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健論時評 2005年3月


■台湾の大陸離れを加速させる「反国家分裂法」 ←NEW!
 中国・全国人民代表大会、「反国家分裂法」を制定(3月14日)
 報道によると、中国(中華人民共和国)の全国人民代表大会は14日、台湾独立の動きに対する「非平和的方法」の行使を明記した「反国家分裂法案」を賛成2896、反対0、棄権その他5の圧倒的多数で可決した。同法案は、「一つの中国」の原則のもとで台湾との交流を進め、平和的に統一する方針を表明する一方で、独立勢力が台湾を中国から切り離したり、分裂を招きかねない重大な事変が発生したり、平和統一の可能性が完全に失われる場合は、国家主権と領土を守るため「非平和的方法、その他必要な措置をとる」と定めている。
 台湾(中華民国)は、1895年の我が国による領有以来、(途中、1945年の「中華民国」への返還はあったものの)ほぼ110年間にわたって大陸・中国とは別の政治的実体として歴史を歩んでおり、独自の政府、領土、国民を持つ(政治学上の)独立国家であることは論を待たない。ましてや、同国は一党独裁を続ける大陸・中国とは異なり、民主的な憲法を持ち、与野党の政権交代も経験している成熟した民主主義国家である。国民党独裁政権の下で、中国共産党と国民党との「第三次国共合作」を企図した冷戦時代の思考では、もはや台湾「統一」は実現不可能になっているのだ。中国(中華人民共和国)側の思惑がどうであれ、かかる現実から出発して議論を進めなければ、統一はおぼつかない。武力行使を示唆するかの如き法律を制定すれば、結局は主権者である台湾国民の反大陸意識を助長し、かえって平和的「統一」への道は遠のくばかりだ。「反国家分裂法」が国家の分裂を助長するという皮肉な結果になりはしないか。


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