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「海の駅」とマリンレジャーに触れてみて
エル・アルコン 2005年 5月26日
「海の駅」をご存知でしょうか。2002年に、中国運輸局を総務として瀬戸内海、芸予諸島にある広島県豊町(2005年に呉市に編入)が代表となった「瀬戸内海“海の駅”設置推進会議」により設置された「ゆたか海の駅」を皮切りに、主に瀬戸内海沿岸をベースに展開している設備です。
もっぱらプレジャーボートが気軽に立ち寄れる港として整備したもので、いわば「道の駅」の海上版といえます。これまで瀬戸内海“海の駅”設置推進会議のほか、兵庫県「海の駅」推進会議(神戸運輸監理部)、近畿「海の駅」推進会議(近畿運輸局)により瀬戸内海に21ヶ所設置されたほか、2005年3月に東日本"海の駅"設置推進会議(関東運輸局)が設立され、関東圏に7ヶ所設置され、全国で合計28ヶ所になっています(このあたりは先発の 中国運輸局のサイト が詳しい)。
一般道路における「道の駅」とパラレルになる施設ですが、一方でマリンレジャーに関する認知が未だしであるうえに、プレジャーボートなどを駆って行き来するユーザーはあまり多くないようで、既存のマリーナにビジター用の桟橋を設置して「海の駅」として登録したようなケースが多いようですし、クルマなどでやってくる一般の観光客を取り込む観光施設として機能している面もあるようです。
また、プレジャーボートのオーナー(レンタルもあるが)というのは世間一般で見たらごく限られた層であり、かつレジャーに特化した利用形態と言うこともあり、係留などは原則予約制かつ有料であり、クルマで立ち寄る際も駐車料金が必要であるケースが多いなど、「道の駅」のような公共色が薄いのも特徴です。
なによりも地方運輸局ベースで取り組み、関東地区を除けば西日本ローカルという展開なので知名度も薄く、「海の駅」として登録されているマリーナも「海の駅」というよりもそれぞれのマリーナ名で知られているという感じですし、場所によってはマリーナというよりマリーナを設置したメインの施設のほうが圧倒的に通りが良いケースもあります。(広島県江田島市の「のうみ海の駅」だと「国民宿舎能美海上ロッジ」とか、呉市蒲刈島の「かまがり海の駅」だと「県民の浜」と言うような感じ)
私も当然プレジャーボートを所有してるはずもなく、本来無縁な施設なのですが、たまたま兵庫県の推進会議によって関西で初めて登録された「しんにしのみや海の駅」(西宮浜の新西宮ヨットハーバー)をレジャー施設として訪れる事が多く、「海の駅」という存在をそれなりに認識はしていました。
ヨットマンの堀江謙一氏もここをベースにしており、現在「サントリーマーメイド号」で30年ぶりの単独無寄港世界一周航海中ということで氏のコーナーも開設されています。きれいなマリーナで、テラスでくつろぐとリゾート気分ですが、洗面所に「野菜を洗わないで下さい」といった航海前の利用者に対する注意があるのを見ると、やはりここは「港」だなと感じます。
●関西国際フローティングボートショー2005
その新西宮ヨットハーバー開設10周年を記念し、震災10周年事業として、日本艇舟工業会の主催で去る5月20〜22日の日程で開催されました。
プレジャーボート試乗や五管の「海猿レスキュー隊」によるデモンストレーションなどのイベントがあり、高校生以上 500円と有料のイベントですが面白そうなので家族で行ってきました。
当日はヨットハーバー本館の右手にゲートがあり、各業者のブースが並んでいますが、後で気が付いたのですが、本館側から入ればチケットは要らないんですね。ブース回りをはじめ、レスキュー隊のデモンストレーションやボートショーレディの撮影会は実は無料だったようで、桟橋の展示艇の見物や試乗にのみチケットのチェックがありました。
分かっている人には分かってるんでしょうが、メーカーなどのブースを横目で見てもさっぱりです。このあたりは管轄違いの分野だからこそ感じる話で、鉄道に興味のない人から見た我々の趣味の世界もこんな感じなんでしょう。
ただ、阪神電車などに広告を出して広く入場者を募っている以上、「素人」にも分かりやすい案内がほしいわけで、試乗にしても、主催者側が受付をするのではなく、業者ブースで受け付けるというスタイルは分かりづらいです。しかもヤンマーとトヨタの両社が担当のようで、両社のブースで好みの時間に好みの艇を予約というシステムですが、数多ある業者ブースの中ですから分かりづらいです。
まあ撮影会は妻子の目もあるのでさすがにパスしましたが(爆)、デモンストレーションを見て、プレジャーボートの試乗にも手を出し、マリーナの外に出て芦屋浜沖までというささやかなクルーズでしたが未体験のレジャーを楽しみましたが、日頃お馴染みの浜辺や六甲の山並みも海上から見るのは新鮮な体験です。
こういうイベントを繰り返すことでマリンレジャーに対するイメージ向上や、マリンレジャー人口の拡大につながるのでしょうが、一方でやはり費用が高くそうおいそれとは手を出せないお遊びである事は確かです。
桟橋に係留されている展示艇を見ても、味も素っ気もない4人程度しか乗れないボートが6百万円から1千万円とか、クルーザーになると5千万とか、その日一番大きな艇になると2億3千万という値札が付いているわけで、マイカーを駆って道の駅に立ち寄る、というのとは1桁も2桁も違う世界のようです(苦笑)。
もっとも、味も素っ気もないボートとベンツの上級モデルが釣り合うと考えると、クルマのほうになびきたくなりますが。
●所変われば……
さて、分不相応なブルジョア気分を満喫して家路に就いたのですが、帰宅後パンフレットを読み返して見ると新鮮な発見がありました。
日本艇舟工業会の主催であることは先に書きましたが、国土交通省や地元自治体の後援、さらに各業界団体加盟各社の協力とあるなかに、マリンレジャー関係の雑誌社も名を連ねています。中にはブースを構えている社もあったようですが、そうした雑誌社のサイトを覗いて見ますと、出版事業のほか、イベントの主催、協力も手掛けているようです。
他の世界ではどうなのかと見てみましたが、釣りあたりは国際フィッシングショーに釣り雑誌の会社がブースを出しているのが見られるくらいでしょうか、それにしてもメディアとして紹介するだけでなく、イベントを協力したり主催するようなアクティブな活動を趣味誌が行っていると言うことには目からウロコでした。
翻って鉄道など交通趣味の世界を見た場合、例えば「鉄道の日」のイベントや、各社の車両基地公開というようなイベントに、鉄道趣味誌の会社や編集部が一枚噛んでいるのでしょうか。趣味人口の裾野を広げるという観点なら趣味誌の参加というのは効果的でしょう。ましてや趣味人口の尻すぼみ傾向が顕著な中、そういう傾向に編集部が憂慮しているという事を誌上で公言しているくらいなら、事業者や監督官庁、さらには自治体が手を結んで繰り広げるイベントに趣味の世界も一枚噛むというような才覚があればと思います。
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「海の駅」に、交通論的なネタがあればという思いもあって足を運んだのですが、マリンレジャーの色彩がほとんどとあって、普段は縁のない、そして畑違いのレジャー、趣味の分野を垣間見ることに終始した休日でしたが、普段は気がつかないポジションからいろいろ考える機会だったことは収穫でした。
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