このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 三軒茶屋 

 小泉政権の打ち出した特殊法人改革論議が盛んである。最近の報道では、石油公団や日本道路公団といった法人が民営化の対象となると報じられ、更にその他のものもゼロベースで見なおすことになるという。
 ところで、この特殊法人論議の中で一つ疑問に思われるのが、「特殊法人は赤字を抱えているから民営化すべきだ」という議論である。そもそも特殊法人とは、国の予算が会計年度で区切られているために継続的な予算措置が必要な事業を直接執行できないのを補うために設けられた制度である。その意味では、特殊法人の行う事業は最初から「採算性」といった視点を度外視した(せざるを得ない)ものばかりであり、またそれが普通なのである。例えば、今日我が国は多額の福祉予算や科学技術予算を毎年消費しており、それらの予算項目に沿って投入された投資からは(一部の手数料や自己負担分等を除けば)特段の利潤を得ているわけでもないが、それを以って「福祉・科学技術予算は大赤字」等と批判する論者はいない。これらの分野では、そもそも市場原理だけでは資金調達が難しいが故に、まずは必要経費を計上し、次いでそれに見合った税金を国民から徴収するということが行われているのであって、それが国の予算というものだからである(赤字が問題になるとすれば、それは税収よりも多くの支出をしている場合であろう)。石油公団や日本道路公団も、形式上中央省庁本省の事業でないだけであって事態は福祉・科学技術予算と同じであり、そもそもが赤字なのである。
 無論、だからといって特殊法人改革が不必要だということではない。例えば、現在、私鉄新線の建設には日本鉄道建設公団等が関与し、一民間企業には過大な先行投資となる鉄道インフラの整備に政府が一定の役割を担っているが、日本道路公団も、今後は鉄建公団のような形で道路建設の「裏方」に回り、道路自体の運営は民間企業に委託されることになろう(但し、あまり高速道路毎に細切れに譲渡しては「初乗り運賃」を何度も取られて負担増になりかねないので、実際にはJRと同程度の規模で分割することになろう)。同じ理由から、東京の地下鉄を整備してきた帝都高速度交通営団(赤字は出していない)も、インフラ整備部門は鉄建公団に委譲した上で民営化するのが望ましい(但し、こちらもあまり細切れに譲渡すると「初乗り運賃」を何度も取られて負担増になるので、民営化時は全路線一体としてなされるべきである)。サービスエリアの運営にあたってきた道路公団の関連企業の整理も必須である。だが、例えば石油公団や水資源開発公団、核燃料サイクル開発機構、国際協力事業団のように本質的に国の政策を継続的に実施するために必要なものについては、大赤字を出そうが補助金を食っていようが残すという決断が必要である。

中島 健(なかじま・たけし) 大学生


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