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安全を政治パフォーマンスの道具に使うのはいかがなものか
とも 2005年 5月26日
安全が第一なのはいうまでもない当たり前の話ですが、どうもこのところのJR尼崎脱線事故、JALの数々のトラブルや近鉄バスの横転事故などを受けての国交省あるいは「永田町」の動きには疑念を持たざるを得ません。
事業者として安全を確保するよう国交省が監督官庁として指導をする。当たり前の話ではあります。ただ、その中身が問題です。
まさにご指摘のように、JR西日本への「最高速度を抑えるように」という「鉄道事業法」を無視するかのような指導、JALへの事業改善命令とJAL側の計画書に対する態度などを見ていると、事業制度・技術・法律についての専門知識を有する官僚がこういう形で反応するのか、ある意味不思議としか思えません。
しかも「国交省幹部」「国交省筋」「大臣」という形で発言が引用され、マスコミ報道に出る。一つの行政側の「シグナル」ということならば判らなくはないのですが、法律上の位置づけもなく「大臣の指示」が根拠になっていることは否めない。しかもマスコミリードによる情報伝達。だからこそ「暴走」と写るのでしょう。
そんな中、こんな話がでています。
韓国直行便 国交省、羽田の増便延期 安全疑問、自民反発で(5/22産経新聞)
羽田の14便増便計画を延期 相次ぐミスに安全揺らぐ(5/21共同通信)
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羽田の14便増便計画を延期 相次ぐミスに安全揺らぐ(5/21共同通信)
内容は納得できるといえばできます。しかし、少々おかしい話ではあります。確かにここのところの交通機関のミス・トラブルの多発により国民に不安感はあります。しかし、だからといってそれだけを理由に反発するということが本当によいのかということは考えなくては為らないでしょう。
たとえば、今回の増便は一機あたりの滑走路使用時間を 4秒短縮することで毎時 1便、合計14便の発着枠を捻出しそれを割り当てるという考え方です。それに対し、たとえば管制官が未熟だからダメとか、滑走路設備に問題があるということならば反発も当然です。それを国会の委員会なり航空審議会で認めないという話を受けてならわかります。
しかし、JR西日本に対する「最高速度……」とある意味で根が同じで、「国民に不安感があるから」では理由として「なんとなく怖いから」「危なそうだから」という次元に過ぎないともいえなくはありません。しかも自民党の国土交通委員会です。いくら政権与党の政党内委員会とはいえ本来的に権限もなにもありません。
そこがストップをかける。一見、政治のリーダーシップ発揮とも見えますが、その実は「法的な根拠もなく、政治家が『国民世論』の名の下に止めた」ということであって、穿った見方をすれば「公共交通への不安感を利用したイメージアップ」ともいえてしまうのです。
今回の増便ではJALやANA、あるいはスカイマークや大韓、アシアナなどの増便計画をそのまま変更させることです。もしこれらの社が、事前の調整に基づき実施してきた事業計画を変更せざるを得なくなった理由開示を求め、行政手続き法に基づき申し立てをしたとしたらどうなるか。法的になんら根拠もない与党の委員会でストップが掛けられたからでは説明できません。
無条件に認めるべきではないとは思います。しかし、もし本当に危ないと思うのならば専門家委員などを招聘するなり、国交省に安全であるという根拠を求めて検証したうえで止めるなり再考を促すなりが筋でしょう。それならば国交省が主体的に問題点の再考を行うとして行政手続き上の問題は極小化するでしょうし、各社への説明も明確です。
そもそも規制緩和という路線を敷き、発着回数が少ないだのなんだのと文句をつけ、世論やマスコミをリードしてきたのは何処の方ですか?と。それを事故が続いたから「安全確保を図れ」というのならまだしも「国民が不安に思っているから」と他者を理由にしてというのはなんでしょうか。さらに羽田金浦シャトル増便に合意したのは他ならぬ首相なのです。
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安全は第一です。しかしそれを政治パフォーマンスのネタにするのは筋違いです。JR事故やJALのトラブルでの大臣の対応、羽田枠問題での与党委員会の対応。これを「パフォーマンス」と見てしまうのは私の目が曇っているからなのでしょうか。
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