このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

「整合性のなさ」は否めない

 

かまにし  2005年 4月25日

 

 

 今回の横須賀線・湘南新宿ラインの武蔵小杉駅設置に関する件ですが、私はJR東日本と川崎市の立場で考えれば推進は当然だと理解しつつも、首都圏の鉄道整備計画という観点から見ると「整合性のなさ」を否めないだろうと考えます。

 なぜなら、和寒様が述べていた品鶴線内の駅の設置方針が根底から覆ったことに加え、長期的な視点で見た時に二重投資だったと言わざるをえないからです。では具体的に、何がどのように「二重投資」だったのでしょうか。

 まず、武蔵小杉に横須賀線・湘南新宿ラインの駅ができることで、明らかに東急東横線・東急目黒線と競合することになります。競合するということは、すなわち消費者の選択肢が増えることなので、確かにこの観点から見れば双方のルートが存在することは社会的にも望ましいだろうと思います。

 しかし一方で、東急目黒線はもともと東横線のバイパス線として東横線の複々線化とセットで行なわれた事業であり、そこには税金等も投入されています。これに加えてもともと東急目黒線は、目黒〜蒲田をつなぐ東急目蒲線の一部を活用しており、一方で活用されなかった部分のサービスレベルは低下したと解釈することもできます。とはいえ東横線の混雑緩和を図るということは、たとえ目蒲線が分断されることになったとしても、この地域全体にメリットがあったのも事実です。

 しかし、武蔵小杉に横須賀線・湘南新宿ラインの駅ができることになれば、東急東横線・東急目黒線にかなりの影響が出ることが考えられます。東急東横線は未だに 183%の混雑率(祐天寺〜中目黒)があるものの、東急目黒線の混雑率は 160%程度(不動前〜目黒)であり、JR横須賀線の 191%(新川崎〜品川)に比べれば混雑の度合いは低いといえます。東急目黒線では数年後に急行運転が開始される予定なのでその趨勢にもよりますが、もし横須賀線・湘南新宿ラインにかなりの数が流れた場合、今度はこれらの路線の輸送力増強を考える必要であり、この点から見て二重投資になることが懸念されます。加えて、もし東急東横線・東急目黒線の利用者が激減するならば、そもそも東急目蒲線をつなぎ変えてまで改良する意義があったのかすら、疑わざるをえなくなります。

 もう一点は、新川崎駅の存在意義です。これは和寒様が述べられていた通り、品鶴線上の駅は既存路線の駅勢圏に影響しないように設置する方針だったことから、この場所が選ばれたのだと思われます。しかし、かつては周辺に南武線沿いの工場群と貨物列車しかなかったこの駅も、今ではタワーマンションや研究機関が数多く立地しており、ここを通るバス路線も少なくありません。しかし武蔵小杉に駅ができれば従来の新川崎駅利用者でも、南武線や東横線沿いの方はそちらにシフトするものと考えられ、新川崎駅の存在意義は小さくならざるを得ないと思います。

 これらの点からも、私は今回の横須賀線・湘南新宿ラインの武蔵小杉駅の新設は、これまでの都市整備方針に対して、「整合性のなさ」を感じざるをえません。都市整備方針が変更されることが一概に悪いこととは言えませんが、その場合も「二重投資」は極力最小限となる解を見つけていく努力は必要ではないかと考えます。

 

 

 

 

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