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JR東日本のグリーン車における問題



エル・アルコン 2006年4月10日




JR東日本の普通列車のグリーン車は、2004年10月のダイヤ改正で始まった事前料金制などの料金体系の変更と、グリーン車Suicaシステムの採用により従前と大きく体制が変わりました。
この体制が今回、2006年3月のダイヤ改正から強化されており、従来の湘南新宿ライン、東北、高崎線に加え、東海道線、横須賀線、総武線快速でもグリーン車Suicaシステムが導入され、同社における首都圏普通列車のグリーン車のシステム変更は一応の完成を見ました。

一連の変更は、事前購入と車内購入で料金に差を付けることや、グリーン車Suicaシステムによるグリーン券所持の把握によるグリーン券購入促進及び不心得者の逃げ得の防止といった公平性の確保や、ホリデー料金の導入による事実上の値下げなど、利用者にとっても歓迎すべき内容がメインであることは確かです。

しかし、その一方で、グリーン車SuicaシステムというよりもSuica利用促進に偏重したかのような、Suica非所持者の利便性が大きく損なわれる事態が発生しましています。

●磁気グリーン券の問題
まず、グリーン車連結列車停車駅以外での券売機でのグリーン券販売が廃止されたことで、これらの駅から乗車するSuica非所持の乗客がグリーン券を事前に購入できなくなりました。
さらに停車駅においても改札内での券売機ではSuicaグリーン券以外の磁気グリーン券の販売が廃止されており、乗車するまで購入するチャンスがなくなったのです。
停車駅で改札外に出してもらう便宜を図ってくれるのであればいいのですが、基本的に停車駅は東京近郊区間であり、近郊区間相互の乗車券は途中下車が出来ません。またよしんば便宜を図ると言っても、いったん階段などを使い、「エキナカ」でごった返す通路を通り改札を出てきっぷ売り場へと言うのは時間の無駄です。

これではSuica非所持者が停車駅以外から乗車する際は、乗車後に買うしかないわけで、事実上250円の値上げになるわけで、ホリデー料金であっても2004年の改正前より高くつくのです。

こうしたケースはレアケースのように感じるかもしれませんが、駅で配布されているパンフレットを見ますと、山手線や京浜東北・根岸線、南武線、相模線に総武緩行線や房総各線など、普通にあり得る乗車パターンで容易に発生することが判ります。

●Suicaグリーン券の問題
さらにSuicaグリーン券を購入するにしても、販売するのはグリーン車連結列車の停車駅の改札外の券売機か、一部駅の改札内券売機に限定されます。
改札内券売機の設置駅は概ね乗り換え駅など非連結列車からの乗り継ぎは考慮されていますが、レアケースではありますが総武本線物井から乗ったら四街道と都賀には改札内券売機がなく、千葉で乗り換えないといけない、と言うような穴もあります。

また券売機が混んでいたり、乗り換え時間が短くても車内で買ったら割り増しの車内料金となると明言しており、乗り換え駅でSuicaグリーン券を購入する時間を確保しないといけないのでは、「快速電車」として利用する意味が無くなるともいえますし、房総各線や東北、高崎線のように1分接続で非連結区間や非連結列車から乗り継ぐような本来は「利便性の高い」ダイヤが、グリーン車利用においては仇となるわけで、これでは250円をボッタクリと言われても仕方がない話です。

さらに、会社またがりでグリーン車Suicaシステムの範囲外となる函南、三島、沼津の各駅への利用については、あらかじめ磁気グリーン券を購入するように案内していますが、上述のように停車駅以外の各駅では磁気グリーン券は買えません。例えば洋光台から大船経由で沼津に行く時、Suicaを持っていても事前料金で購入できないと言う原始的不能の状態に陥る手段を案内するのは問題です。
実はSuicaグリーン券を熱海まで購入して乗り越せば事前料金による差額精算なので問題ないのですが、乗り越しを案内するのが後ろめたいのか、出来ないケースがあることを案内しているのです。

●相互利用カードの問題
最後に問題としたいのは、相互利用が可能なはずのICOCAでSuicaグリーン券が買えないことです。
これは今後相互利用になる予定のPiTaPaやPASMOでも同じ問題が発生することが予想されます。

乗車券機能だけでなく、電子マネー機能などの付加価値ビジネスの絡みもあり、自社カードに囲い込みたいのは理解できますが、自社の商品購入に制約を設けて誘導するようなやり方は問題です。
特に関西からの旅行者や出張者にとってはSuicaを持つ意味は小さいわけで、ICOCAかPiTaPaかで悩むのがせいぜいです。

在京私鉄各社がSuica以外のカードとの相互利用を行っていないことで、品川の京急改札や、西日暮里や市ヶ谷、馬喰町といった地下鉄乗り換え改札での利用が出来ないのは、在京私鉄とJR西日本の契約関係ということですから、利用者としては甚だ遺憾ではありますがまあ理解できます。
しかし、相互利用が出来るはずのJR東日本で使えないと言うのは解せません。

そしてこれは利便性の問題もさることながら、旅行者、とりわけ出張者と言った財布の紐が緩みがちな利用者の利用意欲を一気に削ぐという営業面での問題もあります。
グリーンに乗るか、とICOCAを挿入したら購入できず、紙のきっぷは買えないし、車内だと250円高い、それじゃ損した気分だしアホラシと混み合う普通車に揺られてはお互い不幸です。


以上のように、Suica利用に偏重した問題に加え、Suica利用でも利便性が高くないケースがある、さらにはエリア外からの利用に全く配慮していないシステムに全面的に変更したのは問題が多すぎます。
これがもしSuica利用なら従来の料金を割り引きます、というスタイルであればまだ不便や手間と割引がトレードオフになるので問題は少なかったのですが、いったんスタンダードを引き下げてからSuicaを強制するようなやり方では、利用者がすんなり納得して利用してくれたのかどうか、気になるところです。





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