このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

竹ノ塚事故を総括する文書の紹介

 

和寒  2005年 6月 4日

 

 

 偶然ながら、竹ノ塚事故に関して、事象の本質を実にうまくまとめた文書を入手した。以下に全文を紹介する。ただし、公人とは必ずしもいいきれない個人名は伏せてあるので、あしからず御承知おき願いたい。

 

東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近の鉄道高架化早期実現を求める要請書

 

 竹ノ塚駅周辺地域は、東武伊勢崎線の平面交差により、東西の市街地が完全に分断され、竹ノ塚駅を中心とした一体的な発展が阻害されてきた。

 また、南北にある踏み切りは、時間帯によっては一時間で五十分以上も閉まっている「開かずの踏み切り」と言われ、迂回する車が引き起こす交通渋滞や事故が地域住民の大きな問題であった。

 特に踏み切りは、短時間の開放時、車・自転車・歩行者が一斉に先を急いで通行するため、高齢者を始め障害者や子供は遮断機が下りる前に渡りきれないことが日常的であり、常に重大事故発生の危険があった。

 このような状況にあって、平成十七年三月十五日の夕刻、東武伊勢崎線竹ノ塚駅南側踏切(赤山街道)で四人が死傷すると言う地域住民が恐れていた重大事故が発生した。

 私たち地域住民は、昭和五十五年七月、踏切高架化の請願採択と同時に、東武鉄道の高架化問題に取り組み、平成十三年十二月には五万四千名にも及ぶ署名運動を展開し、関係機関に早期実現を強く働きかけて来た。

 しかし、当事者である東武鉄道は鉄道車庫の位置等の技術面から、行政関係機関は鉄道高架事業の採択基準等を理由に、竹ノ塚駅周辺の高架化問題を先延ばしにして来た。

 東京都が平成十六年度策定した踏切対策基本方針の中では、二十ある検討対象区間の一つに位置づけられたが、具体的な実施時期は示されず、我々は一刻の猶予もできないと考えている。

 このような悲惨な事故を再び繰り返さないためにも、当事者である東武鉄道はもちろん、監督省庁である国土交通省・東京都並びに足立区に対して、鉄道高架化の一日も早い実現を地域住民の総意に基づき強く要請する。

  平成十七年四月二十六日

                           足立区町会・自治会連合会   会長 ○○○○
                           渕江町自治会連合会      会長 □□□□
                                           他 役員一同
                           伊興地区町会自治会連絡協議会 会長 △△△△
                                           他 役員一同

国土交通大臣      北側一雄様
東京都知事       石原慎太郎様
足立区長        鈴木恒年様
東武鉄道株式会社社長  根津嘉澄様

 

 

 

 率直にいって、素晴らしい文章である。短文の要請書という性格上、文学的修辞がない堅い文章でありながら、必要と考えられる内容はすべて記されているといえる。具体的な問題点・解決に向けた取り組みの経緯・解決にあたっての制約条件・地域住民の心情など、これだけ短い文章によく盛りこめたものだ。あまりにも巧妙すぎる文章であり、「その筋の専門家」が関与したのではないかとも想像される。

 社会的事象を扱うという観点からすれば、手本とすべき立派な文章である。主観を徹底的に排除し、客観的記述に徹している点は、同種文章の鑑である。見習う点が多々あり、おおいに参考になると思われるので、敢えて全文を引用した次第である。

 これに対して、鉄道ジャーナル 464号(平成17年 6月)のレイルウェイ・レビューなどは、まさに雲泥の差、比べものにならないほどの駄文である。著者の種村直樹は、日本初の鉄道専門の著述家であり、「事故の本質」を理解している形跡はいちおう認められる。しかし、分析力が低いうえに、最終的には著者の主観に収斂させていることから、客観性の担保がないように読めてしまう。これは、社会的事象を扱うにあたり、ほとんど致命的な欠点である。

 几帳面で堅い要請書の足許にすら及ばない文章しか書けないのであれば、著者の「主観」はいったい誰に届くというのだろうか。同誌 465号(平成17年 7月)同欄はさらに醜悪な文面になっている。著者の主観に頼る著述手法を用いる限り、一部の趣味者に支持されることはあっても、「社会」に広く受容されることはありえないと自覚すべきである。これは「鉄道趣味」という領域全体にいえることであり、病弊の根は深い。

 

 

 

 

※ブラウザの「戻る」ボタンでお戻りください

 

 

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください