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W主役の話である以上はむずかしい



とも  2005年 7月21日





●主役と脇役

 万博協会のサイトを見ると、「公式」ではエキスポシャトル=万博八草経由をメインに据えているように「見えます」が、一般の雑誌・新聞などのマスコミ情報や現地での案内、さらには開幕前の情報では「藤ヶ丘経由」も「万博八草経由」も「メインアクセス」として報道してきたわけです。開幕後も4月の段階では「両論併記」だったわけですし。

 本来、こういったマスコミ報道に対し、もしエキスポシャトルをメインであり藤ヶ丘は抑制するという意図が万博協会にあれば、当然ながら報道機関にそのような「誘導」を依頼するでしょうし、「協力:2005日本万国博覧会協会」というキャプションがついているガイドブックの記事で「藤ヶ丘アクセス」を主に紹介することはないでしょう。

 もともと、「ダイレクトイン」構想があって、愛環を会場内に引き込む構想があったのがオオタカの営巣地問題でリニモアクセスに替わり、その時点で藤ヶ丘アクセスが蘇る形になったのですね。さらに、万博協会のサイトにある輸送計画の資料を見る限り、近隣地域は藤ヶ丘、広域は万博八草という「棲み分け」を狙っていたのは明確ですから、とすれば藤ヶ丘アクセスも「メインアクセス」の一つであるのは明らかと言えます。

 ですから万博輸送に関しては、主役は「エキスポシャトル」と「藤ヶ丘経由リニモ」であり、ガス抜きサブルートとしてのシャトルバスという位置づけが正しいと思われます。



●来場者の意識で考えると

 いくらエキスポシャトルが毎時3本で10連といっても、うち2本は高蔵寺〜名古屋は各駅停車。そもそも名古屋市の東隣の長久手町に行くのになんで高蔵寺を回るの?という意識すらも起こりうるのに高蔵寺まで各駅停車では利用者の意識として明らかに最短経路をたどる藤ヶ丘経由を意識するのは当然です。

 だからこそ、エキスポシャトルへの誘導を図るのならば、「共通乗車を認め、万博きっぷならどちらでもどのルートでも使える」として、往路藤ヶ丘経由の方でもスムーズに使えるように工夫をする必要があるし、逆に空いている時間帯や時期であればJR券での藤ヶ丘経由を認めることも一つでしょう。

 来場者の意識として「明後日の方向」に向いてしまうアクセスより、素直に向かってくれるアクセスを好むのは当然です。ですから本来的には名古屋駅あるいは栄や大曽根、金山の時点で、2ルートあって所要時間には大差が無いこと、現状の混雑状況で八草が速いのか、藤ヶ丘が速いのかを明確にするという案内が必要ではないかと感じます。

 名古屋市内に宿泊し、市営地下鉄駅が最寄りであればもし混雑が激しくないのならば藤ヶ丘アクセスの指向は強いでしょう。一方、新幹線に乗るのであればエキスポシャトルの方が乗換も楽ですし、実所要時間が早いわけですから、利用者に選択の余地を与えるという意味で考えれば、両ルートを利用できる弾力性は必要であったと考えます。



●名古屋市交の問題

 基本的に藤ヶ丘ルートをPRする名古屋市交ですが、一応、拠点駅にはリニモの混雑状況(藤ヶ丘・万博会場・万博八草の状況)が解るディスプレイや案内は掲示されています。ですから事前に藤ヶ丘がどうなっているのかを知ることは出来ます。

 名古屋市交の問題は「トランパス(ユリカ)」での乗車を基本としているため名古屋在住以外の方はきっぷを購入する必要が生じてしまうこと(といっても万博会場往復で1000円券は使い切れるけど)、藤ヶ丘シャトルは現金乗車であること、JRエキスポシャトルの案内が乏しいことでしょう。

 ただ、名古屋市交としてはリニモアクセスが近隣向けとして「主役となっている」以上は、名城線や鶴舞線ならばいざ知らず、東山線で「積極的に」JR利用をPRすることは乗車券制度の共通などの前提がない限りは難しいでしょう。利用者からすれば終点の藤ヶ丘まで行けばリニモに乗れるのに、なんで千種から高蔵寺・瀬戸を回って行かなきゃならないの?となるのは当たり前の感想です。そこで「こっちは空いているし共通乗車なので」とPRできるのなら別ですが、あらかじめトランパスや乗車券のホルダーにそれを言えるのかといえば言えないと思いますが。



●JR東海の問題

 JR東海の企画券は非常に使いやすく、この手の往復乗車券としては良い商品だと思います。しかし、やはりエキスポシャトルしか使えないという点は名古屋宿泊者の多さ(名古屋市内のホテルは盛況であり、日帰り訪問だけではなく宿泊も相当数がいると思われる)を考えると利便性は低いです。

 もちろん、大曽根や千種や鶴舞に出てJRに乗り換えればいいと言うのは簡単ですが、地下鉄路線図を見れば藤ヶ丘乗換リニモはどうしたって目に入ります。地図を見ればJRルートは遠回りだし、エキスポシャトルは高蔵寺まで各駅停車だし……となっていくのです。平日や休日夕方訪問ならば藤ヶ丘の混雑は大したものではないわけで、藤ヶ丘ルートが利用できない点は不便と感じてしまうのではないかと考えます。

 また、エキスポシャトルは「確実に座れる」のではありません。リニモは座りたいからと待つことも出来ず、ある意味「運」があります。さらにエキスポシャトルで座りたければ万博八草で20分待って次の列車にしなくてはならない。家族連れや高齢者の方であれば「確実に座れる」駅シャトルバスの利用ニーズも考えられるわけです。でもそれに対応できない。そう言う意味で利用者の選択をやはり奪っているという点は否めませんし、改善は必要でしょう。



●名鉄の問題

 瀬戸線ルートはもともとメインアクセスルートの一つでしたがリニモ建設によりサブルートになったという悲運はありますが、それはさておくとして、結局は「名古屋駅シャトルバス」しか使えないために、金山乗換や岡崎公園前-中岡崎・豊田市-新豊田の徒歩連絡、三河線や犬山線、小牧線などでも一度名古屋に出ることになるという不便さがあります。この辺がもう少し多様性がある乗車券制度であれば、利用者の意向や行動に合わせた利用が可能であったわけで、囲い込み的な発券は残念であるといえます。

 また、シャトルバスを中心に押していることで、本来サブルートのバスアクセスをメインに据えており、その結果としてシャトルバスの混雑が生じる可能性が高くなります。 その面を考えればもう少し使いやすいものへの改善が必要でしょう。



●私なりの改善案

 文句ばかりでは誰でも出来ますので、改善提案を考えてみましょう。あくまで私案ですからこれが正しいとは言いませんが、現状よりもずっとマシと考えます。

1)企画乗車券
 たとえば万博関係の企画乗車券について、名古屋市内から会場周辺については鎌倉の環境手形や仙台まるごとパス方式で、組み合わせによるデイパスを発行できれば良かったのではないかと考えます。
(デイパスエリア)
利用可能区間:JR中央線名古屋〜高蔵寺、愛環線高蔵寺〜新豊田、名鉄瀬戸線全線、名鉄豊田線全線、三河線梅坪〜豊田市、市営地下鉄全線、あおなみ線ささじまライブ〜名古屋、市営バス全線、名鉄バスの指定区間(長久手町・尾張旭市・瀬戸市・豊田市周辺)、駅シャトル(藤ヶ丘・八草を含む)、会場間バス、モリゾーゴンドラ
(デイパス拡大版)
追加利用可能区間:愛環全線、名鉄名古屋本線名鉄名古屋〜東岡崎、三河線刈谷〜豊田市、JR東海道線名古屋〜岡崎、ゆとりーとライン、JR東海バス(豊田・瀬戸地区)、あおなみ線全線
これらに往復乗車券(エリア入口駅まで)を組み合わせて発売する。デイパスは複数日数も可能とすれば名古屋観光をついでに行う人にも便利です。

 また、名古屋在住の方ならばこんなデイパスではなく往復券が良いですね。名古屋市内発の会場往復は万博八草・藤ヶ丘・尾張瀬戸・黒笹のいずれかを使うことが出来る上に、関連する指定ルートをたどればOKとか、愛知県東部発の場合には豊田市経由黒笹シャトル、愛知県北部や岐阜県南部発ならば新瀬戸乗換尾張瀬戸シャトルの利用が可能とするような「弾力性のある」往復券が良かったのではないかと感じます。

2)案内
 今回の万博関連輸送では道路においては事業者に関係なく共通化された図案標識が用いられています。しかし、公共交通ではそういったものは見られず、文字ベースで事業者毎に独自の案内となっています。
 ですから万博マーク+ルート名での案内を共通デザインとして、誘導を図り、複数ルート選択の可能性があるのならばその旨も記述するとともに、現在進められているITSによる交通情報を選択ポイントで提供することで、利用者に選択の余地を与えることも必要でしょう。
 実際、過去には長野五輪時に成田空港・関西空港・名古屋空港のターミナルビルから長野駅まで一貫された統一の案内表示が設けられていました。サッカーワールドカップ日韓大会では国内会場だけではなく韓国も含め共通デザインの案内表示で誘導を行っていました。そういったことができないということは無いわけで、事業者相互の調整と万博協会のリーダーシップがどうだったのか疑問が残ります。



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 すでに会期も残り3ヶ月を切っています。しかし、ある意味で最大の見せ場?とも言うべき混雑期はこれからです。過去のつくば科学万博でも残り数ヶ月の時点でアクセスに手を入れていますし(エキスポきっぷでの利用可能シャトルバスの増加)、長野でも特急の便宜乗車・増結・増発などの対策を閉幕数日前に打っているという例もあります。

 会期めいっぱいまで利用者の利便性を考えた改善策をぜひとも検討して欲しいものです。 今すぐにでも取り組める案内の改善などもあるのですから。





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