このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

Epirogue

 

 

 この夏、たった4時間ですが、この街に逢いに行くことが出来ました。夢に見たこの街と濃密な時間を過ごすことができました。街から離れた新幹線の駅から、たった一人、駅横へ乗り入れている私鉄線に乗り換えてこの街へ向かいます。2両編成の電車は座席にぽつぽつと座った人たちと、その中に私が居ます。

 大きな古い家々の裏手を電車は行きます。小さな駅で行き違う電車も乗っている人たちの様子は私たちと同じです。支線から本線へ入り、この街の終点<ターミナル>駅へ着きます。駅前からの路面電車に乗って、繁華街を行きます。

 直角にカーブする交差点で電車を降ります。この角から北の一角は歌謡曲<うた>に唄われた歓楽街です。入っていきます。おそらくはかつて、全国から集まったアパレルの仕掛け人たちで夜な夜な溢れたであろう飲食店や風俗店が、けだるい夏の午後、静かにまたその時を待っています。

 こんどは交差点から郊外へ向かう電車に乗ってみます。大きく揺れる電車はバスと並んで走ります。道路に沿った郊外の停留所で私は降ります。遠く近く見える里山にはその麓に住宅団地が広がっています。

 夕方、この街から、子どものように電車の先頭に乗って帰ります。次に来るときには、小さな路面電車は心の銀河鉄道に乗り入れているのでしょうか。これらの私の大人買いのような旅も、暑かった夏と寒かった冬のデ・ジャ・ヴになって行きます。

 「岐阜」 山紫水明という言葉はこの街のためにあるはずなのに……。

 

 

 

 

 

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