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「カド番特急」が戒める?愛称の命名法
エル・アルコン 2005年 2月 2日
JR九州の「福北ゆたか線」に「かいおう」という特急列車が1往復走っています。まあ典型的な通勤特急であり、同種の列車は鹿児島線などにもあるわけで、別に存在自体を云々するものではありません。
この列車の「問題」というか「悩み」は、その愛称です。「彗星」とか、かつては「金星」なんて愛称があったから、「海王星」あたりが元ネタかと思いきや、沿線の直方出身の大関魁皇関がその由来です。
欧米と違い、人名由来の愛称自体が皆無だったところに、存命中、いや、「現役」のスポーツ選手の名前ですから、物故者になったらどころか、引退後はどうするのかという基本的な疑問がある愛称です。
特急「かいおう」のデビューは2001年10月のダイヤ改正。ちょうどダイヤ改正を控えた 9月の秋場所に綱取りがかかり、二度目の綱取りと言うこともあって期待が高まっていたことは事実です。その勢いと地元の熱意にほだされた格好での命名だとは思うのですが、あろうことか新設と愛称が決定・発表された後の秋場所に、綱取りどころか初日から黒星を重ねてそのまま休場。改正後の最初の場所となるご当地の九州場所は、新横綱のお披露目どころかカド番で迎えたのです。もしその九州場所で陥落が決まっていたらどうなっていたのかと思いますが、なんとか凌ぎ、その後はカド番あり、綱取りありを繰り返しながらも結局は大関を続けています。
さて、来月 3月はダイヤ改正ですが、改正直後の大阪場所で魁皇関はまたもカド番です。もう年齢も32を回り、綱取りだのカド番だのという以前の問題として、「引退」が視野に入ってくる年齢です。こうなると特急「かいおう」もそろそろ身の振り方を考えないといけないのですが、ここで愛称を変更したら、JR九州が魁皇関を見切ったような格好になるわけで、都合の良い時だけ愛称にしてダメになったらポイではちょっと失礼であり、少なくとも大関陥落か引退まではこのまま耐えるしかなさそうです。
どうせ通勤特急だから陥落したら「ライナー」に格下げと言う冗談も聞こえてきそうですが、こうなるとまさに人名、しかもランキング物という水物を対象にしたことの難しさを実感します。魁皇が所属する友綱部屋は新興の部屋で、横綱になったら襲名するような「伝統の四股名」が無いので、改名リスクはまずなかったのですが、そうでなければ改名リスクも存在します。
まあ魁皇関の場合は実力が至らなかったというだけですから良いんですが、もし魁皇関があの横綱双羽黒のように不祥事を起こして追放、と言うような事態になっていたらどうでしょう。TV局が不祥事を起こしたタレントが映っている番組を急遽差し替えたり、お詫びテロップを流すことはありますが、鉄道会社が愛称名を急遽変えたり、注釈付きで走らせるわけにはいかないです。
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特急列車の愛称と言うと、「富士」「櫻」の昔から、長い年月の使用に耐えるだけの風格すらある名称が選ばれてきました。急行、そして快速列車ともなると、時流に阿ったような和製英語(決して「英語」ではない)も見受けられますが、それでも時間の経過で使えなくなるようなものは無かったはずです。
それが安直とも言うべき「スーパー」の濫用に、「フレッシュ」のような期間限定的なものまで出てきており、いつしか時代遅れになり性能が劣り後進に抜かれるころにはギャグとしか言いようが無い、兆期間の使用に絶対に耐えない愛称が見られます。
そのうち「ネーミングライツ」となってスポンサー名が付くような日が来て、昔日の風格ある愛称が懐かしくなる日が来るのでしょうが、「かいおう」のような愛称が再び付く日が来るのでしょうか。
タレントの売出しを兼ねて付けるような事態が無いとは言い切れませんが、それであっても「かいおう」はその命名経緯とその後を考えると、愛称史に特異な一ページを残すことは確実であり、願わくば「空前絶後」であって欲しいものです。
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