このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 三軒茶屋 

 かつての全共闘もそうであったが、一般的に、社会における自己の地位が確立していない学生時代は、自らの存在をある程度抽象化できるからこそ、政治や経済に対して比較的意見を持ちやすい(これに加えて、学生はある程度自由に時間を処分できることも大きいだろう)。また、都市生活者やサラリーマンといった人々も、比較的これに似た地位を有している。最近の選挙における「無党派層」の台頭は、こうした抽象的存在としての選挙人の総体のことである。しかし、何と言っても(その数において)重要なのが、専業主婦の層である。最近の市民運動ではこうした主婦層の参加が多いと聞くが、彼女らの持つ政治力は、場合によっては野党に力を与え「風」を起こす。
 ところで、こうして抽象的存在として政治を語ることが出来る立場にある人間は、必要な情報と時間、知識さえあれば、比較的長期的な視点から判断を下しそれを国政に反映させることが出来る。その投票行動が具体的利害関係に左右されないからであり、その面では時には非常に賢い判断を下す可能性を秘めているといえるのだが、現実は、そうした長期的視野による投票行動に出るだけの情報や時間、知識が不足しているので、無党派層の多くは結局報道等に左右されて投票行動に移ることになるし、逆に愚かな判断を下しやすいとも言える。例えば、前述した主婦層も、「ゴミ処理問題」や「保育所の不足」といった問題を扱っている限りは利益集団の一員であり、他の圧力団体に組織化された有権者と大差無い。「月々の生活費が増える」との理由から消費税に反対するのも同様である。
 しかし、もし仮に、これらの「無党派層」が、外交・安全保障・経済といった国家的課題に対して、十分な関心と知識とを持つようになり、それが投票行動に反映されるようになったとすれば、日本の政治は大きく変わるのではないだろうか。ことに、時間的余裕の点でもっとも恵まれている学生層及び主婦層は、潜在的な力を秘めていると言えるだろう。あるテレビ番組で、「政治は分かりにくい。ゴミ問題のようなB級公約をもっと掲げて、わかりやすくすべきだ。そうすれば政治は変わる」といったコメンテーターがいたが、それではいつまでたってもB級政治のままであろう。

中島 健(なかじま・たけし) 大学生


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