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小泉政権の船出を祝う
〜自民党再生、政治再生の第一歩に〜

中島 健

 森善朗首相の退陣表明に伴い実施された自由民主党の総裁選挙は4月24日午後、同党本部で開催された両院議員総会で本選挙が行なわれ、国会議員346票と都道府県連票141票の内小泉純一郎元厚相が298票、橋本龍太郎元首相(行革担当相)が155票、麻生太郎経済財政担当相が31票を獲得して小泉氏が新総裁に選出された。この総裁選挙では、都道府県代表に配分された141票のうち、実に123票を小泉氏が獲得(橋本氏は15票、亀井静香自民党政調会長は3票)。本選挙では亀井氏の出馬辞退と江藤亀井派の小泉支援もあって橋本派・堀内派が推す橋本氏を圧倒的大差で打ち破った。その後の人事では、党三役に山崎 拓幹事長(山崎派)、麻生太郎政調会長(河野派)、堀内光雄総務会長(堀内派)をそれぞれ指名し、閣僚人事でも民間人3人、女性5人を含む脱派閥の異例の顔ぶれとなった(下表)。

閣僚役職名 前所 属略 歴
内閣総理大臣小泉 純一郎
(こいずみ・じゅんいちろう)
自由民主党
無派閥
衆議院当選10回
59歳、厚生大臣、郵政大臣、自由民主党
副幹事長を歴任。
総務大臣片山 虎之助
(かたやま・とらのすけ)
自由民主党
橋本派
参議院当選2回
65歳、自由民主党参議院国会対策委員長、
大蔵政務次官を歴任。総務大臣は再任。
法務大臣森山 真弓
(もりやま・まゆみ)
自由民主党
旧河本派
当選衆院2回参院3回
73歳、環境庁長官、文部大臣、官房長官を
歴任
外務大臣田中 真紀子
(たなか・まきこ)
自由民主党
無派閥
衆議院当選3回
57歳、衆議院予算委員会委員、科学技術庁
長官を歴任。
財務大臣塩川 正十郎
(しおかわ・まさじゅうろう)
自由民主党
森派
衆議院当選11回
79歳、自由民主党衆議院議員総会長、自治
大臣を歴任。
文部科学大臣遠山 敦子
(とおやま・あつこ)
独立行政法人・
国立美術館理事長
62歳、駐トルコ大使、文化庁長官を歴任。
初入閣。
厚生労働大臣坂口 力
(さかぐち・ちから)
公明党
衆議院当選8回
公明党政策審議会長、同副代表、労働大臣
を歴任。再任。医師。
農林水産大臣武部 勤
(たけべ・つとむ)
自由民主党
山崎派
衆議院当選5回
59歳、自由民主党国会対策副委員長、自由
民主党副幹事長を歴任。初入閣。
経済産業大臣平沼 赳夫
(ひらぬま・たけお)
自由民主党
江藤亀井派
衆議院当選7回
61歳、衆議院議院運営委員長、運輸大臣を
歴任。再任。
国土交通大臣扇 千景
(おおぎ・ちかげ)
保守党・党首
参議院当選4回
67歳、科学技術政務次官、自由党副代表、
保守党党首を歴任。国土交通大臣は再任。
環境大臣川口 順子
(かわぐち・よりこ)
(株)サントリー常務60歳、行政改革推進本部規制改革委員を歴
任。再任。
内閣官房長官
男女共同参画担当大臣
福田 康夫
(ふくだ・やすお)
自由民主党
森派
衆議院当選4回
64歳、自由民主党政務調査副会長、外務政
務次官を歴任。再任。
国家公安委員会委員長
防災担当大臣
村井 仁
(むらい・じん)
自由民主党
橋本派
衆議院当選5回
64歳、内閣府副大臣、自由民主党国会対策
副委員長を歴任。初入閣。
防衛庁長官中谷 元
(なかたに・げん)
自由民主党
加藤派
衆議院当選4回
43歳、陸上自衛隊二等陸尉、自治総括政務
次官、自由民主党広報局長を歴任。初入閣。
北方対策本部長
沖縄担当大臣
科学技術政策担当大臣
尾身 幸次
(おみ・こうじ)
自由民主党
森派
衆議院当選6回
68歳、自由民主党幹事長代理、経済企画庁
長官を歴任。
金融担当大臣柳沢 伯夫
(やなぎさわ・はくお)
自由民主党
堀内派
衆議院当選6回
65歳、金融再生委員会委員長、国土庁長官
を歴任。金融担当大臣は再任。
経済財政政策担当大臣竹中 平蔵
(たけなか・へいぞう)
慶應義塾大学
総合政策学部教授
50歳、IT戦略本部員、日本開発銀行員を歴
任。初入閣。経済学博士。
行政改革担当
規制改革担当大臣
石原 伸晃
(いしはら・のぶてる)
自由民主党
無派閥
衆議院当選4回
44歳、自由民主党税制調査会幹事、通産政
務次官を歴任。初入閣。
自由民主党役職名 前所 属略 歴
幹事長山崎 拓
(やまさき・たく)
自由民主党
無派閥
衆議院当選10回
64歳、建設大臣、防衛庁長官、厚生政務次
官、自由民主党政務調査会長を歴任。
政務調査会長麻生 太郎
(あそう・たろう)
自由民主党
無派閥
衆議院当選7回
60歳、衆議院外務委員長、文部政務次官、
経済企画庁長官、経済財政担当大臣を歴任。
総務会長堀内 光雄
(ほりうち・みつお)
自由民主党
無派閥
衆議院当選4回
71歳、自由民主党総務局長、行政管理政
務次官、労働大臣、通商産業大臣を歴任。
参議院議員会長竹山 裕
(たけやま・ゆたか)
自由民主党
橋本派
参議院当選3回
67歳、自由民主党人事局長、参議院予算委
員長、科学技術庁長官、同政務次官を歴任。
参議院幹事長青木 幹雄
(あおき・みきお)
自由民主党
橋本派
参議院当選3回
66歳、大蔵政務次官、内閣官房長官、沖縄
開発庁長官を歴任。

▲小泉政権の閣僚人事・党五役人事

 「改革者」「変人」として知られる小泉氏が首相になった暁には、経済・政治の構造改革が進捗するであろうことがかなりの高い確率で期待される他、小渕政権後期と森政権で低下した自民党への支持回復にも繋がるものと見られるだけに、国民の圧倒的人気(各種メディアの世論調査では、小泉内閣は「無党派知事」なみの75〜90%の支持率を獲得している)を得た小泉首相の就任を、まずは心から喜びたい。政権交代に匹敵する清新さと実行力に満ちた閣僚人事を見ても、小泉首相が「本気」であることが伺われるというものだ。これだけの人事が可能だったのは、やはり小泉首相がある種「首相公選」に近い形で選出され、民意の支持を背景に持っているからに他ならない。「構造改革」については既に自由党や民主党も主張していることではあるが、政権を担当する与党党首の発言と、次期政権を狙う野党党首のそれとではやはり重みが格段に違う。当初心配されていた外交・安全保障政策についても、憲法9条の改正や集団的自衛権の行使容認、李登輝前台湾(中華民国)総統の訪日容認といった態度を打ち出しており、極めて明快な路線を打ち出していると言える(ただ、田中真紀子外務大臣が李前総統訪日や歴史教科書問題で「つくる会」に慎重な態度をとっているのが気になる)。更に、小泉氏は憲法改正による首相公選制の導入を現実の政治課題として取り組む考えとも言われ、国会の憲法調査会での論議と併せて、憲法改正にむけた動きが一層加速するものと見られている。

小泉首相の大看板が掲げられた自由民主党本部
(東京都千代田区・永田町)

 ところで、小泉内閣の発足について、野党各党幹部は相変わらず辛口の評論を試みている。例えば、民主党の鳩山由紀夫代表は、「今まで政策論争しようと思っていてもスキャンダルばかりで十分できなかった。今度は逆に政策論争で勝負でき、むしろ面白い。(小泉氏の)発言も後退してきている。」とした上で、「7人の閣僚が再任され、清新さが感じられない。改革のスピードが鈍る。」とのコメントを発表した(26日)。同氏はまた「ワイドショー内閣だ」等とも発言していると聞くが、鳩山氏のこれらの論評は結局批判のための批判でしかない。「ワイドショー」的な新しさを求めたわけではないからこそ実力ある閣僚が再任されたわけだし(例えば、柳沢金融担当大臣、川口順子環境大臣)、官邸スタッフ(福田康夫官房長官)や連立与党枠(扇千景国土交通大臣、坂口力厚生労働大臣)が再任されるのはやむを得ないことである。顔ぶれを見れば「目立つ人」「女性」と同時に「若手実力者」の登用もある。塩川正十郎財務大臣や尾身幸次特命担当大臣(北方対策本部長・科学技術政策担当)を総裁選挙の論功行賞と見るむきもあるが、これも「派閥均衡」ではなく首相の勝利に貢献した人物を登用したのだから問題は無い。その他、自由党の藤井裕久幹事長は「小泉さんが本当に改革するのか、ある種期待を持っていたが、その後の発言や閣僚人事を見て、極めて失望した。財務大臣だが、大きな構造改革を実現できない方だ。外相も、日米関係の共同体制や柔軟なアジア政策をどこまで理解しているのか、危ぐしている。自民党の体質は、民間人を形だけ置き、現実には党の政調や部会が牛耳っている。これじゃあ駄目だ。民間人を入れた意味が全くない。」とこれまた辛口のコメントだが、いくら野党が政権党を批判するとはいっても、「よい点は素直に認める」という態度でなければ、単なる悪口にしかなるまい。なにしろ、与党党首は「飾り物」にもなり得るがその支持基盤を利用して「政策実行者」にもなり得るが、野党党首は「政策実行者」になるだけの支持基盤がないのだから。その点、社会民主党の土井たか子党首は「あれだけ改革をおっしゃったんだから、内閣の総入れ替えを期待される方が多いし、そう思っていたが、留任が多い。派閥ということを意識しないと、自民党そのものを続けていくことができないのかな。総裁の顔は変わったが、自民党は変わっていない。女性の数が多いのはまことにいいことだが、数が増えさえすればいいとは言えない。単に飾り物だと思っていたら訳が違う、というところを見せてもらいたい。」と、いつもの「何でも反対・おたかさん節」からすればそれなりに慎重な物言いだった。
 今後、経済構造改革等の具体的な政策が打ち出されるに連れて、小泉政権は与野党から批判を浴びる局面も出てくるであろうが、小泉首相にはそれを撥ね返して果断に内政・外交を進めてもらいたいと思う。また、我々国民としても、一旦小泉氏を総理大臣として支持した以上は、例え小泉首相から痛みや負担増を求められる政策を打ち出されても、これを甘受する態度が求められていると言えよう。

中島 健(なかじま・たけし) 大学生


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