このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
潜在能力は顕在化させてこそ意味がある
とも 2006.8.31
北海道十勝地方で今年で3回目となる世界ラリー選手権(WRC)ラリージャパンが2006年9月1日〜3日まで開催された。
帯広市を中心とした地域で開催され、主に帯広市周辺と足寄、陸別、サホロにステージが設けられている。
三菱(ランサー・エボリューション)やスバル(インプレッサWRX STI)が参戦していることや、またヨーロッパではF1以上に人気のあるモータースポーツであることから日本国内でも車好きの方々を中心に関心も高く、さらに今年は市販車に近い車両で争うラリーであるPCWRCにおいて昨年日本人初のワールドチャンピオン(4輪では全ジャンルにおいて初のワールドチャンピオンである)になった新井敏弘がWRカーを操るなど日本人ドライバーが日本のメーカー(スバル)のワークスで表彰台を狙えるという日本自動車界初の快挙の可能性もあるなど必然的に注目は集まる。
観客総数は述べ20万人以上。3日間であるから1日6〜7万人の観客が集まる。帯広地区の人口を考えれば大イベントである。
この開催には自然環境云々ということで反対運動もあるが、一方でその経済効果は計り知れず様々な意見があることは確かだ。しかし、ここではそれはひとまず置いておこう。
さて、このWRCだが前述の通り会場は帯広を拠点としながらも周辺地域で開催される。その範囲は広くおよそ80km圏に広がっている。
ラリー会場案内図
http://planning-for.sakura.ne.jp/wrc/routemap0617.pdf
当然ながらこのようなスポーツイベントでは観客輸送が大会としての成否の一つになる。
WRCの場合、ラリーカーは帯広市南部の北愛国にあるサービスパーク(いわば競技車両の基地)から一般道路を法規制を守って走行し、会場となる「SS(スペシャルステージ)」に向かい、そこで競技が行われる。
もちろん、いくらタイムトライアルの対象外とはいえ観客で渋滞して競技車両の会場着が遅れては競技自体が成立せず、そういう点からも観客輸送を含む交通対策は重要なポイントとなる。
ところが、ネット上で検索をして昨年、一昨年の観戦記などを見ると、大会側の綿密な計画は良いものの観客輸送に若干の問題があったことがわかる。
大会側の計画は非常に明確であり優れている。パークアンドライドやバス輸送を的確に設定し、今年も手厚いことは見て取れる。さらに北海道の玄関である新千歳どころか羽田や関西、福岡などからのアクセスにもその配慮は及んでおり、さすが諸外国からの観戦も多いモータースポーツらしいアクセス計画を出している。
鉄道側も「とかち」の増結や早朝から始まる競技の特殊性もあり「まりも」の増結などもあったようだ。
ではなにが問題なのか。
それは2006年春に廃止された「ふるさと銀河線」である。
会場には前述の通り陸別や足寄が含まれている。交通規制があり、道路混雑が見込まれることから多くの観戦者が鉄道で会場入りしている事実は観戦記にいくつも記されている。大会側では「ふるさと銀河線」利用を特に誘導していたわけではないが、陸別・足寄両駅を拠点としていたし駅からのシャトルバスも運行していた。無論、アクセスとして公式ガイドにも明記されていた。
ところが、ホームページやブログには「二度と使うか」「満員!」「大会会場最寄駅までの列車が1両なんて・・・」「客の多さに運転士が驚いていた」といった表現が出てくる。
無論、話は単純ではない。第一回開催だった2004年にはちほく高原鉄道がふるさと銀河線利用の観戦ツアーを打ち出し好評だった。ところが第二回開催の2005年には「団体列車の予約がすでにある」として企画をしていない。
参考:
http://www15.plala.or.jp/chihoku/ikenyoubou/kaitouH17.10.html
ちほく高原鉄道の保有車両からすれば車両不足ということだろう。
また、臨時列車もあるにはあったし定期列車は増結などの措置も皆無ではない。ただ、明らかに観客利用はそれを上回っている。結局、観客の一部は満員の単行DCに2時間揺られてなんていうことを味あわなくてはならなかった。
さて、鉄道の最大の武器はなんだろうか。それは輸送力だ。単位輸送力ではバスや航空機など足元にも及ばないレベルである。たとえ、それが瀕死のローカル線であるふるさと銀河線でも、陸別までJR北海道車を使い6連ででも運転できれば数百人の輸送が着席で可能だ。バス十台分も夢ではない。立ち席を陸別−池田で認めればその輸送力はバスなど目ではないものだ。
こういったイベント時にこそローカル線とはいえ鉄道の潜在能力を活かすことができるのである。
しかし、ふるさと銀河線はその潜在能力を埋めたままだった。
最後の最後、廃止半年前であってもその潜在能力を見せることが無かった。
観客は当然ながら「車好き」のマニアだ。ラリーは日本でマイナーであるし、スバリストなどのいわゆる「エンスー」が多く集まるイベントである。ただ、その多くは大規模イベントにおいて鉄道をファーストチョイスとしていた。「大規模イベントなら鉄道が便利」と思っていたのだ。鉄道マニアが言うところの「車ヲタ」の人たちなのに。
それに鉄道側が的確に答えられなかったことの意味は大きい。潜在能力は顕在化させなきゃ意味は無いのだ。
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