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国語日記
『弁護士』
弁護士は当事者その他関係人の以来によって、訴訟事件その他の法務事務を行うことを職務としている(昭和24年法律第205号「弁護士法」第3条)。具体的には、刑事訴訟・民事訴訟における事務(訴訟事務)が中心になるが、他にも企業の法律顧問(企業法務)、日常的な法律相談、訴訟外での和解といった形で予防司法等の分野にも活躍している。更に、破産事件や会社更生事件では裁判所の指名を受けて破産管財人や更生管財人の職務を行うこともある。
もっとも、こうした仕事をする専門家を何故「弁護士」と称するようになったのかは、謎だ。「弁護士」なる名称が登場したのは明治23年の裁判所構成法・(旧)民事訴訟法・(旧)刑事訴訟法からで、江戸時代に訴訟事件を扱う職業は「公事宿」(幕府公認)又は「公事師」(非公認で、悪徳公事師も多かった)と呼ばれた。明治初年の「司法省職制並ニ事務章程」(司法職務定制、明治8年太政官無号達)では「代言人」と呼ばれた(ちなみに、公証人は「証書人」、司法書士は「代書人」と呼ばれた)。「弁護士」はあくまで職業の名称であって、民事訴訟における立場は「訴訟代理人」、刑事訴訟では「弁護人」と呼ばれる。
英国では、訴訟代理人を務める法廷弁護士を「barrister」(これは、法廷で被告人席を仕切った柵=barrierに由来する)、書類作成等の事務を行う事務弁護士を「solicitor」(solicitは「請願」という意味)と呼んで区別している(但し、1992年からは事務弁護士も法廷に立つことが出来るようになったが、伝統のかつらを被ることはできない)(我が国における「外国法事務弁護士」は、こちらのニュアンスなのであろう)。米国では、弁護士は一般に「lawyer」だが、他にも「attorney at law」「attorney」(訴訟代理人)、「counselor」(法律顧問)、「jurist」(法律家)、「advocate」(法廷弁護士)といった表現がある。上述した弁護士の職業領域からすれば、「attorney」「advocate」的なニュアンスを有する「弁護士」よりも、「lawyer」的な意味合いを込めて「法理士」乃至「法務士」(左の2つは私の造語である)とでも呼んだほうが適切なのではないだろうか。中島 健(なかじま・たけし) 大学生
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