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奥吉野における道路整備の「怪」

 

エル・アルコン  2004年 9月22日

 

 

 世界遺産登録で賑わう熊野古道を擁する紀伊半島、その真ん中を占める奈良県奥吉野地方を見ると意外な?事実に気がつきます。

 通常、市町村、特に郡の境界は大河や分水嶺といった自然地形に従う物ですが、この「吉野郡」は吉野川(紀ノ川)水系だけではなく、分水嶺を越え、熊野灘にそそぐ熊野川水系に属する天川、野迫川、大塔、十津川、上北山、下北山の6村を含んでいます。

 このあたりは南北朝時代の歴史を紐解くまでもなく、吉野とそのバックグラウンドとして機能していたエリアであり、熊野川(十津川および北山川)を下っての和歌山県側との結びつきは、同じ水系とはいえ昭和戦後まで自動車交通が無かったということや、瀞峡に代表される渓谷で阻まれて、薄かったということでしょう。

 

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 さて、この6村と吉野川水系との間の交通ですが、上北山、下北山村へ吉野川源流の川上村から伯母峰峠を越えるR169、大塔、十津川へ天辻峠を越えるR168がメインです。このうち熊野古道の目的地である熊野本宮につながる十津川水系の交通はメイン格で、道路整備まではプロペラ船、R168の整備が進むにつれてバスが交通の主役になっています。

 脇街道といえるR169もバス交通が整備されましたが、奈良交通による大淀、上市からの通し運転が川上村の杉の湯乗り換えになり、その後川上村方面からは下北山村、熊野市方面からは上北山村までしか日着出来なくなり、事実上縦断ルートとしての機能を失っています。

 もっとも、R168も年々厳しくなっており、国鉄→JRの撤退で、奈良交通と熊野交通が分担してますが、こちらも通しの特急便が 3往復あるものの、区間便がかなり減っています。

 

 公共交通の整備、観光資源がR168がメインですが、道路整備の状況を見るとこれが逆転します。

 R168は天辻峠の手前、西吉野村まではまだマシですが、峠を越えて大塔村に入ると、村の中心である辻堂に代表される狭隘区間が連続します。片側1車線が確保されている箇所も少なく、これが和歌山県に入っても新宮まで続くわけです。

 ところがR169を見ると一変します。川上村に入り、水を張ったら予想外の地圧が掛かり周囲の住宅に亀裂が入る事態になり、造り直しという大滝ダムから道路は立派になり、伯母谷ループ橋を含む伯母谷道路を経て分水嶺の新伯母峰トンネルに至ります。その後も片側1車線はほとんどの区間で確保されて、県境を越えてR309につなぐ格好で熊野市に至ります。

 

 新宮と熊野市まででは距離自体が違うとはいえ、縦断に要する時間はR168とR169では 2時間は違うわけですが、道路整備がバス路線も廃れた方をメインにして、観光ルートの方が貧相なままというのは如何なものかという感じです。

 まあ、事情としては、新伯母峰トンネル以北では、吉野川のダム整備が最近だったことで代替道路も立派になった(13年前は谷底の今のR168クラスの道だった)ことがあるわけで、ダム開発が早かった十津川沿いのR168では代替道路も低規格だったということでしょう。

 このほか高野山方面からアプローチする野迫川村はさておき、残る天川村はちょっと特殊です。実はここへの公共交通はR168、R169よりも多いのです。というのも、修験道の聖地、今なお女人禁制を守る大峯山を控えており、大峯登山の需要で賑わいます。

 こちらはR309か県道で厳しい山道を越えていましたが、R309の改良がなり、長大トンネル2つで一気に分水嶺を抜けます。分水嶺のトンネル整備としては最後発でしたが、改良の度合いとしては一番良好です。

 

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 それぞれの事情はあるんでしょうが、需要と改良のミスマッチがなぜ起こったのか。

 今後ますます注目と観光客を集めるエリアであり、交通渋滞というより安全対策に属する面が大きく、早期の改良が必要といえます。

 

 

 

 

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