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商号考

 

エル・アルコン  2005年 3月31日

 

 

 2005年 1月11日から、日本交通とみなと観光バスによる高速バス、なんばー三ノ宮−陸の港西淡(南あわじ市)線が開業しました。南あわじ市域からの高速バスはこれまでもありましたが、本四道路での客扱いなど時間が掛かるため、直行便を開設したものです。

 さて本題は淡路島の高速バス論ではなく、その事業者です。三ノ宮を経由してみなと観光と言うと、当然神戸市に本社があり、六甲アイランド関係のバスやくるくるバスを手掛けるみなと観光を思い浮かべますが、実はこちらは南あわじ市(旧西淡町)に本社がある同名の別会社なのです。

 神戸のみなと観光も六甲アイランド−三宮−新神戸駅の路線があるため、同じ名前の別会社が三宮に出入りしているという奇妙な現象が発生したわけです。しかも六甲アイランド線は日本交通の子会社である日交シティバスとの共通運行であり、西淡線の降車バス停は六甲アイランド線の乗車バス停と同一箇所なのです。

 まあ高速バスと路線バスとの違いはあるとはいえ、なんとも紛らわしい話ですし、日本交通に至っては同名の両社と浅からぬ関係を持つため、業務上何か混乱は生じないのか他人事ながら心配です。

 商法では類似商号を禁じているとはいえ、原則として同一市区町村内での話ですから、今回のように神戸市東灘区と南あわじ市(旧三原郡西淡町)で同業者が同じ商号を名乗ることに法的な制約はありません。ただ、商標としての先使用と言うような問題はありますが、これまで共存していたということは取り敢えずは問題にしていなかったのでしょうが、とはいえ利用者にとっては紛らわしい話です。

 

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 そう言う視点で全国を見てみますと、案外と紛らわしい会社が存在するものです。栃木の関東自動車と東京の関東バスもそうですし、岡山高梁の備北バスに広島庄原の備北交通なんかも、エリアや路線は重なりませんが両社とも中国道に高速バスを走らせたりしています。広島蒲刈島(呉市)の瀬戸内産交と愛媛今治の瀬戸内運輸も何気に航路で結ばれた両端に存在します。

 「自動車」「交通」「電鉄」といってもバス路線について「××バス」と言い習わすケースが多いのも混乱の原因ですし、タクシー会社になると同一商号別会社というのはさらに当たり前のように増えます。このあたりタクシー会社はもちろんバス会社も地域性が強く、他エリアで営業というのがあまり無かったことも一因でしょうが、高速バスなど地域を超えた営業形態が一般化するにつれて、思わぬバッティングが生じていることも事実です。

 もっとも、かつては同一エリア内の競合においても紛らわしいケースはあったようで、鉄道でも琴電(高松琴平)、琴参(琴平参宮)、琴急(琴平急行)が狭い讃岐平野にひしめいて佐渡ヶ嶽部屋のような状態でした。

 紛らわしいといえば別のケース、というかこれはやや特殊なんですが、好事家には有名な岡山の宇野自動車。岡山で「宇野」ですから児島半島方面のエリアかと思うとさにあらずで東〜北東方向を地盤としています。これは商号、というか屋号の由来が社長さんの苗字と言うわけで、かつては多かった個人商店レベルの小資本経営の時代ならいざ知らず、というところです。

 

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 趣味的にはこうした事例は楽しいですし、地方で思わぬ会社を見つけるのは旅の楽しみでもあります。しかし、「公共」交通として考えた時、果たして同じ、また類似の商号はどうでしょうか。また、名は体を表さないような商号も然りです。交通行政としても、事業者のコントロールに必要な点は、まさにこういう全体からの調整だと思います。

 商号には企業や個人の思い入れや歴史があり、同じ商号でもウチが元祖、という思いもあるだけに変えるのは難しいことは重々承知していますが、交通全体で考えた時に利用者、そして当の事業者にとってもプラスになるのかどうかを考えたらどうでしょうか。冒頭のみなと観光の例で言えば、「先日みなと観光の高速バスに乗ったらサービスが良かった、だから今度の旅行はみなと観光の観光バスを借りよう」と神戸市のみなと観光に行かれてしまう、なんて話がないとも限りません。

 そして、これは交通に限らず多々ある話ですが、企業の経営破綻、不祥事がある度に、「当社は報道されております××株式会社とは一切関係ありません」という企業広告が出てきますが、こういう「風評被害」のリスクもあるわけで、実際、亀岡の京都交通の会社更生法申請時に洛北の京都バスが勘違いされた話があるやにも聞いており、そのあたりも考えどころです。

 

 

 

 

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