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合理的であったとしても心理的にはどうなのか

 

エル・アルコン  2004年11月10日

 

 

 専門家の方が見たら、事情も知らないくせにと反感を買うであろう話ではあり、それ相応のレベルを要求されるこの場での議論にはそぐわないかもしれません。しかし、今回の中越地震での鉄道の対応ほど、「鉄道の不甲斐なさ」を世間に印象付けたものはありません。

 確かに未だに震度5レベルの余震活動が頻発しており危険を伴うことは分ります。しかし、地震発生時に発生した交通障害を見た時、脱線事故を起こし、橋脚が破損し、トンネル底面が隆起した新幹線に、地滑りに巻き込まれて路盤ごと消えた在来線と、鉄道の被害は確かにひどかったものの、堀之内付近で4車線全部が崩れ落ちた関越道、トンネルが崩落したと伝えられた  R17和南津トンネルなど、道路の損害もまたひどかったのです。

 しかるに、関越道は暫定供用ながら全線で一般車両も通行出来ますし、 R17もその和南津トンネルですら片側交互通行で開通し、不通区間は無くなっています。

 こうした情報とともに、高架線上でいまだ横倒しになって無様な姿を晒している新幹線の映像が世間に与える印象はどうでしょうか。トンネルの現況確認すら出来ず、復旧の長期化は不可避と言うのであれば、関越道のトンネルをチェックし、 R17の和南津トンネルの修理は出来たのになぜ?というのは、普通の人が当たり前に持つ感想です。鉄道の被ったダメージのほうが大きかったのは事実でしょう。しかし、そのダメージの差以上に復旧のスピードの差がついてしまっているのです。

 新幹線の脱線車両にしても、ジャッキアップしようとして震度6の余震で断念、高架線脇から大型クレーンで吊り上げる方法に替えましたが、大きさや重さで梃子摺っているのなら、なぜ現場で解体しないのか。分解してユニック車かなにかで搬出すれば簡単では、と言うのは誰もが考えつく疑問であり、わざわざ無傷の台車を用意して載せかえるという作業手順を新聞などで目にしたとき、不通区間の開通よりも、車両をもう一度使うほうを優先しているのか、というあらぬ疑いすら抱きかねません。

 信越線(柏崎−長岡)の復旧にしてもそう。「日本海縦貫線」という国土の大動脈にもかかわらず、ここまで長引いているのはなぜか。単線分の復旧すら出来ない理由はなぜなのか。この区間にそれほど複雑かつダメージを受けた構造物はないはずで、路盤や盛り土の復旧に関して言えば、関越道の復旧スピードとどうしてここまで差がつくのか。

 

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 これらの「不甲斐ないイメージ」を打破するには、よほどの理由と、分りやすい説明を繰り返し続ける必要がありますが、それが用意出来るだけの事情があるのでしょうか。

 阪神大震災の時は、阪神高速神戸線が倒壊し、一般道も地形制約があり一般への供用が極めて限定せざるを得ない状況ではありましたが、鉄道各社は出来るところから、それが例え「離れ小島」であっても、開通させていきました。

 そして、大阪方面から「神戸市内」に初めて乗り入れた阪神電車、阪神間を最初に直通させたJR、その他の各社も含めて、鉄道の復旧=震災からの復旧としてメディアを通じて広まって行ったことを思い返すと、今回の鉄道の姿には無念さを禁じ得ません。

 もちろん、それ相応の技術的な理由があるのでしょうし、急いでやっても意味が無いこともあることは確かです。だとしても、両陛下や首相の視察のように、それが実際の復旧にはあまり意味が無いことだとしても、心理的な「復旧」マインドを高める効果があるのであり、逆にそれが無いことにより、「鉄道だけ未だ復旧せず」というマイナスのイメージを流し続けることで、鉄道への「信頼感」を喪失させる方向に、メディアを通じた形で全国に与えて行っている現実は否定出来ないのです。

 

 

 

 

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