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空港アクセスバスの実態



とも  2007年 6月12日





1.羽田空港へのバス敬遠の謎

 羽田空港へのバス路線網が近年充実し、如何にも「全盛期」を迎えているように見えますが、実は今は変革期と考えることもできます。京急空港線の全通により、これまでバスが独占的なスタンスでいられた横浜、川崎、また23区北東部、千葉東部などがことごとく鉄道にシフトしました。その影響は都心でも見られ、東京駅なども苦戦している路線です。

 その中でいわば苦肉の策的に開拓した路線が「葛西・小岩線」であり「たまプラーザ線」ですね。実際、試行錯誤的に各地に路線を延ばしてはいますが撤退した路線も少なくはありません。

 生き残った路線というのは高速道路の整備もあって渋滞の影響を受けにくくなった路線が中心であり、コアな利用層をがっちりつかむことで成長を遂げた。この成功を受けて、鉄道の利便性が低く、渋滞の影響が少ない路線、あるいは渋滞の影響が少ない時間帯を狙ったバス路線を形成していった。その一つが北千住線ということです。

 つまり、言い方を変えると典型的な「隙間サービス」と言うこともできるのです。羽田に関しては(成田に関してもですが)、ロングシート主体であるが故にバスが指向されるという考え方もあったりします。ただ、現実にはJRのエアポート成田でも、また羽田の国際線利用者を見ても、クロスよりロングを好む傾向があります。これは「荷物」の関係です。実はバス利用層にも同じコトが言えます。荷物が多いとバスを好む。ビジネスユースは鉄道、荷物が多いとバスという行動パターンが結構見られます。

 こういったことが顕著に表れているのは吉祥寺線です。羽田空港乗り入れバス路線の成功例として「ここでも成功してしまう」と言える内容の路線ですが、実は4社競願というここ数年では見られない熾烈な免許獲得競争が行われた路線でもあります。しかし、空港行きは早朝の1便を除けばほぼガラガラ。5人以上乗ることが珍しいくらいです。空港発も夕方まではボチボチといったところです。ところが、夕方以降の便は常に満席。つまり、このわずかな隙間的な時間帯こそが「稼ぎ時」であり、ここで全ての儲けを出しているということになります。バス会社からすれば一般に空港バスは1便15人弱で採算が取れると言われていますから10便出して4便満席、残りは5人前後でも1便あたり15人を超えるので十分な儲けが出ることになります。

 すなわち、羽田空港へのアクセス・イグレス交通では実はバスは本来敬遠されている存在であり、ただベースの利用者が多いことと、微妙なところでガッチリ嵌るコアな利用層の存在が支えていると言えます。それが数パーセントという分担率の証左であるといえます。



2.実は集中している羽田の到着便

 ご指摘の中にある空港発の同時間帯発車ですが、確かに同一方向であれば上手く分散して擬似的な等間隔ネットを組むのが理想です。しかし、羽田は比較的到着がランダムにありますが、航空ダイヤをじっくり見ると、各時間帯に満遍なく飛んでいるのは伊丹・神戸・札幌・福岡などに限られ、そのほかは那覇などが典型ですが午前中や夕方にすっぽりと「空き」が出る時間帯があります。30分間隔で出発時間帯毎に供給座席数を出すと、数千人単位でムラがありますのでやはりニーズは集中してきます。無論地方空港ほどではないですが。

 地方からの来京利用者が多いであろうつくばセンター線やYCAT線、TDL線、成田空港線など特殊要因のある路線を除けば、首都圏在住者をターゲットにしたニッチニーズの路線という性格を考えると、どうしても特定時間帯に集中してしまうのは仕方がありません。前述の荷物の関係もありますが、観光が非常に強い沖縄や北海道線との兼ね合いは無視できません。

 また、空港バスは「乗換がない」ことが利便性の最たるものですので、下手に柏や越谷と北千住を等間隔にしても、実は利用者は動かないと言うこともあり得ます。北千住線はターミナル直結路線ですが、柏・越谷はこまめに客を拾いますので、ここで調整する必要性が低いのかも知れません。

 あと、もう一つの重要な要素として、空港バス停の逼迫があります。2PTB供用時に既に言われていたことなのですが、羽田空港は63系統あるリムジンバスを12のバス停で処理しています。1バス停5系統です。停車時間は1バス停に10分弱ですから処理は可能ですが、同時間帯に集中しやすい中で調整ができにくいと言う問題があります。



3.北千住線開設のきっかけを考えると

 北千住線ですが、一つは南千住やTX沿線を含めた周辺の開発進展もあって需要が高まったこと、さらに中央環状王子線の開通で都心環状東側の混雑が緩和されたことで定時運行の可能性が高まったことなどが要因と考えられます。確かに遅きに……という感はありますが、まだまだ首都圏で強い需要がありそうなのに羽田直行バスがないエリアもあります。

 たとえばアクセスバスが1本も運行がない世田谷区・杉並区(乗り合いタクシーはある)、川崎市北部(小杉・溝の口・登戸など)などです。これらは近くに路線がある(世田谷・杉並は調布・吉祥寺・中野・渋谷・新宿など、川崎北部はたまプラーザ・新百合ヶ丘など)とはいえ不便であることには変わりありません。しかもかならず2回以上の乗換が必要なエリアでもあります。

 しかし、これらから空港バスを運行するとした場合には道路網の脆弱性が問題であり、吉祥寺ほどの確実な需要も想定しにくい中では各社が運行できないということもあります。その辺が一つのハードルになっているとも考えられなくもありません。



4.地方空港との差

 羽田と地方には決定的な差があります。それは運行事業者です。地方空港の場合、中長距離路線は別として営業エリアや発着場所の問題が少なく、1社ないしは複数社が単独運行することができます。

 ところが羽田の場合、空港側の京急・東空交は自社独自エリア以外には路線を出してもバス停がおけませんし、営業力がありません。なぜなら京急は23区南部と神奈川の自社沿線しか営業エリアではないし、東空交は空港だけです。そのため、各地に路線を延ばす場合には各地の事業者と協力するか共同運行をするしかありません。たとえば北千住線は東武バスであり、吉祥寺線は小田急と関東バス、たまプラーザ線は東急バスです。長久保・大泉線のように東空交単独運行ですが西武バスが営業協力しているというようなケースもあります。乗り入れ地側の会社が独自に運行するにも空港内のバス停はすべて埋まってますので、結局空港側会社との協力も不可欠です。

 これは大阪も同様で、関空は関空交、伊丹は大空交が各社と協力して運行しています。これが自由度の差であり、利益第一というよりも各社が自由に動けないが故に、どうしてもニーズがあっても運行できないという事態を引き起こすのです。





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