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何をもって「正しい」というかは難しいが……



TAKA  2005年 5月28日





 早いものでかの事故から 1ヶ月、極めて重い事故の影響は未だ残っており、最終的な原因も明らかになっていない状況であり、今の段階で何を記せば良いのかと戸惑う側面もありますが、エル・アルコン様提議の「監督官庁の『暴走』」に関する話は、鉄道に関する話だけではなく他官庁にもある話であり、実をいえば極めて重い意味を持つ問題であります。ですから今回に関しては、エル・アルコン様提議の話に絞り話をしたいと思います。

 皆様の議論で私の考えも出尽くされた感じがするので、皆様の意見と重なる点もありますがその点はご承知おきください。



 基本的に今回の事故に対する国交省の対応については、皆様の意見の結論が分かれているように色々な側面から見ても適当と思われる内容と、問題ありと思われる内容が混在していると考えます。

 まずは少なくとも事故調査委員会の事故原因の正式な原因報告より前に、宝塚線事故該当区間の運行再開をする状況下においては、絶対に事故を起こさないため、本当の原因が正式にわかっていない段階で運転する不安定な状況下ということからも、最大限の安全対策は必要です。

 そのため国交省が「(曲線通過得度超過を防ぐシステムとして)ATS-P を装備しない限り運行再開は認めない」「(遅延が恒常化しその回復運転の無理が事故の遠因と考えられるから)運転時分に余裕のあるダイヤで運転せよ」という方針は該当現場での事故原因が公式に明らかになる前の当座の事故再発防止策として間違いは無いと思います。

  安全総点検の指示 や国交相の現場視察の実施等は、鉄道の安全を管理する義務のある国交省の立場を考えても当然の話ですし、JR西日本だけでなく、日航の話しかり航空管制の話しかり、事故・問題が頻発していて不安が広まっている現況から考えて適当な話であると思います。



 これらの事例は実際に安全な輸送が阻害されているため、 鉄道事業法第二十三条の六 にて規定されている「旅客は貨物の安全かつ円滑な輸送を確保するための措置」に適合し「鉄道事業者の事業について利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認めるときは、鉄道事業者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる」という内容に当てはあると考えます。速度超過が実証されれば、 鉄道事業法施行規則第三十五条三のイ に規定されている「最高許容速度」を超過している為、 鉄道事業法第十七条 の運行計画に虚偽があった事になり、罰則規定は無いものの、国交省が指示・指導をする根拠たり得ると思います。

 しかし、エル・アルコン様御指摘の事故該当線区外での「JR西日本のみの最高速度見直し」等今回の事故に直接関係の無い部分に関しては、極めて問題があるといえます。これれはまさしくエル・アルコン様、とも様がご指摘されているように「根拠の無い懲罰的措置」であるといえます。

 少なくとも現状で前述の「鉄道事業法第二十三条の六」に規定されている内容が、宝塚線事故現場以外のJR西日本(特に今回槍玉に上がっている東海道・山陽線の新快速等)に違反している事実は無く、新快速の最高速度130km/h等は前述の鉄道事業法第十七条・鉄道事業法施行規則第三十五条三のイで運行計画の中の最高許容速度で国交省の承認を受けて居る物である以上、宝塚線の事故を理由に直接因果関係の無い新快速等JR西日本の事故該当以外の路線の最高速度を規制する法的根拠は、今回事故との因果関係が証明できない限り無いと考えます。

 エル・アルコン様のいわれる様に今度のダイヤ改正で登場するJR東日本の常磐線特別快速や「特認」を受けて居るほくほく線の 160km/h運転等も同じように問題にならないと、JR西日本を特定して狙い打つ不利益処分になりかねません。

 逆にここで宝塚事故を理由に新快速等の減速を指示するのならば、新快速の最高速度を記載した運行計画を承認した国交省の責任は何処へ行ったのでしょうか? それに運行本数等に関しても運行計画で定められている以上国交省の承認を受けて居るはずです。それに則って運転している限り、今回の事故に直接該当しない部分まで規制する場合、 行政手続法 に定める不利益処分等の内容に当てはまるかは微妙であるといえますが、道義的には国交省がその根拠を明確に示さないと運行計画を受け取ったの国交省の責任は示せず、自分の責任を示せなければ事業者の納得する規制は困難であると考えます。

 それをいい出すと、本来ならば今回の尼崎事故でも「曲線通過速度の超過」は運行計画に違反した運転になりますが、「余裕時分の無いダイヤ」に関しては、鉄道事業法施行規則第三十五条三のイで「定期に運行する列車の発着時刻(列車運行図表をもつて示すこと。)」の提出を義務付けており、過密ダイヤ、余裕時分の無いダイヤを記載した運行計画を受け取ったという一点において国交省も今更JR西日本を批判するのも筋違いという事になります。(鉄道事業法第十七条・鉄道事業法施行規則第三十五条では提出義務だけを明記しており、国交省の拒否の権利は書いていないから国交省には責任が無いともいえるが……。しかし本当に問題があれば提出時に指摘できたはず。監督官庁として運行計画を受け取り何も指摘せず、事故の要因の一因と思われる要因を放置した責任は指摘できる)



 少なくとも私が思うに今回問題になっているところは正しく「パフォーマンス」の所です。それはとも様例示の羽田空港発着枠の問題も正しく同類でしょう。(法的根拠は別にしても)絶対に「裁量行政」は排除すべきです。行政たるもの政府の見解は統一されているべきですし、その見解は法の基準に基づいて行われるべきです。それはどこでも変わらない問題です。

 これは個人的なことになるので明いしたくはありませんが、国交省には「法よりも自己の都合」を優先する傾向があるのかもしれません(私は金融庁と国交省の間に挟まれる問題を抱えたことがあります。そのときには金融庁の指導の方が法に則り正しかった……)。これは甚だしく問題のある事です。ましてやJR西日本が「事故という事実があるから抵抗を自粛する」のを読んでの措置である分、余計いじめに近いいやらしさを感じます。



 確かに民意に配慮する事も必要です。今回も結果の重さを考えれば、和寒様のいわれるように民意に配慮する事も一理はあります。しかし民意が正しいとは限りません。今回に関しても民意が報道により誤った方向へ誘導されている点も指摘できます。その点も考えると民意ばかりに配慮するのも問題です。

 同時に行政に取り民意の前に「法」があるのは絶対です。行政が法に従い運営されるのは当然の事です。その点は踏み外すべきではありません。法に則らない懲罰的行動は必要以上の不利益を与える事になり極めて問題であるといえます。

 今回の場合、宝塚線運行再開に対して規制をかけるのは当然の事であると思います。それは「法」の根拠に基づく事であるから問題は無いと考えます。それで「事故に対する責任」を追及する民意に対応できるのではないでしょうか? それ以上の現段階での追求は刑事上の問題も絡んできますし、「民意」というもので図るべきものではないと考えます。

 もっと根本的な対策は事故報告が出てから行うべきです。原因が百%明らかにならない現段階で対応策を明示するのはエルアルコン様指摘のように「手戻り」がある可能性もありますので、 「速度制限区間でのATS設置」 等は事故調査委員会の報告が出てからでも遅くはないといえます。

 事故調査委員会の報告が出れば鉄道事業法第二十三条三・六に基づいて「鉄道施設若しくは車両は列車の運転に関し改善措置」「旅客は貨物の安全かつ円滑な輸送を確保するための措置」として公然と「速度制限区間でのATS設置」を命じることが出来ます。今の段階でも出来なくはないでしょうが、事故の原因が公的に明らかになっていない段階では「利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実」という点が明らかになっていないので、フライングになるのではないか?と考えます。



 今回の事故は和寒様がいわれるように「極めて重大な結果」を引き起こしたもので、その結果の重さからも放置しておくことはできません。しかし「極めて重大な結果」であるが故に慎重に、かつ根拠を持って行政が動くことが必要であると思います。





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