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あってはならない「穴」が開いた代償
エル・アルコン 2005年 3月 4日
土佐くろしお鉄道の宿毛駅で起きた特急列車の過走激突事故は、高架の行き止まり駅という悪条件があるとはいえ、事故発生から2日近くたっても車両の撤去すら出来ないほどの凄まじい事故であり、犠牲者が運転士のみというのが奇跡のような事故です。
この事故でもいくつかの「奇跡」が重なっており、そうしてみると「鉄道事故には奇跡が起こる」というようなオカルトじみたことを信じたくなるような気がしますが、冷静に考えれば、ちょっと歯車がずれていたら大惨事になっていました。
つまり、激突した先頭車両の先頭側がグリーン車室で突端駅にもかかわらず乗客が集中しづらかったこと、列車が進入した番線側だけにエレベーターがあってその構造物が列車を食い止めたこと、こうした「奇跡」が事故の犠牲を最小限に抑えたといえます。
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さて、今回の事故ですが、車両側、運転側のいずれの事情であるかの原因究明は今後の調査に委ねられます。とはいえ、まさかと思うでしょうが、こういう「事故」はヒューマンエラーを中心に実は珍しくもないのです。それがニュースにも(まず)ならないのは、それが中間駅などで発生しているからであり、たまに「XX駅でウッカリ通過」と言うような雑報になるわけです。
ところがこれが終着駅で起きたら洒落になりません。その先にレールがあるから「行き過ぎ」で済むものが済まなくなり、今回のような大事故になります。そうなると、いかなる事態であっても確実に止める手段が必要であり、少なくとも列車のブレーキ系統が全滅しない限りは止まれるようにしてあるのが本来の姿でしょう。
宿毛駅の場合は構内に地上子が設置されてはいましたが、そこに入り得る最高速で来た場合、止められないことが明らかです。さらに手前である程度減速し、構内の地上子を速度超過で通過しても絶対停止が可能にしてなかったわけで、そもそもの保安システムの構築に問題があったといえます。
こうした、というかもっと高度なシステムを採用している鉄道会社はありますが、一方で駅構内進入時に、停車駅の場合、誤通過防止用に出発信号機を赤にするため、そこで絶対停止が可能な減速を強いられ、スピードが出せないという問題もあるわけです。ですから闇雲に安全マージンを取る必要もないことは確かですが、逆にもしそこに穴があったら取り返しが付かない部分への対応は、考え得る最高レベル出の厚巻きな対応をすべきです。
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こうしたシステムの盲点に目を向けた時、山陽線で発生した「ヒヤリ事故」もまた同じ根を持ちます。
踏切に列車が迫っているのに遮断機が作動せず、踏切に進入したクルマとあわや衝突というこのケース、先行する列車との間隔が近接し過ぎて先行列車が踏切を通過する前に後続列車が感知ポイントを通過すると、後続列車の接近を認識できないばかりか、先行する列車が踏切を通過したら遮断機が上がってしまうというものです。
実は踏切の直前にも感知ポイントがあるのですが、あまりにも近すぎるため、注意信号であっても遮断機が降りる前に列車が踏切に至ってしまうというフェイルセーフにもなっていない「バックアップ」機能でした。
このケースの場合は、踏切の接近感知ポイントから通過感知ポイントまでの間隔を、2個以上の列車が同時に走り得る距離に設定していたこと事態が間違いなわけです。さらにバックアップの感知ポイントが意味が無いと言い切れるほど近くに置いてしまっているわけで、これも保安システムの構築に問題があるところ大なのです。
こちらは「ヒヤリ事故」で済みましたが、もし最悪の結果になっていたとしたら、単発の機器故障でなく、構造上の理由で踏切が上がっていても列車が来ることがあるということになれば、踏切の信頼性を根幹から揺るがしかねない事故になるところでした。
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安全対策として、考えられる総ての事象を網羅する対応は不可能であっても、その事象が絶対にあってはならない箇所は確実に存在します。2つの事故はあってはならない箇所に穴があった結果であり、払った、また払うところであった代償は大きいのです。
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