉄では、JR概念の「急行」を「スカイライナー」と呼び、これとは別に「快速」相当の列車として「急行」「特急」「通勤特急」を設定している。

中島 健(なかじま・たけし) 大学生


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