このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 国語日記 

『構造改革』

 このところ、この4文字を聞く機会が多い。いわく、「構造改革か景気回復か」「構造改革に本気で取り組め」「構造改革なくして日本経済に明日は無い」・・・まるで、「構造改革」をやれば将来がバラ色の如くである。
 だが、この「(経済)構造改革」なる用語が意味するところは重大である。即ち、「構造改革」とは、21世紀のIT時代に相応しい国際産業競争力を確保するために衰退産業の退出と新規産業の振興をはかることであるが、それはこれまで我が国の主要産業として労働力を吸収してきた建設業等の「斜陽産業」の多くの企業を倒産に負いこみ、大規模小売店舗やチェーン店の展開によって地元商店街を衰退させ、半ば強引に「整理」を行なうということである。物事を社会的に考えるクセのある経済学者にとってそれは経済理論の遊びであるが、「退出」を強要される斜陽産業の関係者にとっては正に実存をかけた戦いになる。彼らは、正に「日本経済のために」職を失うことを求められているのである。 
 だから、そうした「痛み」を一部の国民に求めるこの「構造改革」という課題をスムーズに遂行できるのは、「痛み」を実際に感じるであろう当の国民に支持されている政党だけである。無論、「改革を強いる」側の国民が多数派になれば、「改革される」側の国民の反対を押し切って強行することも出来なくはないが、そうすれば、「改革される」国民と「改革を強いる」国民との間に癒し難い傷を残すであろう。

中島 健(なかじま・たけし) 大学生


目次に戻る

製作著作:健論会・中島 健 無断転載禁止
 
©KENRONKAI/Takeshi Nakajima 2001 All Rights Reserved.

 

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください