このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

北朝鮮に対する制裁措置を即時に実施せよ 
北朝鮮拉致被害者横田さん・松木さんの遺骨、別人のものと判明(12月8日)

菊地 光

  報道によると、政府は8日、北朝鮮(自称「朝鮮民主主義共和国」)が11月の第3回日朝実務協議の際に拉致被害者の横田めぐみさんの「遺骨」として日本側に引き渡された人骨について、警察庁科学警察研究所及び帝京大学医学部で鑑定した結果、別人のものと判明したと発表した。また9日以降、政府は同じく拉致被害者の松木薫さんについても、DNA鑑定の結果5人の人骨が混ざったものであったことが判明したと発表。北朝鮮側が日本側にニセ物を手交していたことが明らかになった。
 事態を受けて細田博之官房長官は、「極めて遺憾だ。直ちに抗議し、真相究明に全力を挙げたい」と強調。更に食糧支援について「さらなる支援は難しいと考えざるを得ない」と述べて、人道支援の凍結を表明。衆議院「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」(赤城徳彦委員長)や「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」(拉致議連、平沼赳夫会長)は相次いで北朝鮮に対する経済制裁を求める決議を採択した他、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会、横田滋代表)、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会、佐藤勝巳会長)も抗議と経済制裁の即時実施を求める声明を発表した。他方、小泉純一郎首相は8日夜、鑑定結果を受けて「(北朝鮮が)虚偽の資料を提出してきたことは極めて遺憾」としながらも、「日朝平壌宣言の精神に沿って誠意ある対応を求めていく」「対話と圧力の両方を考え、交渉を続けていかなければならない。拉致被害者家族の皆さんのためにもここで交渉を打ち切ってはいけない」と話し、事実上、経済制裁の発動に慎重な姿勢を示しているという。
 改めて、北朝鮮なる国家の犯罪性、金正日政権なる体制の危険性(そして、かかる国家をこれまで擁護してきた一部政党・政治家・学者の破廉恥的な責任)が浮き彫りになった。嘘の遺骨や証言をしてまで横田めぐみさんの存在を隠蔽しようとする北朝鮮側の姿勢は尋常ではなく、もはやかの国の如何なる主張も当然には真実と受け取れない。特に松木薫さんの「遺骨」については、2年前に既に別人だったことが判明している。百歩譲って1回目が事務的ミスだったとしても、2度目のウソはもはや国家的詐欺としか形容し難いものがある。ましてや、小泉首相の2回目の訪朝で「白紙からの再調査」を約束したのは国家元首たる金正日総書記であることからすれば、もはやかの国は交渉相手としてすら認められない。これで、遺骨が何度も火葬に付されていたのも、北朝鮮側が我が国を欺くための偽装工作であったことがはっきりした。北朝鮮なる「国家」(韓国内の反乱団体)の犯罪性については、既に朝鮮戦争当時から国際的に明らかにされてきたことであり、その意味では今回の詐欺行為も驚くに値しないが、にも関わらず政府が、依然として実務者協議や国交正常化交渉を続けるのであれば、その真意を疑わざるを得ない。正常でない国家と国交は正常化できないし、虚偽の証拠を提示する相手に実務的な協議など到底できないではないか。国際約束(日朝平壌宣言)の無視、偽造紙幣・麻薬の国家的製造、それらの外交特権を濫用した外交官による海外販売(ちなみに、トルコ政府は9日、合成大麻を密輸した疑いで拘束していた北朝鮮外交官2人を国外追放処分にしたという)、大量破壊兵器の販売・・・国際法上、国家の要件が領土、国民、政府そして国際法を尊重する意思であるとすれば、北朝鮮はもはや国際法上の国家主体としてすら認めることができない。
 今回の事態を受けて、与野党の間で北朝鮮に対する経済制裁を求める声が高まっている。かかる詐欺行為に対し我が国の怒りをきちょんと明らかにしておくという意味でも、改正外為法、特定船舶入港禁止法等の既存の経済制裁制度のみならず、国交正常化交渉の永久停止、在日北朝鮮資産の接収、北朝鮮人の入国全面拒否も必要であろう。我が国単独の経済制裁では北朝鮮に十分な圧力をかけられないという理由で慎重論を展開する者もあるが、であるならば、なおさら事件を国連安全保障理事会に付託するなり、国際世論の喚起をはかるなりして、国際的な包囲網を形成すべきではないか。また、経済制裁だけでなく政治制裁という議論が出てこないのも理解に苦しむ。政府は、ちょうど10日に閣議決定した中期防衛力整備計画において、盛り込むことが予定されていた長射程の地対地誘導弾を研究・開発するという項目を撤回したが、これを復活させ、更に射程を延長する(当初の案では射程300キロまでとされていた)のも一案ではないか(更には、我が国独自の核兵器開発も考慮する必要がある)。無論、現実には、長射程ミサイルができたからといって直ちに軍事行動をとるという訳にはいかないが、最終的な政治制裁のカードを欠いた経済制裁が如何に空虚なものであるかは、国際連盟時代の世界史に学ぶことができる。

 菊地 光(きくち・ひかる) 本会会長


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