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搭乗率という「数字の魔法」と機材統一という「流行りもの」
とも 2007年 1月29日
ANA・JALの2社が国内航空路線の見直しを発表しました。この時期の恒例行事ですが、例年になく今年は見直しの規模が大きく、地方間路線を中心に廃止や減便がされています。要因としてはJALに限らず国際線競争の激化や原油高騰による経営環境の悪化があり、また羽田の拡張・再国際化に向けた経営資源の集中投入といったことによるものです。これらの廃止路線は「搭乗率」が低い「不採算路線」であることを理由としています。
しかし、ここで疑問が沸き起こります。「搭乗率」とは何なのか。「搭乗率」とは提供座席数に対する利用座席の割合です。式で示せば
搭乗率(%)=利用者数/提供座席数
となります。300人乗りの機材を使う路線で平均225人の利用があれば平均搭乗率は75%ということになります。現実には、300人乗り機材でも300席すべてが提供されるとは限らず、石垣空港のようなスペック的に厳しい空港では座席数制限が実施されますので話は単純ではないですが、おおむね提供座席≒機材定員と考えてよいでしょう。ここで考え方を変えてみると面白いことに気がつきます。たとえば200人乗り機材で40%の搭乗率がある路線では80人が平均利用者数です。しかし、この路線に100人乗り機材を入れれば搭乗率は80%になります。つまり、分母である「機材」によってどうとでもなるともいえるのです。
もちろん、搭乗率があがっても運行コストや運賃収入との関係で採算性は決まります。しかし、航空機の場合は一般的に機材の大きさと運行コストには一定の関係性があります。小さければコストは安く、大きければコストは高くなりますから、搭乗率が目安になりますから、分母である機材の影響は大きいのです。
また、同系統機材を使う場合には整備・部品などの共通化が可能であるのでトータルコストが安くなります。たとえばB757とB767、A320・321・318・319、A330と340、B737NGシリーズなどです。B737NGで考えるとB737-700(120名)〜B737-900(200名)、A320だとA318(100名)〜A321(200名)と幅がありますから、ここにもコストアップを抑えた工夫の余地がありますが、「機材統一」がコスト低減の「王道」となっている昨今、各社1バージョンの導入が一般的であり、結果的に単一機材に統一化されてしまうことになります。その結果、120人乗りであれば採算が取れるのに160人乗り就航なので採算が取れないというケースが出てきます。
「搭乗率」という数字の魔法の恐ろしさです。
国内線の場合、羽田で稼ぎ地方を養うという構図が出来上がっており、機材も羽田線での使用を想定したものとなっています。そのためか比較的大型の機材が国内では一般的であり、搭乗率と搭乗数データで見比べると諸外国でよく見かける200人乗りクラスが向いていそうな関西関係路線や100人乗りクラスが向いている地方間路線にも大型機や150人乗りクラスが投入されます。儲かる羽田を基準とするためです。その結果「見た目の搭乗率」に問題が出ているのではないかとの思いはぬぐえません。
2009年の羽田再拡張に向けて小型機シフトが進むという報道が見られますが、一方で機材統一の方向性として両社とも150人クラスのB737NGの下は約半分の70人乗りのQ400という機材構成になると考えられます。100人乗りならちょうどバランスが取れる地方路線の隙間を埋められる機材が無い以上、この「数字の魔法」の効力は続くのかもしれません。
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