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国語日記
『帝都高速度交通営団』
小泉政権の特殊法人見直し論議の中で、2004年から東京の営団地下鉄を運営する帝都高速度交通営団が民営化されるというニュースが報じられた。昨今の行革の流れからすれば、首都における地下鉄道整備の歴史的役割を負えた営団地下鉄の民営化は正論であろう。ただ、私が危惧するのは、その民営化された新しい会社の社名である。
最近の公的セクターにおけるネーミングセンスの悪さには、正直言って辟易させられる。例えば、東北新幹線八戸延伸開業に伴って地元自治体へ委託されるJR東北本線の第3セクター運営会社は、岩手県側が「IGRいわて銀河鉄道」、青森県側が「青い森鉄道」という名前になることが先頃決まった。岩手県側会社の名前は同県出身の作家・宮澤賢治の著作にひっかけた名前であろうが、それにしても地域の実生活に密着した鉄道路線の名前に「銀河鉄道」等という浮世離れした名前をつける神経が知れない。何故、端的に「岩手鉄道」乃至は「岩手県営鉄道」にしないのか。青森側会社の「青い森鉄道」も、ダジャレ以上のものにはなっていない。このセンスの悪さは都市部でも見られる現象で、例えば現在建設中の常磐新線は、正式な路線名が「つくばエクスプレス」になった。列車名としてならともかく、この「つくばエクスプレス」なる名称を路線名にすれば、案内表示や沿線の住民・企業も一々この長ったらしい路線名を引用しなければならず、不便極まりない。それでも、最終選考で残った「ゆめみらい」よりはマシなのだが・・・むしろ、従来の「常磐新線」のままのほうが、①その路線が常磐線方面に存在していることがわかる(地理的位置関係が明快)、②漢字4文字で表記も簡易・「新線」という文字のインパクトが十分強い、③既に周知されていて新たな名称を募集・宣伝する費用が省ける、等利点が多い。
この状況に鑑みると、営団地下鉄が民営化された際の名称も、「東京メトロ株式会社」であるとか「ゆめめとろ株式会社」といった極めてダサい名前になってしまう可能性が高い。「都営環状線」が「都営大江戸線」になってしまったという前例もある。また、「営団地下鉄」の通称を変更するとなると、首都圏の全ての営団駅の自動案内放送・案内掲示・運賃表を修正しなければならなくなる他、JR・私鉄各線の案内表示等も同様に変更しなければならず、余計かつ膨大なコスト(無論、そのコストは運賃に転嫁される)がかかる。法人の正式名称は伝統ある「帝都高速度交通」を残した「帝都高速度交通株式会社」、「首都高速鉄道株式会社」または「営団地下鉄株式会社」とし、通称名は現在の「営団地下鉄」のままにする(「営団」を固有名詞として使う)のがよいのではないだろうか。中島 健(なかじま・たけし) 大学生
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