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国旗・国歌法案の可決について
〜法案成立の意義を考える〜

 中島 健

 報道によると、7月22日午後に開かれた衆議院本会議で、「日の丸」を国旗とし、「君が代」を国歌と定める「 国旗及び国歌に関する法律 」案が、賛成403、反対86の圧倒的賛成多数で可決され、ただちに参議院に送付。そしてその後、参議院本会議でも賛成多数で可決され、国旗国歌法案は成立したという。衆議院本会議では、まず民主党が、国旗のみを定める修正案を提案し、反対多数で否決されたあと内閣提出法案が審議され、自由民主党・自由党・公明党改革クラブ等の賛成、日本共産党・社会民主党市民連合等の反対で可決した。民主党は、内閣提出法案については党議拘束を外して自主投票とした結果、賛成に石井 一筆頭副代表、伊藤英成副代表、畑英次郎副代表、羽田 孜幹事長、鳩山由紀夫幹事長代理、仙谷由人筆頭副幹事長、中野寛成政策調査会長、鹿野道彦国会対策委員長、松沢成文同副委員長ら45名、反対に菅 直人代表、横路孝弘総務会長、枝野幸男政策調査筆頭副会長、海江田万里国際交流委員長、上原康助倫理委員ら46名がまわった。
 ところで、今回のこの「国旗・国歌法案」の審議は、単に「日の丸」が国旗であり「君が代」が国歌であるということが法定されたということに留まらない意義があったように思われる。
 例えば、「日の丸・君が代」に対する世論の支持・不支持であるが、今回の投票結果について報道各社は様々な論調で報道を行っているが、全衆議院議員499名(1名欠員)の80.7%が賛成しているというのは、やはり圧倒的多数と見るべきであろう。特に、国旗「日の丸」については、民主党も独自の修正案で賛成票を投じていることから、事実上衆議院議員の89.9%・449名が賛成していることになる。これらの数字からもわかるように、この国旗・国歌を巡る問題は既に決着がついており、卒業式・入学式のたびに反対を唱えている人々が如何に少数派であるのかが今回改めて明瞭に証明されたのではないだろうか。卑しくも「国民主権」と「代議政体」を支持しているものであれば、これらの国会議員の行動の結果を「反民主的」である等とは言えまい。
 また、今回の採決で賛成・反対にわかれた民主党議員は、ほぼそのまま保守系と革新系の色分けをあらわしており、今後の民主党議員に対する評価の基準を提供してくれたという意味でも、この国旗・国歌法案審議は多いに意義深いものとなった。特に、旧民政党系・旧民社党系のほぼ全員が賛成し、旧社会党系がほぼ全員反対したのはわかり易いとして、旧新党さきがけ系の大半が反対しているのが興味深かった。また、参議院本会議での採決では、先の参議院選挙で民主党候補として出馬し、旧所属政党では色分けの出来ない「新顔議員」(広中和歌子副代表、小宮山洋子広報委員長など)がおり、彼らの政治的立場を知るという意味でも、「国旗・国歌法案」は極めて有意義なものであったといえよう。
 その他、この法案の意義としては、教育現場における教師の政治運動の封印、及び「日の丸・君が代」にまつわる発言をした各界著名人の政治信条が明かになったことも重要であろう。例えば、今年8月17日には、ロック歌手の忌野清志郎氏がパンクロック風にアレンジした「君が代」の発売を予定していたことが報道されたが、これも「国旗・国歌法案」にまつわる付随的な、しかし興味深い事件であろう。今回の論議が「君が代」の音楽的是非ではなくその法制化、教育現場における教員の政治的活動の抑止にあったにも関わらず、「法制化の議論が音楽的な観点からなされていなかった。ロックミュージシャンとしてこういうアレンジがあるという提案だ」等と論点の全くズレた為にする主張をしていた忌野氏も哀れであったが、それに対してポリドール側が極めて妥当な判断(「『君が代』をフィーチャーしたCDを出すことで、国論を二分しているような問題に自ら一石を投じるようなことは、政治的・社会的に見解が分かれている重要事項に関して一方の立場に立つかのような印象を与える恐れもあり発売を差し控えるほうが適当と判断した」とのコメントを出している)を下して発売中止を決定したというのは、この問題に関する国民世論一般の良識の一端を示すものであろう(問題は、その良識があくまで一端に過ぎず、大多数の国民は「良識的」というよりも「無関心」であることなのだが)。

中島 健(なかじま・たけし) 大学生


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