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イベント時の公共交通シフトの悪い例
エル・アルコン 2005年10月16日
●イベントと交通事情の概略
この週末に篠山市今田で開催された「丹波焼陶器まつり」に行ってきました。
丹波焼と言うと聞きなれない方も多いでしょうが、瀬戸、信楽、備前など日本六大古窯の一つとして数えられる陶器であり、三田市との境界に近い旧多岐郡今田(こんだ)町を舞台に今年で28回目を数えるイベントです。
このイベント、大まかに言うと旧今田町域の2つの会場に分かれており、会館がある「陶の郷」、兵庫県立陶芸美術館のあるエリアと、旧今田町役場である篠山市今田支所のあるエリアとなっており、その間は直線距離でおよそ4kmですが、里山が間にあるため道を行けば6〜7kmはかかる感じです。
そのため最寄のJR宝塚線相野駅から有料シャトルバスを駅に近いほうになる「陶の郷」まで運行し、そこから今田支所エリアとを結ぶ無料巡回バスを運行しています。
この無料巡回バスは道路事情もあり、反時計回りで約12kmの行程を1周する循環ルートをとり、沿線に駐車場を配することでパークアンドライドの役割も担っています。
有料シャトルバスの起点が相野駅というのは中途半端で、新三田や三田まで入れないのかと思うところですが、ちょっと大回りしてR176を通ることや三田市街での渋滞を考えると、少なくとも毎時2本「丹波路快速」が入り、三ノ宮からつつじヶ丘への神姫特急バスも入る相野駅というのも悪くは無いでしょう。
事前のチェックではなかなかよくできてるなと思い、元々「陶の郷」までは行ったことがあり、今回は今田支所エリアが目的だったのですが、パークアンドライドもあるしと軽い気持ちで出かけたのです。
●現地を見て
さて相野駅前を経てクルマで現地に向かいました。普段と比べると通行量はやや多い感じ。「陶の郷」への分岐を過ぎ、巡回バスの循環ルートに入り、巡回バスとは逆の時計回りの方向で今田支所に向かいます。やがてP&Rの駐車場が現れますが、取り敢えずダメもとで会場に近いところに行って見ようと言うことでスルーします。駐車場自体も余裕がありそうです。
ところが次の駐車場で信じられない光景を目撃。駐車場はまだ余裕がありますが、ちょうどやってきた神姫バスの巡回バスはステップまで超満員。ちょうど通り過ぎた巡回バスの停留所に5〜10人ほど残っているところを見ると積み残しでしょう。
これは困ったと思いつつ、R372に入り、今田支所近くに来ると案内員が誘導するのでどうやら入れそうです。やれやれと今田小学校にある駐車場に入れましたが、うっかり手前で止めていたらどうなっていたかと思うと冷や汗ものです。
歩いて10分もかからないと言われた今田支所に向かいますが、R372から入る道路は一方通行規制が敷かれ、左車線は温泉施設利用者と巡回バス、右車線は入庫車となっていますが、入庫車の列が出来、しかもほとんど進みません。これは今田小学校に入って正解でした。
今田支所の会場に入ると信じられない光景が。巡回バスの乗り場があるのですが、そこは長蛇の列。100人以上が並んでいます。まだ10時過ぎ、R372など巡回バスルートはそんなに混んではいなかった印象で、完全に輸送力不足です。
会場であれこれ陶器を見繕っていると、今度は「道路混雑のため、巡回バスが遅れております」というアナウンスが入りました。ちょうど見通しが利く箇所があり見えたR372はさっき通った時と一転して渋滞です。おそらく支所入口を境に逆方向(巡回バスの進行方向)が激しく混んでいるのでしょう。
バス乗り場横の広場の模擬店で昼食を摂りましたが、バス停の行列は伸びることはあってもひかず、神姫バスに混ざってマイクロバスも動員されていますが焼け石に水。やって来るバスも超満員で、ここで大半が下車して再び超満員で「陶の郷」方面に向かってました。
その頃は支所の駐車場も満車で、例の右車線は閉鎖、左車線だけで運用してましたが、あわよくばと言うクルマが左車線に入って駐車場を覗うせいか渋滞してました。
●機能しないP&R
最寄り駅からのシャトルと巡回バス、そしてP&Rとお手本のような対応ですが、これではダメです。
相野駅からのシャトルバスの様子は分かりませんが、巡回バスは乗るまでに相当待たされ、しかもすし詰めです。おまけにP&Rをしようしても駐車場から乗れない、帰りは延々と待たされるのでは話になりません。
結局何がいけないのか。その要因はいくつか考えられます。
1.バスの輸送力不足
明らかにこれはいえます。対応する神姫バスも三田や篠山どころか北条や粟生(子会社の神姫グリーンバス)まで動員していますが、それでも足りません。陶器市という性格上、中高年の参加者が多いとか、購入品が重たい、壊れやすいと言うことを考えると、すし詰めの車内と言うのは非常に問題です。
2.駐車場の位置
P&Rをやる反面、収容力が一番大きい駐車場が今田支所、次いで今田小学校と、今田支所周辺会場に限って言えばP&Rというより直付け対応になっています。
特に今田支所は会場内にあり、巡回バスルートの内側の交通規制区域に位置するため、エリアの外縁で堰き止めるというP&Rの基本になっていません。
用地の問題はありますが、もう少し大胆に離れた位置に収容力のある駐車場を確保できなかったものでしょうか。
3.バスルートの問題
1周約12kmと言う循環ルートは、明らかに長すぎますが、循環コースにこだわればこれが最短だけに仕方がない面があります。
しかし、この巡回バスの性格は、今田支所エリアと「陶の郷」の二大会場を結ぶシャトル便であり、逆周りでの運行、特に一方通行規制区間での逆走を使って往復型の運行に出来なかったのでしょうか。
あと、二大会場間の移動がほとんどで、しかも輸送力不足という状態では、中間の駐車場に止めても足が無く利用価値は全くありません。
駐車場対応のバスを確保できないのでは、P&R対応としては落第点と言えましょう。
●中途半端な施策が与える悪影響
今回の感想として、「バスを使わなくて良かった」と言うのが率直なところです。
実は会場では丹波の産物を使った模擬店が並び、昼前と言うのにビールやお酒も進みたくなるような産物が目白押しでした。当然ドライバーゆえ飲みませんでしたが、そうなると味覚めぐりもちょっと控えめになってしまうわけで(松茸の土瓶蒸しとか、「合いの手」抜きで味わう気にもなりませんよね)、かといって公共交通機関だけで来場と言うのもバス乗り場の惨状を見ているだけに「ちょっとこれでは」となります。
また陶器市では結構買い込みましたが、これを持って(というか、陶器市ではリュック持参で「背負って」が主流です)公共交通機関と言うのも非現実的であり、アルコールは諦めてもせめてP&Rは機能してほしいものです。
どちらかと言うと横紙破りともいえる会場横付けが「正解」で(まあこの場合は駐車場が横付け対応をメインにしていましたが)、P&Rや公共交通機関利用が「馬鹿を見る」と言うような結果になったイベントに参加した人が、次回以降別のイベントでP&Rや公共交通機関を使うでしょうか。
お決まりのように公共交通機関利用を訴えるだけではなく、その中身が本当に機能するのかどうか、その結果次第で次につながるのか、それとも「もうこりごり」となるのか。「こりごり」の対象がそのイベントだけにはとどまらないと言うことを考えると、結果に対する責任は重いのです。
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