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三軒茶屋
報道によると、5月3日の西鉄高速バス乗っ取り事件で、刃物で武装した犯人の少年は、「大人しくしていれば傷つけない」といい、逆にバスから乗客が脱走したことについては腹を立て、報復措置として乗客を切りつけていたという。また、ある乗客の証言によれば、少年は自ら「やる」と宣言したことは必ず実行していたという。
こうした状況を聞いて気づいたのが(これに気づいたのは、事件についてコメントしていたある法史学の先生の発言であった)、「このバスの車内には一つの法秩序が存在していたのかもしれない」ということである。即ち、少年は「大人しくしていれば傷つけない」と宣言していたというが、これは逆に少年自身をも拘束する、人質との一つの「契約」であり、あくまで刃物による威嚇の下にあったとはいえ、そこには少年を頂点とする秩序が成立していたように思える、ということである。法を「力による強制と服従」と捉えれば、正にこれも一つの法秩序であろう。
もっとも、バスの車内からは男女数名の乗客が脱出しているが、これも又法哲学的に見れば興味深い事象である。つまり、少年の作り出した法秩序は、結局その名宛人から道徳的承認を得られなかった(=悪法であった)のであり、(刃物1本では武力の威嚇も不十分だったこともあり)故に少年の作った「法秩序」は彼らの逃走を止められはしなかったのである。中島 健(なかじま・たけし) 大学生
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