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高速バスとの競争における明暗



投稿者名 エル・アルコン 2005年10月3日






9月30日、JR東日本は 12月10日からのダイヤ改正 を発表しました。
東北新幹線関係の改正がメインですが、在来線の「目玉」は房総特急へのE257系45両の追加投入による183系置き換えです。これにより1972年7月の複々線化以来君臨し続けた183系が姿を消すことになります。

それだけですと華やかなイメージもあるのですが、「わかしお」の増発に続いて「内房線特急『さざなみ』の輸送体系を見直します!」とある項目、朝夕の君津折り返しの便を館山まで延長と言う積極的な内容に続き、現行の「さざなみ7号」「ビューさざなみ9、11、12、14、20号」が臨時列車化するとあります。

この「削減」される3往復は下りは日中時間帯、上りは午前遅くと最終便で、これにより下りの定期「さざなみ」は現行ダイヤで東京9時半の次は17時半、上りは館山9時5分の次は15時11分と17時17分だけとなり、「通勤特急化」が深度化することになります。
これは「わかしお」「しおさい」に比べても極端な偏倚で、「あやめ」ほどではないにしろ、房総特急のリーダー格であった「さざなみ」の衰退には驚きを禁じ得ません。

この原因は言うまでもなく高速道路、高速バスとの競合であり、東京−鹿島神宮線、佐原経由銚子線にペンペン草も生えぬほどしてやられた感のある「あやめ」同様の末路を歩むのでしょうか。
千葉以南の都市としては市原、木更津、君津があるわけで、他の房総特急よりは恵まれた条件下にあるはずなのに、ここまでに至る原因はアクアライン経由のバスで、東京駅や羽田空港からこれらの都市や、天羽地区(佐貫町、上総湊など富津市エリア)を経由して館山まで至る高速バスの隆盛と相似形を描くように「さざなみ」は衰退しています。

特に房総の道路というと他地域に比べても劣悪で、内房線に沿って走るR128は市街地で直角曲がりのカーブや、大型車が離合出来ない小さなトンネルが天羽〜館山にかけて連続しており、道路の信頼感は無に等しかったのですが、館山道が君津ICまで完成し、これと連続する富津館山道路も館山道に属する富津中央IC−富津竹岡ICに続いて富浦ICまで全通しており、残る君津IC−富津中央ICの完成で都心から館山市まで高速道路でつながります。
今は君津IC−富津中央ICがR128経由ですが、アクアラインが高い料金もあって渋滞知らずの高い信頼性があることで相殺されており、館山道の未成区間の完成で都内の渋滞を除けば懸念材料が全く消えると言う、15年ほど前の道路事情を知る身としては信じられないような時代がやってきます。
これが「さざなみ」にとどめを刺したことは確実で、JRバス関東の「房総なのはな号」が11月1日の改正から東京駅−館山駅を2時間15分、10往復で結ぶことと入れ替るように主役の座を降りた感じです。

館山へは主役交替と諦めた感がありますが、木更津、君津へは依然続く高速バスとの競合に対し、前回の改正から日中時間帯に総武線経由の直通快速を毎時1本確保するなど、スクラップアンドビルドとも取れる対応をしています。もっとも快速での対応となると、鹿島線もかつては「エアポート成田」併結の直通快速を出していただけに、いずれ先細りの懸念は払拭出来ません。
しかし、館山などから千葉への需要があるはずで、事実房総各線の対千葉の需要はJRが強く、久留里や亀山など内陸部もターゲットにした鴨川への「カピーナ号」は別として、千葉交通の千葉−銚子線、天羽日東の千葉−金谷線とも短期間で撤退に追いこまれるなど、あの設備とダイヤでどうして、と言うくらいの強みを見せています。

これは千葉市内の渋滞および千葉市内での高速道路アクセスがネックなんですが、それを差し引いても今回「さざなみ」を事実上の通勤特急化に追いこむほど対千葉の総需要が細っていたのか、それとも蘇我乗り換えということもあって特急指向が弱かったのか、気になるところです。

さてこうした房総特急の衰退を見るにつけ、8月開業の「つくばエクスプレス」と高速バスの関係が気になります。
あらかじめ予想されたことではあり、減少は想定の範囲内とはいえ、これまで我が世の春を謳歌してきた高速バスが上りで7割減と言う地滑り的な利用の転換が発生しました。
着席、アコモといった高速バスのメリットを捨てても鉄道を指向すると言う結果が出たわけですが、高速バスも定時性に難があるとはいえ、これまでの蓄積でダイヤ編成は概ね渋滞による遅延を織り込んでおり、その意味で信頼性はそう低くなかったといえるだけに、この激変は興味深いです。

もちろん運賃、フリークェンシーなどあらゆる面で勝っているのが大きいのですが、そうした事情こそが鉄道が指向される要件といって良いでしょう。
そして再び房総特急を見た時、つくばエクスプレスと同様、鉄道もバスも都心直結です。距離が倍くらいになるため所要時間は鉄道もバスも長いですが、君津以北では高速運転が可能で、君津以南も改良の余地があるだけに、どういう列車を設定したら高速バスから利用を取り戻せるのか、つくばエクスプレスの「実績」は決して参考にならないとは言えません。

ましてや君津以北の東京近郊区間での競合についてはまさにつくばエクスプレスと相似形です。かつて70km圏内1時間通勤を目指して設定された京葉線経由の通勤快速のコンセプトが昇華したものがつくばエクスプレスとも言えなくはないわけで、つくばに出来て房総に出来ないとは思えません。
路線の最高速度も同じ130km(総武線区間)、君津以北なら線形も良く、千葉までは複々線と環境としては、つくばエクスプレスに引けを取らないはずです。

このまま座して袋小路のローカル線として死を待つだけになるのか、つくばエクスプレスのように大逆転勝利をおさめるのか。つくばエクスプレスの成功という在来鉄道における久々の明るい話題を鉄道の発展にどうつなげるのかと言う視点で考えると、まだ諦めるには早いでしょう。






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