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ICカードはユニバーサルデザイン



とも  2009年 1月21日





 ある海外の交通計画で有名な方の講演で、「日本人はヨーロッパのLRTとかゾーン運賃が、とか言うが、ヨーロッパから見れば東京のSuicaには驚かされるよ。こんな複雑な交通機関をこのカード一枚で乗り降りできる。これは凄いことだ」という話をされていました。

 確かに、運賃表を考える必要もなく、何も考えずに改札を通ればいい。鉄道マニアには「ボッタクリ」「本業ではない」などと散々に叩かれてはいますが、利用者からすれば旅客営業規則の何条がどうだこうだ云々、など気にもしないのですから、これで十分。このシステムの単純さはまさにユニバーサルデザインです。





 オクトパスカードを私が始めて使ったのは1997年末。もう10年以上前なんですね。ICカードだとロンドンが先進、シンガポールが進んでいる、などと仰る方も多いですが、香港こそがパイオニアなんですよね。導入も共通利用も市内展開もかなり進んでいます。

 当時はMTRでのみ利用可能で、今のようにありとあらゆる交通機関で利用できたわけではなく、1998年夏の渡航時もバスでは小銭が必要で、ようやくKCRで使えるようになった程度でした。それでも、タッチするだけで乗降可能、しかも「鞄に入れたまま」という香港の基本スタイルもあってものすごい衝撃を受けました。「これは公共交通のシームレス化としては最善例である」と思わずにいられないほどです。劇的に便利になったのは2000年頃から。電子マネーが充実し、バス・フェリーでの利用が解禁になってからです。

 さて、このオクトパスカード、「これからは「相手の国のICカードを予め勉強してから海外に行く」ことが、海外でのスムーズな移動にとり重要では?と感じています」という懸念を吹き飛ばすように、上手なPR展開がなされていました。新空港が開港した1998年のことです。

 キャセイパシフィック航空に乗り、機内食を食べるとそのトレーに1枚の紙が挟まっていました。それは「オクトパスカード記念品引換券」。この紙を持って空港のオクトパスカードカウンターで「ツーリスト」または「ノーマル」カードを購入すると、全員にAEXの記念品をプレゼントするというもの。(記念品とはAEXのNゲージ模型)

 なんてことはないものと思いきや、そのカードには利用可能路線図・バスイラストが入りオクトパスはとっても便利なんだよ、ということが書いてあります。さらに機内誌、座席ポケットにも記述があり、日本語のパンフレットまで入っていました。

 この徹底したPR作戦、そして空港から市街地へのガイドでも「オクトパスを使えば地下鉄は無料だよ」「AEXなら終点からホテルにバスがあるよ」とモビリティ・マネジメントか?というような地道なもの。あえて調べずとも、これだけの情報が提供されれば嫌でも認識します。そして、すでに新空港開港から10年たち、オクトパスもすっかり定着していますね。





 世界展開はすでに勉強会や研究会が立ち上がってますね。実験も行われています。オクトパスだってSuicaとベースは全く同じ。そもそもSuica開発の過程で派生的に参入したもの。兄弟みたいなモノです。電子マネーのやりとりは既にプリペイド式デビットカード(シティバンクのワールドキャッシュ等)などで実現していますし、ポストペイに関しては実用化もされています。

 問題は3タイプあるカードの問題、日本国内ですら共通化できないという問題や、日本独特の「素人さんには理解できないような運賃制度」(比較的単純な香港、経路選択や乗り継ぎは複雑だが基本がゾーン制なので問題が少ないソウルに比べて複雑すぎる)などの問題もあります。

 しかし、カードそのものの進化も進んでいる今、あっという間に解決してしまうかも知れません。家からモバイルSuicaで電車に乗り、内蔵のJAL ICでタッチしてICパスポートの電子登録で出国して搭乗。香港でAEXにモバイルSuicaで乗って地下鉄に乗り換えて……。今は東京−大阪などで見られる「ICだけでの移動」が海外でもできてしまうかもしれませんね。





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