このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
編集後記
11月7日付け朝日新聞朝刊4面に、「平和運動家らに危機感 フォーラム解散どうなる護憲」という記事が掲載されていた。これは、社民党系の護憲運動組織である「憲法擁護・平和・人権フォーラム」(旧「憲法擁護国民連合」)が10月に解散し、連合傘下の「フォーラム平和・人権・環境」に移行することを報じたもので、新組織が「護憲」から「論憲」に転じたことから、護憲運動の停滞を嘆いている。「護憲」の大御所が「論憲」に転じるとはこれも時代の趨勢だし、それについて朝日新聞がどのような論調でこれを報じているのか、について今更批判はしない。「護憲とは何を守るのか。人権か、それともイデオロギーか。第1章(天皇)も当然含まれるのであろう?」と聞けば十分であるが、気になるのが、記者2人(社会部・本田雅和氏、佐藤孝之氏)の「憲法学者観」である。記事の文面からするに、どうやら両氏は、「憲法学者とは憲法を擁護すべきもの」と考えているようだが、これほど意味不明な、しかも大きな誤謬はあるまい。記事に登場するある中堅憲法学者は、「以前は学会の9割は護憲派だったが、9条にこだわらない人も随分増えた」と嘆いたというが、全体の9割が「こだわたった」つまり立法論に口を挟み政治的な意見を堂々のべていたというほうが異常事態である。国際政治学の初歩、例えばEdward Herlett Carrの『危機の二十年』を少しでもよめば、憲法第9条というものが完全に浮世離れしていることくらい誰にでも理解できる単純な事実なのであるが、どうやらそうしたちょっとの学際性すら発揮されなかったというのが学会の状況であったのだろう。憲法学者がすべきは、憲法内における問題を明らかにすることであって、現に存在する規範を大典扱いすることではないはずである。
お知らせ
今月号(11月号)は、製作者の多忙及び病気により、掲載が大幅に遅れてしまいました。
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