このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





心くすぐるCMから考える「原点」



とも  2005年 6月16日





 主に深夜に行われる自動車レースF1の中継をご覧になる方ならばご存知でしょうが、ホンダがちょっとおもしろいCMを見せています。

 ホンダがエンジンを供給している日本人ドライバー佐藤琢磨が在籍するF1チーム「BARホンダ」をフューチャーしたCMで、父親に連れられた少年がLRT(ノンステップのLRTが日本のTVCMに出てくる唯一のものかもしれません。)に乗ってF1GPの会場に向かい、F1を観戦して音や速さに驚くというもの。ハイロウズの「♪シャララーラ シャラララーラ 〜」という曲が印象深い「Do You Have a Honda?」シリーズのCMで、過去には二足歩行ロボット「ASIMO」がリスボンのケーブルに乗り損なうCMや、ホンダがF1に参戦した当時の車両をサーキットで走らせるなどがあったシリーズです。

 ホンダのサイトに記載がないので詳細は判りませんが、CMはおそらくオーストラリア・メルボルンで行われるオーストラリアGPが舞台。出てくるLRTはメルボルンのトラムで、F1開催時のみ運転されるシティからF1会場に向かう無料シャトル(GPシャトル)と思われます。そのトラムに乗り込んだ少年が、旗をもったり顔にペインティングをしたりしているF1観戦客で満員の電車内でワクワクドキドキ。ふと外を見ると併走するバイクや車からトラムにBARの旗などを見せる人々。そして会場に着いた少年を待っているのは、エンジンの爆音と高速のフォーミュラカー。音に驚き耳を押さえ……で終わります。

 子供の頃、スーパーカーブームに見事踊らされて、晴海でランボルギーニー・カウンタックやフェラーリーを見て喜び、鈴鹿でまだF1が開催されていない1976年・77年の2年間だけスポット的に富士スピードウェイで行われたF1日本GPを見に行った記憶が当時幼稚園児でありながら鮮明に覚えている私としては、実に心くすぐるCMです。

 1977年、F1の有り難みも判らず、当時車会社に勤めていた親父に連れられて宝物の「スーパーカー消しゴム」とトミカのトヨタ2000GTを大事に抱え、絵本や図鑑でしか見たことがなかった東名ハイウェイバスに乗って見慣れない高速道路の様子にキョロキョロしながら駿河小山のバス停で降り、車で富士スピードウェイへ。そして走り回るF1マシンの音の大きさと速さに驚き、また形のかっこよさに憧れました……。そして、帰りは御殿場からロマンスカー「あさぎり」。当時、私のお気に入りのプラレールは「小田急ロマンスカー」でしたからうれしくてはしゃいでいた。こんな幼少の記憶とシンクロしてしまいます。

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 子供の頃のそんな記憶を呼び起こしてくれるこのCM。わたしのようなジャスト体験だけではなく、スーパーカーを見に行ってカウンタックの音に驚いたなんて方々にも懐かしさというかなにか印象深いものがあるでしょう。こういう子供の頃の体験が原体験となり、今の車好きにつながっている部分があり、このCMはある意味で「原点」を考えさせてくれました。

 このCMに出てくる少年はこれでBARのファンになる……そんなストーリーが考えられますが、まさにその通りでしょう。子供の頃に感じた何か。それがファンや関心をもつきっかけであったりする。一度、交通に関心をもった原点とは何か、それを考えてみるのも楽しいかも知れませんね。

 そこから、今の公共交通への関心の低さがなぜ起きるのか、鉄道趣味や航空趣味「離れ」現象が起きるのか。それが見えてくるかのも知れません。





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