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新しい料金システムと既存システムの整合性

 

エル・アルコン  2005年 4月24日

 

 

 この春、たまにはのんびりと、と家人が青春18で上京したのですが、夕方近く熱海駅頭から電話がありました。いわく、池袋までの通しのグリーン券を買いたいのにホームの券売機では売ってないとのこと。事前に乗り継ぎの概略と、青春18でグリーン車に乗れるようになり、かつ首都圏では乗り継ぎも出来るということを教えており、それに従って熱海駅ホームで買おうとしたときのトラブルでした。

 いうまでもなくJR東日本の首都圏エリアにおける普通列車のグリーン車料金システムが変更になり、事前購入と車内での購入に料金差が付くため、家人にもその旨を告げてホームで買うようにと指示していたんですが、新宿までは買えるが池袋は買えないとなると、車内精算をしたら差額の 250円を徴収されるという懸念を持ったようで、売ってなかったことを言って乗車変更すれば大丈夫と告げました。

 結論から言うと当然大丈夫で、気を利かせて後日その車内補充券を持ち帰ってくれたのを見ると、駅購入の原券の乗車変更となっており、 0円精算でしたが、制度の概略を知っていればいるだけ誤解を招きかねないなんとも罪作りな話です。

 

 これまではとりあえず車内で精算すればよかったものが、事前購入との間で料金格差が生じるようになった以上、出札のほかに他線や異種別の列車からの乗り換えを想定してホームなどラッチ内での発売も必須ですが、そこで表面上購入できない区間があること、それも熱海から前橋というようなレアケースではなく、山手線上のターミナルという十分ありえる区間であることは問題です。

 事前購入制度との整合性という意味では、熱海のほか、宇都宮や高崎のようなグリーン車連結列車の運転区間の外縁に当たる駅での乗り継ぎがあり、例えば宇都宮線上りの湘南新宿ライン直通快速は概ね始発の宇都宮で黒磯からの列車から 1分接続となっていますが、岡本以遠からの乗客にとっては、各駅、もしくは宇都宮行きの車内で購入できるフォローがない限り、事前購入の恩恵を受けられません。

 このように新しい制度を導入しても既存のハード、ソフトが一致していないケースがあると、利用者には混乱の元であり、それが料金格差や利便性にかかわることにつながると利用者の不信感を招くことにもなります。

 首都圏エリアのグリーン車の問題のほかにも、最近各社で導入されているフェアライドシステム、さらにはSFカードやICカードといったカード式乗車券に関してもそれはいえるわけで、JRと私鉄各社で基本的に共通化が図られていない、また、カード対応と非対応区間が存在するにもかかわらず、東京メトロやりんかい線のように相互乗り入れをしていたり、ラッチ内乗り換えが可能になっている場合、また、非対応区間との跨ぎ乗車をする場合、降車駅の改札で面倒な処理を要したり、カードを持っていながら乗車券を用意したり、精算機で精算しなければならないとか、乗り換え駅でいったん改札を入り直さないといけないといった不便を利用者に強いているケースがあります。

 実際、フェアライドシステム対応のため、中間改札を設置したり、それに伴い対面接続だったものをわざわざ改札経由で迂回させられるケースまで発生していますし、甚だしいケースとしては神戸電鉄菊水山駅が先月下旬に休止したとき、利用者数の問題が主因とはいえ、無人駅で改札機非設置と言うフェアライドシステム非対応もまた休止理由に挙げられたくらいです。

 

 特にカード式乗車券の場合、各社別での発行から、関西のスルッとKANSAI、関東のパスネット、名古屋のトランパスというように広域エリアでの共通化が図られるようになると、乗車券というより、交通機関のみで使える一種の擬似通貨のような性格になってきます。

 さらにJRのSUICA・ICOCAに続き関西私鉄のPITAPAのように定期券とSFカードが一体化するケースも出ており、会社境界というものを意識することが少なくなり、ただ、目的地までのコストのみを意識することになりますが、それがあるケースでは使えないとなると、利用者は戸惑うだけです。

 カードの共通化、さらには相互乗り入れの進捗により、各社は自社管内のみならず他社エリアからの広域集客を図っています。その時に共通化されたカードは大きな武器になるのですが、カードで、また、将来的には定期券と一体化されたカードで乗車して目的地に着いたらカード非対応だった、というケースが懸念されます。

 例えばこの春、東急と東武は館林や足利の観光利用をもくろんで中央林間と大田の間に臨時直通電車を運転しますが、この両社、以前は日光鬼怒川への観光をいざなう臨時直通電車を運転するなど、広域利用に積極的です。

 東急のサイトを見ると、ご利用にはパスネットが便利ですとあるように、共通化されたカードの存在もこうした勧誘に一役買っているわけですが、例えば鬼怒川方面に出て、さらに野岩線や会津線方面に乗り進むような需要も出てきたときにどうするのか。AIZUマウントエクスプレスはまさにそうした東武線方面からの入り込み需要を狙ったものですが、カード客への対応はどうなんでしょうか。

 

 関西の場合、近鉄がスルッとKANSAI、Jスルーへの対応から吉野線(橿原神宮前−吉野)を外していたんですが、明日香観光の入り込みが多かったのか、岡寺、明日香、壺阪山の 3駅に限り、精算機での利用と券売機での購入という不完全な形ながら対応を開始しましたが(3dayチケットは呈示で利用可能になった)、「全国統一」がされない限り宿命的に発生するこの境界問題については、利用実態に応じた柔軟な対応が望まれますし、観光対策などで境界を跨ぐ流動を誘発する場合は、当然それに対応する対策をお忘れなく、と言えます。

 また、相互乗り入れやラッチ内乗り換えとフェアライドシステムの整合性も急務であり、これも「全国統一」「エリア統一」が不可能、もしくは未だしであるのであれば、せめて他陣営のカードとの 2枚投入くらいは可能にしてほしいですが、自社の 2枚投入化すら完了していない状況を見ると厳しいですが何とかしてもらいたいものです。

 特にフェアライドシステムは冒頭のグリーン料金同様、「正しい事前購入」を促すシステムでもあるわけで、将来的に精算時には何らかの運賃格差を設定することも視野に入っている可能性がありますし、そこまでやって初めて不正乗車などによる領収漏れへの対応として完成します。

 しかし、そうであれば「買えない区間」の存在は絶対に不可です。フェアライドシステムの場合、カード式乗車券に限らず、普通の乗車券もその対象になっていますが、先に例示した東急〜東武の場合、東武線各駅では会津鉄道までの通し乗車券は購入できますが、JRに属する七日町、会津若松はどうでしょうか。さらには東京メトロや東急からは東武線内への通し乗車券の購入範囲すら限られているはずで、これもまた「新しいシステム」と「連絡乗車券」「営業政策」と言うハード、ソフトの不一致が見て取れます。

 

 そのような雄大なレベルでの問題だけではなく、私自身、上京時に何度か西船橋駅をはさんで東京メトロ東西線、東葉高速線、JR総武線を相互に利用することがありますが、西船橋駅での乗り換え時に、降車駅で精算機に並ぶことを思えばと、いったん改札を出て SUICAからパスネット、パスネットから SUICAに切り替えますが、割り切れない思いを痛感します。

 会社間の境界を感じさせぬようになる共通化を可能にしたカード式乗車券と、導入になる前提になるフェアライドシステムの整合性。冒頭のグリーン料金をめぐる問題も含めて、利用者の立場に立った整合性のある制度に育てていってもらいたいです。

 

 

 

 

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