このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





深夜のドライブで感じたこと



エル・アルコン  2007年 8月15日





 運輸業界における「運転手」の給与水準の問題について論じてきましたが、先日クルマで帰省した際に経験した事象も、足元の「待遇」が大きく影響していることを疑わせました。



●深夜のドライブで感じたこと

 夕刻に神戸を出て東京に向かったのですが、夜更けにガラガラの伊勢湾岸道から東名に入ったとたん、桁違いの交通量に圧倒されました。帰省ラッシュにはまだ早い8月初めの平日深夜で、さすがに日本の物流の大動脈であることを実感するボリュームですが、それでもまだ「関西勢」が上京するには心持ち早く、中京圏の会社名を掲げたトラックが目立ちます。

 東名に入った途端に足取りが遅くなったのですが、しばらく走っていて気がついたのは、しばらくトラックの集団と並走し、それを抜き去るとしばらくの間は見た目の交通量が減少し、やがて次の集団に追いつく、と言う繰り返しです。つまり、のべつまなく混んでいるわけではないのですが、トラックの集団に巻き込まれる度に「交通集中による減速」を余儀なくされるのです。



●トラックによる「塞栓」

 このトラックによる集団で特徴的なのが、走行車線のみならず追越車線も塞いでいること。確かに追越車線を走るトラックは走行車線を走るトラックよりは速い傾向がありますが、追い越しというレベルではなく並行と言うしかないレベルで「抜きつ抜かれつ」で走り、走行車線に戻るのは数キロ先とか、甚だしいものになると抜いてもしばらく追越車線を走行するケースもあります。こうした「塞栓」が同時多発的に移動しているのが夜の東名ともいえます。



●気になるレベルの低下

 高速自動車国道における法定速度は、大型貨物が80km/h、普通自動車、大型旅客自動車が100km/hです。また、相次ぐ大型貨物による無謀運転による事故を受けて、2003年9月から3年以内に最高速度を90kmに制限するリミッターの装着を義務付ける措置が講じられたこともあり、そもそも大型貨物が追越車線に入ること自体が、後続の普通自動車などの走行の妨げになります。

 もちろん交通量が少ないケースで、手早く追い越すことまでを妨げるものではないですが、上記のように追い越しに数kmをかけるようなケースは、正当な追い越しとは言いがたいです。

 この日気になったのは、追越車線で追い越すつもりで走行中に、不意に追越車線に出てくるトラックが多かったことです。その車線変更もかなり急で、ただでさえ最高速度が遅いクルマなのにそれが追越車線に出てから加速するので、後続がブレーキを踏んだり、エンジンブレーキによる減速を余儀なくされるタイミングです。これは危険な車線変更であり、かつそのあとの「並行」を考えると非常に迷惑な行為です。

 深夜の東名など幹線高速道路は15年位前から何度も走っていますが、平日深夜の東名は久しぶりです。その久しぶりの東名は、昔のように、例え追越車線を走っていても、相当車間が離れている段階で走行車線に戻る(つまり後続を早い段階から認識している)ドライバーは極めて稀になり、逆に昔なら走行車線にとうに戻っているタイミングで追越車線に出てくるドライバーが激増していたのです。

 もちろん昔もそういうドライバーはいたのですが、どちらかというと「一匹狼」系のトラックでした。それが今回驚かされたのは、大手運送会社のトラックで多々見られたということです。また追い越そうとしてなかなか追い越せずに後続が迫った時などは、抜かれるトラックが減速して追い越し中のトラックの走行車線復帰を促すケースもよく見ましたが、今回はまずそういうケースを見なかったことも含めて、昔では考えられない事態であり、ドライバーの質の低下をまざまざと見せ付けられた格好です。



●ドライバーの質の低下の原因は

 大手の「定期便」ですら後続にブレーキを踏ませるような車線変更をしたり、充分な速度差がないのに追い越しをかけたりするという「質の低下」は何が原因でしょうか。

 運転に余裕がない、周囲の状況を見ることが出来ない。明らかにドライバーの質が低下していますが、そういう運転手を大手の定期便が起用しています。もちろん委託などであることは想像に難くはないにしろ、大手の看板を背負ったトラックを運転させる以上、その大手運送会社の評価に直結します。

 大手ですらそうであれば、いわんや中小、「一匹狼」系は言わずもがなでしょう。質の高い運転が出来るだけの余裕があり、技量を研鑽する余裕がある運転手が業界から姿を消してきている。それは全体的に余裕がない状態に「業界」全体を追い込んでしまったことで、「業界」の質の低下を招いたことにほかなりません。

 労働環境の悪化による「過労運転」などが問題になっていますが、そもそもその土台が、基礎的な技量に疑いを抱かせる「質の低下」により揺らいでいるのではないでしょうか。そしてその「質の低下」は、収入に代表される待遇の低下から直結しているのです。





※ブラウザの「戻る」ボタンでお戻りください





このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください