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F1日本GP観客輸送失敗総括コメント
とも 2007年10月10日
○小田急線は使われたのか
結果的に使われたはずですが、ロマンスカーは「新松田」に止まるという認識がされていたかは疑問です。公式サイトでは「急行利用」がベースで出ていましたし、その影響はあったかもしれません。見方を変えれば、もう少し小田急側のPRを行えば違う結果になったといえるのかもしれません。
○自動車アクセスをどこまで考えるか
F1などへの観客輸送における自動車アクセスの優遇ですが、パークアンドライドの適切化というのは「今回」だけの限定的な成功と考えるのが無難といえます。時期的に好天であれば明らかに行楽が多くなる時期ですし、中央道・東名という決して余裕のない道路に頼らざるを得ない中で自動車アクセスを今以上に増やすのは望ましいとはいえません。
パーク・アンド・ライドに関しては「巧」といえる駐車場配置とシャトルバスの運行がされており、その点からしても評価は高くできます。この計画であれば一般道に関しては鈴鹿で見られるような酷い渋滞は起こりえませんが、鈴鹿とは異なりF1がなくても週末には激しい混雑が見られる道路網がアクセス道路ですから、これ以上の自動車分担率の増加は難しいでしょう。
観客数が14万人ですから、1台に4人乗ってきても実に片道35000台分のトリップが当地に発生します。方向性があるとはいえ、今ですら満足な容量の余裕が無い中央道・東名にこれだけの交通が集中すればあっという間に破綻です。
バスルートの交通集中はシャトルバス乗り場まで歩かせるなどの乗車時の「バッファ」の工夫や交通誘導の工夫でクリアできる問題です。
○愛知万博での問題との隠れた相似性
愛知万博では往復ルートの硬直性が結果的に「混雑のムラ」を生んだことで、利用者の不満が見られました。今回もチケットアンドライドを「厳格」に運用したがゆえに「逃げ道」がふさがれるという問題が生じているともいえなくはありません。
たとえば、新松田利用者は御殿場や駿河小山経由でも実は問題は無いわけです。ですから選択ができるようになっていれば問題は無いはずです。ところが、今回は乗るバスがチケットごとに指定される形態ですから、そうもいきません。当然ながらいくら他が空いていても乗れないわけですから、その辺の「融通」をもう少し利かせることも一つの解決法でしょう。
○輸送時間の考え方
モータースポーツの場合、野球に比べ時間的な読みがしやすいです。たとえレースが中断しても終了時刻はそうそうズレませんからある程度の余裕を考えれば問題がなく、「カラ」が生じる可能性は低いです。むしろ、御殿場や富士急ハイランドなどの「拠点」駅に一度集約させてそこにバッファとしてイベントをしかけるということもありえるものです。会場内での分散だけではなく、輸送のポイントでの分散も一つの方法といえます。臨時電車はそれを基準に運行してしまうこともできるのです。この手法は長野五輪やサッカーW杯などで行われて成功しています。
また、臨時電車は東京までではなく、乗換駅、たとえば松田・国府津・沼津や大月あるいは高尾でもよいのです。細かい工夫さえすれば公共交通主体でもなんら問題なく輸送は可能でしょう。
初めての開催であり、しかも観客数も甲子園の阪神戦の3倍、サッカーW杯決勝の2倍以上と日本国内では他に例を見ない規模ですから早々簡単ではないですが、少し考えれば「問題点と解決案」が出てくるというのはそれなりに問題があるということでしょう。
○ゲートの混雑
理論上(というか数値データ上)は1時間に300台は余裕で処理はできるはずで(大型車混入率90%、全車右左折(車線区分あり)、青信号率40%で400台以上処理できます)、多少滞るとしてもゲート運用を「厳格」にできれば大した問題ではなかったのでしょう。サーキット前道路の交通規制との兼ね合いもあったかもしれません。確かに2箇所のゲートで関係者や選手輸送を考えると難しい問題はありますね。臨時ゲートの設置などは対策案として考えられると思います。
○コースで乗せる
過去に岡山のTiサーキット英田で行われたF1パシフィックGPでの観客輸送で行われましたね。スタンドで待たせ、終了イベントをスタンド毎に行いながらバスをコース上に入れて乗せていくというものです。多少時間がかかっても、「コースを走れる」という「ビッグイベント」でもあることから観客の評判は良かったと聞いています。ただ、これはご指摘のように単一の行き先による「ターミナル」がないと厳しい話で、二輪を含めれば20近い箇所に分散する系統がある富士ではなかなかに難しいかもしれません。
○となると……
たとえば、近傍の富士霊園やゴルフ場、少し離れますが自衛隊富士学校などにバスターミナルを設け、徒歩、もしくは輸送力のある通勤車でとにかく運び、ここから各地へ分散させるという方法もあり得たでしょう。
これにより徒歩による分散によって一種のバッファ効果が生じ、さらに沿道に地元の協力を得て出店等を実施すれば立ち寄りによる集中緩和という「アフターイベント」の効果も得られます(長野五輪やサッカーW杯、スキーW杯などにおいて地元が会場への道すがらでこれを行うことで交通結節点への観客の集中を抑制した例がある)。
○御殿場線の罪?
結局、御殿場線が使えればかなりの問題は極小化できたと考えることができます。というか対策案は格段に立てやすくなります。ご指摘のようにバスの系統も増やさずに済んだのです。指定駅も3駅程度なら「とにかく運ぶ」というスタンスにできますし、輸送力重視の輸送計画が可能だったはずです。鉄道の最大の特徴である「大量輸送」を担えないという点はやはり問題といえますし、今回の輸送破綻の直接的な原因とはいえないですが、強い要因の一つであったといえるでしょう。
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