このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 三軒茶屋 

 先頃終わった我が国と北朝鮮(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)との国交正常化交渉は、いくつかの実務的な合意を除いて結局双方が基本的な立場を表明するに留まった。もっとも、交渉後半で日本の高野大使は、我が国が「過去の清算」について前向きな態度で臨んでいることを強調。日本人拉致問題さえ解決すれば、我が国としても「過去の清算」を行う用意があることを明確に打ち出した。
 では、何故北朝鮮側は譲歩しないのであろうか。まず考えられるのが、主権国家としてのプライドが「拉致」事件を認めることを許さない、という理由である。もっとも、「国家のプライド」という点では、北朝鮮側が求める「過去の清算」という要求も等しく(あるいはより重く)関わる点であり、理由としては弱い(自国のプライドが傷ついても相手国のそれがもっと傷つくなら、譲歩は比較的容易なはずである:もっとも、北朝鮮側がそんな「衡平」を考えていないということのほうが確率が高いし、オランダの如く植民地支配に金輪際謝罪しない国もあるが)。次に考えられるのが、拉致問題を交渉の切り札として温存し、「過去の清算」で引き出す援助額を吊り上げようとしている、という理由である。言わば国家規模の身代金要求に他ならないが、北朝鮮側が早期に「清算」を得たいとすれば、限界もあろう。
 そうなると、残る理由としては、「拉致を認めることのほうが交渉上不利になる」ことしか考えられない。北朝鮮側の態度が、(この仮定は拉致被害に遭われた被害者家族の方々には大変気の毒だが)拉致された10人は既に殺害され(あるいは死亡し)ている為、これを正直に告白する(あるいは、「全員、病死ないし自然死」と発表しても、殺害を十分疑われよう)と、却って日朝交渉の進展を妨げる、だから拉致問題については否定の一点張りで押しとおす、という戦略である可能性もあるのではないだろうか。

中島 健(なかじま・たけし) 大学生


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