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交通機関のサイン表示〜〜課題と対応
とも 2004年10月 1日
数ヶ月前のこと、新宿駅南口地下で昼飯をとり、ブラブラ買い物をしようと小田急南口改札付近を歩いていたときのこと。片言の英語をしゃべる中国系(おそらく台湾か香港)の若い女性のグループに道を聞かれました。日本語は挨拶程度しか解せないようで、英語も片言。まぁ日本人観光客が韓国や台湾や香港に行った状況と同じようなものです。
彼女たちは新宿駅近くのホテルに宿泊、お台場に行きたいようで、ホテルで「JR新宿駅からりんかい線に乗ればいい」と言われたものの、「はて、りんかい線とはどこぞや?」となった様子。片言の英語と、漢字の筆談、ガイドブックにある「日本語で聞いてみよう!」的なコーナーを見せながら聞いてきました。
確かに日本人でもこう説明されれば迷う状況は明らかで、新宿駅には「りんかい線」は小さく表示してあるものの基本的には「埼京線」で探す必要があり、「新木場方面」と言われても、新木場の途上に東京テレポートがあり、その東京テレポート=お台場という理解は、日本人でもよほど電車に乗り慣れていないと判らないと言えます。
説明として「1番線から出る銀と緑色の「新木場」行きの電車に乗って「東京テレポート」で降りればいいよ」ということを話し(私の英語力で理解できたか不安だが)、ついでに券売機でキップの買い方を教えたのですが、ここでもまた一騒動。券売機の英語の説明が判らない。確かに連絡会社線を押して……というのは日本人でも悩むところで、それも私鉄とJRがあって……という理解が出来なければ絶対解らないのですから無理もありません。見る限り、英語の説明書きは理解できると思うのですが、さすがに別会社線という概念は難しく、「りんかい線はJRではない。電車は直通するが大崎駅まではJR、大崎から先はりんかい線になる」という説明をして納得しないながらもきっぷを無事購入。結局、改札に入った後、JR構内にある外国人案内所でパンフレットを入手して電車に乗って行かれました。
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このような経験は多かれ少なかれされている方も多いかと思います。海外に行ったことがある方なら逆のケースもありましょう。私も以前ソウルで地下鉄に乗るときにキップの買い方が判らず、日本語をしゃべれるお年寄りの方に教えて頂いたことがあります(ついでに窓口での買い方も教わった)。
海外旅行が一般化した今、特に日本国内においては海外からの集客に力を入れており、今後も海外からの観光客が増加するでしょう。その多くは日本語を解することはできず、「海外に行くのなら相手国の言語ぐらいマスターしろ!」といっても、日本人ですら理解が難しい東京や大阪、名古屋などの鉄道・交通網を理解できるなどそうそう出来る話ではなく、そうしたとき果たしてこのままの案内体系で良いのか。その疑問がおきます。
駅ナンバリングやカラーリングによるサイン表示、ピクトグラムの活用、あるいは多言語表示の積極導入、多言語による案内チラシ等の設置など改善は幅広く進んでいますが、ソフトの対応だけではなかなか困難で、そもそもソフトで対応しようにも外国人というだけで腰が引ける方も現実いらっしゃるだけになかなか解決には結びつきません。
そこで現状のサイン関係の私なりに感じる問題とその解決案を考えてみましょう。
1.サイン類は多言語対応ではなく記号化を
日本は世界的に見ても母国語以外の言語をサイン類に多く取り入れている国です。たとえば、フランス語圏に行くとフランス語だらけですし、タイやマレーシアならタイ語、マレー語ばかり。中国でも中国語のみ、韓国でも韓国語のみというのが現実です。一部上海やソウル、バンコクなど観光客の多い都市やリゾート地では英語あるいは日本語、中国語など他国語との組み合わせが一般的にされていますが、日本ほど隅々にまで英語・ローマ字の案内がされている国は実は余りありません。さらに、2002年のサッカーワールドカップに併せて韓国語(ハングル)、中国語の併記が増加しており日本は文字による案内では多言語対応が進んでいると言えます。
これはこれで良いのですが、英語・韓国語・中国語以外を母国語とする方の場合、英語が理解できればいいですが、理解できなければチンプンカンプン。そこで必要とされるのが「記号化」です。
いわゆる「ピクトグラム」で、それにより施設などを案内するというものです。また、地下鉄などによくある「番号による出口案内」や東京の駅ナンバリング、路線カラーなども記号化といえましょう。
多言語化も良いのですが、まず記号化が先決ではないでしょうか。トイレマークがあれば「公共厩所」と書かなくともトイレと言うことは世界中だれでもわかるのですから。
2.券売機のユニバーサル化を
最近の券売機はJR民鉄問わず非常に使いやすく、外国人にも操作そのものは理解しやすいものです。しかし、多くの外国人観光客にとって日本の鉄道網、特に東京の鉄道網ほど理解しにくい存在はないでしょう。
そもそも「地下鉄」だけで2社があり、しかもどう見ても地下鉄でありながらJRも東急もりんかい線もある。さらにこれらの運賃はバラバラで共通乗車制度はあるのか無いのか理解しにくい。この使いにくさは世界的に見ても珍しいほどとも言えます。
しかも直通運転や連絡乗車券に至ってはそのシステムが日本人ですらそうそう簡単に理解できないのですから、外国人観光客には到底不可能ともいえましょう。
であれば、券売機をたとえばアルファベット順駅名検索に対応するとか、ルートナビ機能を持たせるといった多機能・ユニバーサル化を期待したいところです(こういう配慮は日本人にもうれしい)。
券売機は世界的にどの国でも使いにくいものです。でも、日本は使いやすい券売機だけど運営会社と路線網が難解なわけですから、それをフォローするシステムを考えてはどうでしょうか。
また、フリー乗車券、デイパスの販売、共通乗車制度の拡充などもよいでしょう。既に国土交通省が方針で打ち出し、また仙台での社会実験も行われていますが、事業者に関わらず、すべての都市内交通に乗り降りできるパスの存在は観光客には心強い物です。
また、IC乗車券の共通化も外国人にはうれしい配慮でしょう。香港のオクトパスカードは香港内の交通機関ほとんどで利用可能であり、日本人観光客も多く利用しています。オクトパスにはツーリストカードがあり、デイパスとの組み合わせにより利用しやすくなっています。このようなチケットをICカード共通化において導入できると大きいでしょう。新規参入の企業体にも積極的に参加してもらうことも必要ですね。
3.駅ナンバリングの徹底と統一サインの検討
東京の駅ナンバリングは利用しやすさを格段に向上しました。日本人でも地理に不案内な方にはわかりやすいものと好評であり、導入当初に見られた批判は何処へやら、他都市への広がりすらも検討されていると言われるほどです。
しかし、これにもまだ問題があります。基本的には駅の案内だけであるため、駅はわかるが電車は判りません。たとえば、白金台で電車を待っていて南北線か三田線かは来れば判りますが、電車によっては行先の地名が地図にないということが起きえます。さらに路線と駅案内のリンクはされているのに路線側で活用していないため、説明では「G線」ではなく「銀座線」という説明になり、せっかくの路線名が無駄になります。また、種別も判らないのです。
そこで、各電車に「カラーリング+路線頭文字」のマークを付けてはどうでしょう。ニューヨークの地下鉄などでは行われていますが、これがあれば利用者は一目で理解できるのです。
日本には色で電車を分けるという世界に誇るデザインサインの先駆例があります。これを充分に生かし切れていないのが現状です。これを考えるのも今後必要でしょう。種別についてはニューヨークなどにある番号区分、もしくは記号形状の変化で表すこともできますね。
また、駅ナンバリングは地下鉄だけですが、これを民鉄、JRにも広げたいところです。直通電車はそのまま引き続きで番号をつければ利用者は理解しやすいですし、3桁にして番号と組み合わせることも出来ます(ソウルは韓国国鉄線内も地下鉄からの通し番号)。たとえば民鉄は▲、JRは■にして番号や路線頭文字をつけ、あと駅ナンバリングを行えば、複雑な何社かにまたがる乗り継ぎでも理解しやすくなります。
特に、昨今の台湾や韓国からの観光客の行動多様性を考えると、東京ならば二子玉川や自由が丘、吉祥寺、川越などこれまでの「東京観光」の定番エリアから外れたエリアにも観光客が来訪する可能性が十分にあります。そのフォローを考えても良いでしょう。
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とここまでが私ながらの提案です。東京中心の話ではありますが、この問題は全国的に今後出てくる問題といえます。
日本として観光客を受け入れるべきではないというそもそもの考え方もあります。特にアジア系(韓国・中国人)は絶対に入れたくないという考え方も実際問題として根強いです。
しかし、外国から多くの観光客が来るのはその国・都市に魅力があるから。その魅力を殺いでまで鎖国的に国内に向くことが国内産業の発展などを考えると良いとは言えません。ましてや少子高齢化で国内の需要がしぼむ。さらに日本人の海外旅行の一般化もより進むことでしょう。であれば外国人観光客の積極的な受け入れも一案です。
外国人観光客が増えれば人の往来が活発になりかえって外国人犯罪が減少するという考え方もできます。彼らが日本に多く来ることで日本のファンになる可能性は十分にある。「哈日族」が典型でしょう。まさに「ビジットジャパン」もこういった考え方が根底にあるのでしょう。
外国人観光客にも便利な都市は日本人にも便利な都市。その認識を持って考えてはいかがでしょうか。
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