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本当に必要なところに必要な額だけを……

 

エル・アルコン  2005年 2月13日

 

 

 この問題で参考になるのが、鉄道以上に厳しい状況に追いこまれているケースも多いバスでしょうか。バスの場合はミニマムアクセスという意味合いも強いことから、鉄道と違い直接公費投入の対象になっているわけですが、鉄道と違う点は、早い時期から大手の路線であっても地域分社の形で子会社化されていたということです。

 結局その後、企業の評価が連結決算になるに至り、連結子会社であれば分社化しても意味が無い面が強くなり、かつ間接機能を担う部署の重複という弊害もありますが、一方で別会社ということで人事諸施策が独自のものになるため、人件費の抑制などのメリットもあります。そして地域ベースでの収支を示せることから、補助金も受けやすいものと考えます。

 ※分社化による転籍、人件費の抑制については、大手並みの人件費を出す必要が無いという意見がありますが、労働者側から見れば、その賃金(雇用条件)だからこの会社を選んだわけで、安易な切り下げは最終的にはその会社の雇用に対する姿勢がその程度と受け取られるリスクがあります。

 

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 名鉄の600V各線や、それに先だって廃止された各線。また近鉄から三岐に移管された北勢線。さらには東武など大手私鉄が抱える末端ローカル路線の運営において、なぜバスのような「分社化」という方策が出てこないのか。今の制度上不可能と言う可能性はありますが、輸送サービスの維持と言う「錦の御旗」があれば、ルールを変えることは不可能ではないはずです。

 ちなみに大手だから内部補助による維持が可能であるということが事実である反面、大手が示す赤字ローカル線の「コスト」には、大手ならではの手厚い本社費の負担があることもまた事実です。もし大手私鉄が運営する赤字ローカル線に対する運営補助を地元が出すのであれば、「適正な経費率」から乖離した「冗費」の部分をどう判別するかという問題がありますし、無人駅での運賃捕捉をしていないに等しい近鉄のような回収に対する低劣な意識が産んだ「収入減少」分の扱いなどもまた同じです。

 そう考えると、補助金投入の前提として、地域分社など、ミニマムの不足額を把握が可能になっていることが挙げられます。

 

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 余談ですが、公費の投入には、運賃値下げ原資の補助といった利用者支援の方向で行うことと、事業者の損失に対する補助金投入といった事業者支援の方向で行うやり方があります。現状では北神急行の値下げなど一部例外を除けばたいていが後者です。しかし、それには事業者側のモラルハザードを招くケースが往々にしてあります。

 高齢者等の無料パスの一律配布に対する批判は強いですが、無料で乗られてしまうはずの当の事業者側からの廃止論がないのはその代表でしょう。なぜなら、たいていのケースでは無料パスでの利用と見做される収入補填が自治体の福祉予算からあるため、廃止すると収入がかえって減るからです。

 公営交通の場合は同じ自治体内の話ですから福祉予算のマイナスと合わせれば良いはずなんですが、「縦割り」でしかも特別会計となっている交通局の数字に拘り、結果として一般会計でも特別会計でも一緒の納税者の負担が減らないのです。

 コストの問題では、交通ではないですが運輸の世界でも最近、こんなケースがありました。
   http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050212-00000019-maip-soci

 三宅島への帰島費用には上限70万円までの実費が補填される制度があるんですが、村の指定を受けた業者がコンテナ1個で40万円、それ以上は70万円という提示をしています。村民にとっては70万円までの実費が公費補填されるので持ち出しは無いんですが、この「70万円」の提示には、どうせ公費で支払うんだからその上限をもらおうというモラルハザードが見えないといったらウソでしょう。

 今回は利用者支援の補助でしたが、その回収額を利用者補助と同額にすることで事業者がその果実を得る格好だったものが、郵便局が機能を回復して「定価」で業務を開始したためカラクリがばれた格好です。交通の場合は運賃に対して最小限の規制がある状態ですから、利用者補助を事業者が吸い上げることは出来ませんが、事業者補助の場合は事業者のコストを精査するなどして透明性を確保しない限り、欠損額に何が入っているかわからないという懸念が付きまといます。

 口だけ出して何もしない自治体(公的セクター)も困りますが、事業者側にも問題がないとは言えない。そこが、本来利用者をどう救済するかということが主目的のはずの問題をややこしくしています。

 

 

 

 

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